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 初めて訪れたライブ会場は賑わっていた。

 最近話題のバンドだと言うこともあり、若いお客さんが多く、会場は華やかだった。
 至るところで開場を待つ集団が写真を撮り合う中、ひとりの私は少し離れた場所でチケットを見つめる。

 こんなにファンがいるんだ……。
 曲も知らないのに来てしまったけど良かったのだろうか。

 今さらの不安を胸に抱き、立ち尽くす。
 それからすぐに動き始めた入場の列に、私は遠慮がちに、人が減ってから列の後ろに加わった。

 「チケット確認致します」

 そのチケットを受け取ったスタッフさんに指示される。

 「2階席ですね、こちらの階段からお願いします」

 多くの人に続いて1階に進むのだと思っていた私は、一瞬戸惑ってしまった。

 「あ、あ、はい。」

 階段を昇って納得する。
 2階席には指定の座席があった。

 右寄りの1列目に腰を下ろし、1階を見下ろすと、1階ではファンたちが押し合うように前を取り合っていた。
 確かにあの中にはいけない。
 2階席はチケットを送ってくれた方の気遣いだろうか。

 私は、開演までの間、スマホの電源を落とし、スモークで少し濁った会場特有の雰囲気を楽しんでいた。