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 河川敷へと降りた私達は、橋の下で並んで座った。
 ザーッと心地よい雨の音が聞こえる橋の下も、懐かしかった。

 「今日は、特別な日なんだ」

 そう口を開いた楽久くんは、以前の口数が少なく感情を出さない彼とは、少し雰囲気が変わっていた。

 「俺が尊敬する二人に、夢を叶えた自分を見せられる、最高に特別な日」

 その目が私達ふたりを捕えていることを気付き、櫂晴と私は目を合わせる。
 楽久くんは、胡坐をかいて話を続けた。

 「あの頃の俺は、夢とか気持ちとか、真っ直ぐなことを口にするのは恥ずかしくて。
 いつも黙って冗談で交わして過ごしてた。

 でも本当は、櫂晴の真っ直ぐ夢を追いかけるも、美雲の自分の意思を真っ直ぐ伝えられる姿も、俺にはないもので輝いて見えてたんだ」

 「んなの、言われなくても知ってるし」

 照れながらも当然のように言う櫂晴とは対照的に、私は驚きで固まっていた。

 そんなの初めて聞いた。

 櫂晴はともかく、私なんて、櫂晴のおかげで夢を見つけられたけど、それまではただ現実から逃げてた弱虫だったのに。

 「美雲は、初めからかっこよかったよ。だから、関りなかった美雲に声かけたんだ。
 あんな風に芯のある子が櫂晴の隣にいて応援してくれたら、きっと櫂晴の夢は叶うと思ったから。
 あの頃の櫂晴には、そういう真っ直ぐに応援してくれる子が必要だって、思ってたから」

 突然の、思わぬ答え合わせだった。