⋆*
 「お疲れ様。安定感出てきたね」
 「お疲れ様です!ありがとうございます!」

 情報番組に起用されて3年ほど。

 今でも緊張はするものの、少しずつ思う通りに出来るようになってきた私は、今年から準レギュラーとして朝と昼の天気予報を担当している。

 今日はお昼も担当していたため、番組終了後に局アナの先輩とランチの約束をしていた。

 「美雲ちゃんは、気象予報士ストレート合格なんだよね?すっごいよねー、私絶対無理だ」

 親しみやすい先輩は、アナウンサーになって7年目。
 下積み期間も長かったようで時折そんな発言をする。

 「いやいや、運が奏した部分もありますし……」

 謙遜を口にした私は、少しして思い出話を始めた。

 「私も絶対に無理だと思ってたんです。けど、ずっと応援してくれた人がいて。その人のおかげで受けようと思ったし頑張れた、みたいなところがあって」

 自分のことを語るのなんて初めてかもしれない。

 少し熱くなった頬を隠すように手の甲で触れるとやっぱり熱を持っていた。

 「え!?なにそれ超青春だね……。いまは?仲良くしてんの?彼氏とか?」

 思いの外、反応よく受け入れられた身の上話にほっとする。
 私は「まさか」と片手を振って、否定した。

 「元彼です。大学の途中でお互い忙しい時期に自然と会わなくなってそのまま自然消滅しました」
 「なんだ、そうなんだ……。でもじゃあ、青春の超いい思い出って感じだね」
 「そうですね、新しい世界を教えてくれた人です」

 にこりと微笑むと、先輩は「いい顔してんじゃん」と私の頬を優しくつついた。