「三桜《みさくら》公園にヘッドフォンのお化けが出るって知ってる?」

 昼休み。バスケットのリングにボールをポスッと入れながら仁一《じんいち》は不穏なこと言った。
 その公園は緑下《みどりした》団地にある。確か表子《ひょうこ》もその団地だったような。

「ヘッドフォンが浮いてるの?」
「そうじゃなくて、ヘッドフォンを付けたお化けがこの世のものとは思えないような動きで暴れてるんだってさ」
「ほー」
「なんだよ、もっと怖がるかと思った」
「悪かったねー」
「悪かーねーけど、てーかその姿勢やめろよ。パンツ見えるぞ」

 へへっ。見せてるんだよー。アンタが顔を赤くするのが面白くて。昼休み中にもバスケの練習に勤しむ殊勝な心掛けのバスケ部主将もチョロいんだから。

「仁一《じんいち》が言うならしょうがないなー」

 開いていた膝を閉じて、預けていた背中を浮かせて、女の子座りから横座りに切り替えた。

「それでいいんだよ」

 私から目を切って、その瞬間にはもうシュートのモーションに入っていた。
 仁一はカッコイイなあ。真剣な目に切り替わったときの横顔は鷹のようだ。それに純粋でカワイイ。さっきも私を怖がらせようとしたんだ。そんで、一緒に帰ろうって言いたかったんじゃないかな。もう全部大好きだよ。仁一も私のことも好きでしょ。そうでしょ?

 ——ポスッ。

 リングネットがコクンと揺れた。