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 そして、行き着いた先は、ボーリングだった訳だけど。
 初めて来たボーリング場は、思ったよりもずっと大きな音が響いていて、騒がしい場所だった。

 「次、美雲ちゃんだよ〜!投げて投げて!」
 「えっ、いや私は……」
 「何でだよ!せっかく来たんだからほら!」

 数える程しか会話をしたことがないクラスメイトに、流されるままに席を立たされる。

 ただ、彼女たちは思いの外、友好的だった。
 よく分からない奴がひとり迷い込んできた。その時点で嫌煙されて当たり前のはずだけれど、固まっている私を放置する訳でもなく、輪に入れようと話しかけてくれていた。

 その感じが賑やかすぎて、得意じゃないのは確かだ。
 だけども、彼女たちから嫌な気持ちは伝わってこず、一方的に強く苦手意識を持っていたのは私の方で、彼女たち自体は悪い子ではなかったのだと思う。

 皆の真似をして、カラフルなボールが並ぶレーンへと歩いていった。

 「お!!次?ボールどれでも使っていいからね!うちらフリースタイルだから!」

 行った先にいた女の子に、そんな風に声をかけられ曖昧に笑う。

 ……色が違うだけ?どれでもいいのかな……。

 種類の違いも分からなくて、ただ目の前にあった黄色いボールに横から手を添えると、まるで大岩のような重量で全く持ち上がらなかった。

 えっ、ボーリングの球ってこんなに重いんだ。

 平気で持っている女の子のことを信じられない気持ちになりながら、力いっぱい持ち上げようと試みる。
 少し浮き上がっても、持ち上げるには至りそうもない重さに私は戸惑っていた。

 「女の子は紫くらいがいいと思うよー」

 後ろから、助けるような相楽くんの声が響いた。
 彼は、席で音坂くんと楽しそうに話していたはずだったけど、気付けばこちらに目を向け立ち上がっていた。

 言われた通りに紫のボールを手に取ると、程よくずっしりとした重みが加わる。

 なるほど、重さが違うんだ……。
 これなら投げられるかも。

 心の中で気合を入れて、レーンへ進む。
 そして、両手で抱えて投げようとした私に、後ろから笑い声が響いた。

 「え、待って待って投げ方やばいから!」
 「あはは!美雲っちまじー!?可愛い〜!!」

 また恥ずかしくなり、私は今すぐにも逃げたい気持ちだった。