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 「先輩!先輩に届け物です!」

 ランチから戻ると、後輩に声をかけられた。
 受け取った封筒には差出人は書いてない。

 「なにこれ、手渡し?」

 切手も貼られていない無地の封筒に、違和感を覚える。

 「みたいですよ、渡されたの私じゃないんですけど、上の部署の同期が受け取ったとかで!なんか、アーティストさん?みたいですけど、知り合いいるんですか?」
 「え?いないいない、情報番組でご一緒させて頂くくらいだけど……?」

 目を輝かせた後輩の手前、開けないわけにはいかなくて。
 恐る恐る開いた封筒の中には、折りたたまれた1枚の厚紙が入っていた。

 「……pluie(プリュイ)?」
 「えー!pluie(プリュイ)ですか!?最近話題ですよね!チケットですか!?」
 「確かに、名前は聞くかも……?チケットだ、ライブ?」

 音楽番組の一部コーナーを受け持ったとき、見たような見なかったような……という程度の知識しかなくて申し訳なくなる。

 「知り合いいました?」

 グループ名以外には、ローマ字でメンバーの名前らしきアルファベットがいくつか添えられていたけれど、バンドマンの知り合いなんて、どう考えても存在しない私は首を横に振った。

 「え、てかこれ今日だよね?」

 スマホで日時を調べて目を疑う。

 だけど、久しぶりのイベントごとに、素直に心は浮足立って、私は時間内に帰れるよう仕事に集中した。