ボーリング初めてだから、分からないんだって……。

 友好的で、楽しませてくれようとしている気持ちだけは伝わっている。
 けれど、なれない賑やかさと盛り上げ方は、やはり苦手だったし、本っ当に違う世界のようだった。
 彼らのことを知りたいと思ったのは事実だけれど、やはり来たのは、間違いだったかもしれない。

 「三本の指で、こう持ってみなよ」

 俯く私の隣に現れたのは、相楽くんだった。
 別の色のボールを慣れたように片手で持ち上げた彼を見て、見よう見まねでボールを持つ。

 「そうそうそう、それで、」

 レーンまで背中を押され、ボールを持つ右手首を優しく支えられた。
 背中にくっつくように、後ろから教えてくれる声に、私は無駄にドキドキし、身体を固くする。

 「あいつまたやってるよ」
 「ほんっと、天然たらし」

 呆れたような女の子達の声が聞こえ、頭は納得する。
 そうだよね、これが彼の普通なんだ。特別なことじゃない。

 「こう。」

 だけど、気持ちの方は、そんな風に賢く噛み砕いてはくれなかった。
 優しく体に触れ、投げ方を教えてくれたけど、正直何も入ってこない。

 結局、真っ白な頭で小さく投げたボールは、ドンっと真下に落ちた。
 そして、ピンまでたどり着かないんじゃないかと思うくらいゆっくりな速度で滑っていき、全てのピンを倒していった。

 「えー!?なんだ今の!!」
 「そんなことある!?美雲ちゃんやばー!」

 後ろからの驚きの声が聞こえ、私もレーンから視線を戻した。

 「えっ、あはは!美雲お前すっげえな!」

 隣でぱあっと顔を明るくさせ、勢いよく両手を上げた彼に、小さく手のひらを向ける。
 嬉しそうに笑い声を上げ、ちょうど良い強さで打ち付けられた手のひらは、骨ばって大きくて熱い、男の子の手のひらだった。

 笑顔の皆が走ってきて勢いよく囲まれる。
 好意を感じる明るい笑顔は、私には新鮮な世界だったけど、やっぱり少し落ち着かなかった。