表子に三桜公園のことを尋ねると「うちの近くだね」と言った。
「お化けが出るんだって」
「え……!」
掌を下に向けて指先をピンと伸ばしている。背筋も伸びて、踵だけで体を支える。マスオさんみたいだなって思った。
「そんな……」
余命宣告された花嫁のような反応。窓から差し込む西日が悲壮感を一層煽り、深刻度が増していく。マジか。この歳になってまだお化けを信じているとは。
「ごめんごめん! 多分なにかの見間違いだと思うよ?」
「そう、かな?」
「表子って本当に怖がりだよね。ホラーゲームのゲーム実況し——」
表子の両手が私の口を塞ぐ。小さな目をギョロッと剥いて、緊張した顔を小刻みに震わせる。
「ダメだよ……!」
首をコクコクと頷かせると、表子の手がゆっくりと口から離れた。
「ごめん、ついうっかり。まあでもいまのじゃあバレないでしょ」
辺りをそれとなく見回してみる。教室に人は居るけど、みんな自分たちの話に夢中になっている。
「未来香ちゃん以外には……ダメ」
ぎゅっと服の裾を摘ままれる。
「わかった、ごめんね」
彼女の手に手を添える。そしてゆっくり——そう、ゆっくり離して? 制服皺になっちゃうからお願い。
「お詫びに私が見てきてあげようか?」
「お化けを?」
「そ」
「ダメだよ!」
「だーいじょうぶだよ。居ないことを確認するだけ。居たら速攻で逃げるよ。私が足速いのは知ってるでしょ?」
表子は私の手を握って首をぶんぶん振る。おさげがフォンフォン音を立てる。あ、ちょっと待って、ねえ、フケ飛んでるから。待って待ってやめてやめて。てーかこの前教えてあげたシャンプーとトリートメントちゃんと使ってんの?
「わかった」
掌を彼女に向けて二度、三度と頷いて見せる。神妙な顔になることも忘れない。
彼女は心底ほっとしたように胸を撫で下ろした。
「お化けが出るんだって」
「え……!」
掌を下に向けて指先をピンと伸ばしている。背筋も伸びて、踵だけで体を支える。マスオさんみたいだなって思った。
「そんな……」
余命宣告された花嫁のような反応。窓から差し込む西日が悲壮感を一層煽り、深刻度が増していく。マジか。この歳になってまだお化けを信じているとは。
「ごめんごめん! 多分なにかの見間違いだと思うよ?」
「そう、かな?」
「表子って本当に怖がりだよね。ホラーゲームのゲーム実況し——」
表子の両手が私の口を塞ぐ。小さな目をギョロッと剥いて、緊張した顔を小刻みに震わせる。
「ダメだよ……!」
首をコクコクと頷かせると、表子の手がゆっくりと口から離れた。
「ごめん、ついうっかり。まあでもいまのじゃあバレないでしょ」
辺りをそれとなく見回してみる。教室に人は居るけど、みんな自分たちの話に夢中になっている。
「未来香ちゃん以外には……ダメ」
ぎゅっと服の裾を摘ままれる。
「わかった、ごめんね」
彼女の手に手を添える。そしてゆっくり——そう、ゆっくり離して? 制服皺になっちゃうからお願い。
「お詫びに私が見てきてあげようか?」
「お化けを?」
「そ」
「ダメだよ!」
「だーいじょうぶだよ。居ないことを確認するだけ。居たら速攻で逃げるよ。私が足速いのは知ってるでしょ?」
表子は私の手を握って首をぶんぶん振る。おさげがフォンフォン音を立てる。あ、ちょっと待って、ねえ、フケ飛んでるから。待って待ってやめてやめて。てーかこの前教えてあげたシャンプーとトリートメントちゃんと使ってんの?
「わかった」
掌を彼女に向けて二度、三度と頷いて見せる。神妙な顔になることも忘れない。
彼女は心底ほっとしたように胸を撫で下ろした。