閉校式から三日後。
 私と千秋は、ふーの家に遊びに来ていた。
 今日はタイムカプセルを埋める日だ。
 私達は入れるものの準備をしていた。
 
「手紙書いたー? 缶、準備したから入れてねー」

 ふーは自分の手紙を入れた缶を手渡してきた。

「はいよー。今、封筒に封するから」
「んじゃー、うちの先に入れるねー」

 千秋が先に手紙を缶に入れた。
 その後、私も缶に手紙を入れた。

「あとは写真だね。これでいいかな?」
「ちょっと見せてー」

 千秋はふーから写真を受け取り、チェックを始めた。
 私も写真を覗いて見た。
 夏休みに学校で勉強している写真や、卒業式に撮った写真であった。

「いいんじゃない?」
「そうだね。いいね」
「じゃー、これも缶に入れて……。缶に封するよー」
「はいよー。じゃー、ガムテープで……」

 千秋が缶にガムテ―プをグルグルと巻き始めた。

「よしっと! 早速、埋めに行こうか」
「うん!」
「ふー、スコップある?」
「うん、あるよー。このスコップ使ってー」

 私はふーからスコップを受け取った。

「なっつ、スコップ合うねー」
「来月から農業高校に通いますからね!」

 私達は、中学校の桜の木の元へ歩いて行った。

「よし、なっつ! ここ掘れ!」
「おい、千秋。『ワンワン』って言うとでも思ってたか? 犬じゃねーんだから」
「ごめんごめん。さぁさぁ、掘って掘って」

 私はタイムカプセルを埋めれるくらいの穴を掘った。

「うん、このくらいでいいと思うよ」

 そう言ってふーは、穴の中にタイムカプセルを置いた。

「おっ、なっつ。ピッタリじゃん! さすが!」

 ふーが満足そうに言った。

「んじゃー、埋めるよー」

 私は穴に土を戻してタイムカプセルを埋めた。

「五年後だね」
「うん、成人式の日に掘り起こそう」
「またここに三人で集まろう。約束だよ!」

 五年後、私達は二十歳になっている。
 その日まで、手紙に何を書いたかはお互い伏せておくことにしている。
 私はふと笑いながら言った。

「ねー。これ五年後、三人とも忘れてたらウケるよねー」
「ないない。たった五年だよ? 忘れてても誰か一人くらい覚えてるでしょ!」

 ふーは笑いながら言った。
 すると千秋が、

「ふーは忘れてそうだけどね。言い出しっぺが忘れてたらおかしいよね」

 と言ってからかっていた。

「ひどい! たった五年だし、忘れないもん!」

 三人が笑いながら話していると、風が吹いた。
 桜の木の枝が風に吹かれ、まるで桜の木も笑っているかのような音が聞こえた。

「さっ、戻ろうか。なんか、お父さんが相談したいことがあるんだってさー」
「そうなの? 分かったー。行こう」

 私達はふーの家に戻った。

「おかえりー。ちゃんと埋めてきたかい?」

 家に着くとふーのお父さんが出迎えてくれた。

「うん、バッチリ!」
「良かった。五年後が楽しみだね。なっちゃん、千秋ちゃん。ふーから聞いてたと思うけど、相談したいことがあってね。中に入ってー」
「はーい」

 私達はリビングのテーブル席に座った。

「二十八日にPTA主催の先生方の歓送迎会をやるんだけど。みんなの太鼓演奏が終わった後、みんなから先生方に花束と記念品を贈呈して欲しいんだけど、頼めるかな?」
「良いですよー」
「うちも良いですよ」
「オッケイ、オッケイ!」

 三人とも、了承した。

「ありがとう。流れなんだけど……。みんなが太鼓を叩き終わったら先生方の方に行ってもらって、そしたら父兄が花束と記念品を持ってきてあげるから。受け取ったら先生方に贈呈してね。担当も決めようか」
「そうだね! その方が流れ良いかも」

 ふーがメモを取りながら言った。

「校長先生にはふーとPTA会長の私が。川村先生にはなっちゃんと千秋ちゃん。内藤先生には靖朗君と淳君。中野先生には明日香ちゃんときらりちゃん。そんな感じで良いかな?」
「良いと思います。そしたら当日、二年生達にも伝えておきますね」
「ありがとう、なっちゃん。みんな、当日よろしくね」
「はい!」
「サプライズだね! 先生達、泣くかなー?」

 ふーは先生達が泣くのを期待しているようだ。

「案外、泣かないかもよ?」

 私がそう言うと千秋が、

「そう? うちもふーと一緒で泣くと思うなー。特に川村先生! 祝賀会でも泣いてたじゃん!」

 と言ってきた。
 言われてみればそうだったな~……。

「サプライズ、成功すれば良いね!」
「そうだねー」

 思わずサプライズ企画に胸が高まってきた三人であったのだ。