その視線の先を探すように振り返る。

 「バラすなよ、だせぇじゃん」

 お店の入口には櫂晴がいた。
 不貞腐れたような顔は、いつもに増して子供っぽく、不機嫌そうにどさりと隣に腰を下ろす。

 ダイさんは意味深に私に笑いかけ、奥へと入っていってしまった。

 沈黙が流れる。

 今日は、櫂晴は学校に来ていなかった。
 その理由は分かっていて、私はどう声をかけて良いか分からず、食べかけのさつまいもを口へと運んだ。

 「コンテスト、駄目だった」

 ぽつりと落とされた言葉にも私は何も言えなかった。

 もちろん彼にとってコンテストは、何よりも大切なイベント。
 学校を休んで、全力で勝ちに行くと意気込んでいた昨日の放課後を思いだす。

 気の利いた事を言えたらいいのに……。
 いつも、夢を見させてくれる彼の背中くらい押してあげられたらと思うのに……。

 悲しいほどに、私の喉を震わせる言葉は見つからなかった。

 「……こういう日は思うんだ」

 いつもは勢いよく飲み干す1杯目のお冷は、まだたくさん残っていた。
 そのグラスを両手で握り、彼は呟く。

 「やっぱり無理だ。いつまで頑張り続けたら叶うのか。頑張って頑張って、それでも無理だと見切りをつける日はどうやって決めたらいい」

 彼の口からは信じられないような、マイナスな言葉が溢れ出し、私は胸がぎゅっと締め付けられる。
 心の荒波は自分では止められないまま勢いを増し、私の目から飛び出した。