月曜日の午前中。
私達は三人で協力して、卒業アルバムを完成させた。
選びに選びぬいた写真を配置し、それぞれが書いた『将来の夢』という題の作文もアルバムに貼った。
お互いの作文を読み合って笑ったり、懐かしい写真を見ては思い出話に花を咲かせたりして、時間がかかったけど楽しい一日だった。
「おーわりっとー。いや~、二人とも合格して良かったね!」
「ほんと、それー。絶対落ちてると思っていたからねー」
「うちら、頑張ったもんねー」
こうして、無事に三人とも、第一志望校を合格することが出来たのであった。
だがしかし、姫乃森中学校生としてやることがまだたくさん残っている……。
「もう少しで閉校式かぁ~」
私は完成した卒業アルバムを見返しながら、寂しそうに呟くと、千秋が感慨深そうに言った。
「そう言えば、うちとなっつが、ふーと初めてあった時のこと覚えてる?」
「あぁ、覚えてるー。ふー、お母さんにしがみついて顔を隠してたよねー」
私と千秋は、当時を思い出して大笑いした。
ふーは、納得がいかないように唇を尖らせている。
あれは、私達が小学校の頃のこと……。
二年生に進級して間もない、四月下旬。
当時の担任の先生に案内されたのは校長室であった。
担任の先生から、ゴールデンウィーク明けに転校生が来ることを知らされた。
こんな田舎に転校生が来るなんて、考えてもいなかった。
ドラマや漫画の中の出来事であると、当時の私達は思っていた。
ただでさえ、校長室に入ったことがないため、緊張しながら行ったのを今でも覚えている。
「失礼します……」
私と千秋は担任の先生に促されながら、校長室に入った。
そこには、校長先生と一人の女性がいた。
「こんにちは。はじめまして。加藤といいます。五月から宜しくおねがいします。ほら、ふーちゃん! ちゃんと挨拶して!」
その女性は、ふーのお母さんであった。
ふーのお母さんがそう言うと、背後から女の子が現れた。
小さくて、おかっぱ頭のおとなしそうな子だった。
その女の子の存在に、私も千秋も気づいていなかった。
ほんわりとした穏やかなお母さんの後ろに、すっぽりと隠れていたからだ。
そのため、女の子が現れた時はびっくりした。
しかし、その女の子はチラッと私達のことを見るとすぐ、お母さんの背後に隠れてしまったのだ。
「ほら、ふーちゃん! 幼稚園児じゃないんだから、ちゃんと挨拶しなさい!」
「………」
「もう……。ごめんなさいね。この子は加藤冬美と言います。宜しくおねがいします。普段はこんな子じゃないんだけど、恥ずかしがっちゃって……」
ふーのお母さんがしょうがなく、代わりに紹介してくれた。
「わたし、工藤夏希と言います……。宜しくおねがいします……」
この頃の私は、人見知りが酷かったため、か細い声での自己紹介であった。
「私の名前は、小原千秋と言います! 宜しくお願いします!」
千秋はハキハキとした子であったため、堂々と挨拶をした。
しかし、私達が自己紹介をしても、ふーは私達の方を向いてくれなかった。
「冬美ちゃーん! よろしくねー!」
「ふ……冬美ちゃん……。よっ、よろしく……ね……」
私も千秋に習って勇気を出してふーに声を掛けた。
それでもふーは、お母さんの腕にしがみついていてこちらを向いてくれる気配はなかった。
段々ふーが、コアラに見えてきた。
「ほんとに、ごめんなさいね。こんな子だけど、仲良くしてね」
「はい!」
これが私と千秋、ふーの初めての出会いであった。
今のふーを見てると、あの恥ずかしがりようが信じられない。
「だって、初めてで恥ずかしかったもん!」
ふーが当時のことをそう振り返った。
「こっちは、ショックだったんだからね! どんなに声かけても、うんともすんとも言ってくれなかったし、顔も見せてくれなかったんだもん!」
千秋がガミガミと言っていた。
「私は、あの頃、人見知りが酷かったのに勇気出して千秋と一緒に声かけてたなー。結局、ふーは最後まで私達に顔を見せてくれなかったもんねー」
私がそう言うと、ふーが、
「ほんとごめんって! でも、今はこんなに仲良しになってるんだから、良いじゃん!」
と、過去の恥ずかしい自分を忘れたいかのように言った。
「あたしのことばっかり言うけどさ、なっつだって全然喋んなかったじゃん!」
「しょうがねーだろ! 人見知りなんだから!」
「なっつの人見知りは、ほんと凄かったよね。小さい頃は、うちともあまり喋んなかったもんね~」
「知らない人、怖かったんだもん。人間不信的な~?」
今となっては笑って話せるが、その頃はお互い気を使ってばかりだった。
でも、ぎこちなかったのは最初だけで、一緒に過ごしていれば自然に喋るようになる。
これといったきっかけがあったわけでもないが、いつの間にか仲良くなって、当たり前に過ごせるようになった。
そして、ふーが転校して来て、三人の仲間になったからこそ今の自分達がいる。
三人というのは、二対一に分かれてしまうことが多く、仲が悪くなりやすい人数だとよく言われている。
しかし、私達三人は仲良しである。
個性が強く、喧嘩をすることもあるが、いつも三人で協力してどんな困難も乗り越えてきた。
まもなくそれぞれの道を歩むため、しばしの別れとなるが、私達はいつまでも親友であると、三人とも強く思っていたのであった。
私達は三人で協力して、卒業アルバムを完成させた。
選びに選びぬいた写真を配置し、それぞれが書いた『将来の夢』という題の作文もアルバムに貼った。
お互いの作文を読み合って笑ったり、懐かしい写真を見ては思い出話に花を咲かせたりして、時間がかかったけど楽しい一日だった。
「おーわりっとー。いや~、二人とも合格して良かったね!」
「ほんと、それー。絶対落ちてると思っていたからねー」
「うちら、頑張ったもんねー」
こうして、無事に三人とも、第一志望校を合格することが出来たのであった。
だがしかし、姫乃森中学校生としてやることがまだたくさん残っている……。
「もう少しで閉校式かぁ~」
私は完成した卒業アルバムを見返しながら、寂しそうに呟くと、千秋が感慨深そうに言った。
「そう言えば、うちとなっつが、ふーと初めてあった時のこと覚えてる?」
「あぁ、覚えてるー。ふー、お母さんにしがみついて顔を隠してたよねー」
私と千秋は、当時を思い出して大笑いした。
ふーは、納得がいかないように唇を尖らせている。
あれは、私達が小学校の頃のこと……。
二年生に進級して間もない、四月下旬。
当時の担任の先生に案内されたのは校長室であった。
担任の先生から、ゴールデンウィーク明けに転校生が来ることを知らされた。
こんな田舎に転校生が来るなんて、考えてもいなかった。
ドラマや漫画の中の出来事であると、当時の私達は思っていた。
ただでさえ、校長室に入ったことがないため、緊張しながら行ったのを今でも覚えている。
「失礼します……」
私と千秋は担任の先生に促されながら、校長室に入った。
そこには、校長先生と一人の女性がいた。
「こんにちは。はじめまして。加藤といいます。五月から宜しくおねがいします。ほら、ふーちゃん! ちゃんと挨拶して!」
その女性は、ふーのお母さんであった。
ふーのお母さんがそう言うと、背後から女の子が現れた。
小さくて、おかっぱ頭のおとなしそうな子だった。
その女の子の存在に、私も千秋も気づいていなかった。
ほんわりとした穏やかなお母さんの後ろに、すっぽりと隠れていたからだ。
そのため、女の子が現れた時はびっくりした。
しかし、その女の子はチラッと私達のことを見るとすぐ、お母さんの背後に隠れてしまったのだ。
「ほら、ふーちゃん! 幼稚園児じゃないんだから、ちゃんと挨拶しなさい!」
「………」
「もう……。ごめんなさいね。この子は加藤冬美と言います。宜しくおねがいします。普段はこんな子じゃないんだけど、恥ずかしがっちゃって……」
ふーのお母さんがしょうがなく、代わりに紹介してくれた。
「わたし、工藤夏希と言います……。宜しくおねがいします……」
この頃の私は、人見知りが酷かったため、か細い声での自己紹介であった。
「私の名前は、小原千秋と言います! 宜しくお願いします!」
千秋はハキハキとした子であったため、堂々と挨拶をした。
しかし、私達が自己紹介をしても、ふーは私達の方を向いてくれなかった。
「冬美ちゃーん! よろしくねー!」
「ふ……冬美ちゃん……。よっ、よろしく……ね……」
私も千秋に習って勇気を出してふーに声を掛けた。
それでもふーは、お母さんの腕にしがみついていてこちらを向いてくれる気配はなかった。
段々ふーが、コアラに見えてきた。
「ほんとに、ごめんなさいね。こんな子だけど、仲良くしてね」
「はい!」
これが私と千秋、ふーの初めての出会いであった。
今のふーを見てると、あの恥ずかしがりようが信じられない。
「だって、初めてで恥ずかしかったもん!」
ふーが当時のことをそう振り返った。
「こっちは、ショックだったんだからね! どんなに声かけても、うんともすんとも言ってくれなかったし、顔も見せてくれなかったんだもん!」
千秋がガミガミと言っていた。
「私は、あの頃、人見知りが酷かったのに勇気出して千秋と一緒に声かけてたなー。結局、ふーは最後まで私達に顔を見せてくれなかったもんねー」
私がそう言うと、ふーが、
「ほんとごめんって! でも、今はこんなに仲良しになってるんだから、良いじゃん!」
と、過去の恥ずかしい自分を忘れたいかのように言った。
「あたしのことばっかり言うけどさ、なっつだって全然喋んなかったじゃん!」
「しょうがねーだろ! 人見知りなんだから!」
「なっつの人見知りは、ほんと凄かったよね。小さい頃は、うちともあまり喋んなかったもんね~」
「知らない人、怖かったんだもん。人間不信的な~?」
今となっては笑って話せるが、その頃はお互い気を使ってばかりだった。
でも、ぎこちなかったのは最初だけで、一緒に過ごしていれば自然に喋るようになる。
これといったきっかけがあったわけでもないが、いつの間にか仲良くなって、当たり前に過ごせるようになった。
そして、ふーが転校して来て、三人の仲間になったからこそ今の自分達がいる。
三人というのは、二対一に分かれてしまうことが多く、仲が悪くなりやすい人数だとよく言われている。
しかし、私達三人は仲良しである。
個性が強く、喧嘩をすることもあるが、いつも三人で協力してどんな困難も乗り越えてきた。
まもなくそれぞれの道を歩むため、しばしの別れとなるが、私達はいつまでも親友であると、三人とも強く思っていたのであった。