開いたメニューは見開き1ページで、かき氷と飲み物だけのシンプルな喫茶店のようだった。

 「おっけ、ソーダ味アイス乗せ。お嬢さんは?どうする?」

 見た目は近寄り難いけれど、確実に顔面が整っているダイさんにお嬢さんと呼ばれて、テンパった私は「じゃ、じゃあ同じもので!」と口走った。

 本当は桃味のかき氷を見て、気になっていたのだけれど、まぁ仕方ない……。

 目の前に現れたかき氷は、大きかった。
 隣でバクバクと食べている彼を横目に、遠慮がちに崩して口に含むと、その氷はふわりと溶けてあっという間に無くなる。

 「……美味しい」

 掘り進めば中にバニラ味のアイスが眠っていて、それもまた濃厚な甘さでソーダ味によく合った。

 喜んで食べる私を、相楽くんとダイさんは、揃って満足気に見つめていた。その視線に遅れて気付いた私は、慌てて顔を引きしめる。

 そういえば授業中だった……。
 それに、テスト結果だって。何も現実は変わっていない。逃げ出したい事実からは逃げられていない。

 「何位だったわけ?」

 教室での話し声は、彼の元にも届いていたようだった。
 そして相変わらず、私の気持ちなんてお構い無しにずかずかと踏み込んでくるのだ。
 慣れてきた私は、特に踏みとどまることなく、でも嫌々ながらに呟いた。

 「12位」
 「はー!?やっぱ別次元だわ、ぜんっぜんいいじゃん!それであんな空気なわけ!?信じられねえー!」

 大袈裟だと思った。大きな声に私は驚く。
 目が合ったダイさんにも「成績いいんだね」と優しく微笑まれて私は首を振った。

 「いやでも、こいつこの成績で落ち込んでんだよ?有り得なくね?」

 デリカシーの欠片もない彼には、私の気持ちなんて、きっと何ひとつ伝わらない。

 自然と話すことが増えている彼。尊敬も芽生えた。知らない一面も知った。
 初めとは違っているけど、住む世界が違うのは変わっていない。