「それじゃあ、後半戦はさらに盛り上がる曲集めました!楽しむ準備出来てますか!
 そして今日はなんと!一緒に盛り上げてくれる仲間がいます!!」

 楽しそうなMCに合わせ、盛り上げるようなギターが細かい音で演奏される。
 その楽しそうな笑顔にドラムが加わり、その様子を冷静に見ているように見えたベースの方も少し口角を上げて参戦した。

 「ボルテージ上げてくぜ!!」

 ボーカルの景気のいい煽りを合図に次の曲が始まり、両サイドからオシャレな黒い服を着た4人がステージに加わった。

 メンバーが増えたのだと思った私。
 けれども、増えた4人はダンサーだった。

 楽しそうなボーカルと時に笑い合いながら、キレのいいロックダンスを披露する。

 数曲連続で踊りきった彼らのひとりから、私は目を離せなかった。

 「……櫂、晴……?」

 周りの騒がしい歓声はもう聞こえなかった。
 ただひとり、自分の思うように楽しそうに身体を動かす男の人に目を奪われる。

 しなやかで力強い身体遣い。
 私が知っている彼のダンスとは全く違うけど、でもどこか名残がある。

 それに私はあの……、あの楽しそうな純度100%の笑顔を間違えるはずがない。

 気付けば涙が出ていた。もう見れないと思っていた。

 「……よかった、叶ってたんだね」

 ずっと夢を追いかけてきた。私の夢を支えてくれた。
 かけがえのない戦友で、愛した人だった。

 気付けばダンサー達は舞台袖へと捌けていき、落ち着いた演奏とともに、MCの時間となっていた。

 しっとりした時間で、先程とは表情を変えたバンドメンバーがひとりひとり今日の感謝を述べていく。

 「本日は、皆さんの大切な時間を、僕たちにくれてありがとうございました」
 「ずっと、ずっと見たかった景色が今日見られました。満員の俺らを応援をしてくれる人と、最高の音楽を作ること、叶えられて本当に幸せです」
 「もっと、上へ行きます。もっと凄い景色を見せることを約束します。だから、どうか着いてきてください」

 ひとことひとことが、熱く胸に刺さる言葉だった。
 会場からは鼻をすする音が聞こえてきた。