⋆*
 「今もこの辺住んでんの?」
 「ううん、ひとり暮らし。ここからじゃ……」
 「あぁ、あのテレビ局だと結構かかるもんな早朝キツイよな」

 被された言葉に私は目を見開いた。

 「知っ、てたの……?」
 「当たり前じゃん、俺の天気予報士だっつったろ?今は俺だけのじゃなくなっちゃったけど」

 意地悪く笑う彼は、当時の彼を連想させた。
 トンっとおでこをつつく指先の強さまで、変わっていない。

 「……そう、嬉しい」

 ずっと、伝えたかった。
 まだまだ夢の途中ではあるけど、夢を諦めなくて良かったって思えていること。

 あの選択をさせてくれた櫂晴には、ずっと伝えたかったから。
 知ってくれてたなら、良かった。

 またひとつ、消化された。
 満たされる気持ちで、櫂晴の顔を見つめる。

 「櫂晴も、夢叶えてたんだね。こんな大きな会場で、凄いよ」
 「ああ。まだまだこれからだけど」

 ニヤリと笑った彼に、まだ先へと進む強い意志を感じて、私は微笑んだ。

 現状に満足せず、まだまだ先を見据えている。
 その笑顔を見るだけで、私もまだ頑張れそうだと奮い立たされる感情が懐かしかった。