不思議と自分の過去を想起させるようなメロディは、今日聞いた中でいちばん素敵な曲だった。

 タイトルはなんていうのだろう。
 新曲だから、まだ聞けないのかな。

 すぐにでも聞き返したい。そんな思いが沸き上がる中、私は立ち上がって拍手を送っていた。
 頑張ってきた人生が報われた気持ちになる、素敵な歌だった。

 もちろん私だけではなく、観客からの拍手は鳴り止まなかった。
 惜しまれるように彼らは一度会場を後にし、すぐにアンコールで帰ってきた。

 「写真撮ろーぜ写真!!」

 そう呼びかけたボーカルに、集まるメンバーたち。
 その時再度舞台に上がったダンサーたちの中で、櫂晴の目は赤く腫れているように見えた。

 さっきの曲を作曲したのだと言っていたベースの彼と親しそうに肩を叩きあって、隣に座る。
 その様子を眺めて、私は満足だった。

 彼の世界で、楽しく過ごせているだろう櫂晴を見ることができて、幸せだった。