へいこう日誌

 今年の冬は暖冬であった。
 しかしある日、大雪警報が出るほどの積雪があった。
 いわゆるドカ雪である。
 この日は冬休みに行う、奉仕活動の日であった。
 奉仕活動は二ヶ所に分かれて行う。
 近所にある公民館と、学校のバス停だ。
 私と千秋、きらり、淳は公民館を担当し、ふーと明日香、靖郎は学校のバス停の担当だ。

 玄関を開けると六十センチくらいの積雪があり、機械じゃないと雪かきが出来ないほどであった。
 そして更に、最悪な事態になっていた。
 大雪のせいで姫乃森地域は停電になっていたのだ。
 千秋達に連絡しようにも、どうにもできない状態であった。

「どうしよう……」

 そう言っていると、母が心配そうに話し掛けてきた。

「これじゃー無理なんだ。先生も分かってくれるでしょ」
「うーん。でもみんな来てたら……」
「こんな雪で来れるわけないでしょ」

 母の言う通りだ。
 しかし、公民館の鍵も借りてきていたし、学校の活動だから必ずやらなければならないという責任感もある。
 結局、スコップで雪をかき分けながら公民館に向かった。
 いつもなら徒歩で三分なのに、今日は二十分もかかってしまった。
 冬なのに、結構な汗をかいてしまっている。
 公民館に着くと、きらりと淳が玄関までの道を雪かきしていた。

「おーい!」

 私は二人に向かって声を掛けた。
 すると二人は私に気づいてくれたようで、手を大きく振ってくれた。

「夏希さーん! 雪ヤバいですー!」

 きらりが大声で言った。

「早く玄関開けて下さーい!」

 淳が雪を払いながら言った。

「分かってるってー!」

 私は、公民館の玄関を開けた。

「やっと着いた~」

 後ろを振り向くと、ヘトヘトになりながら歩く千秋がいた。

「頑張ったねー。さぁー、ちゃっちゃと終わらせて帰ろう」

 そう言って私は、掃除道具が入っている倉庫に入っていった。
 千秋は箒で和室の掃除、きらりはテーブルの拭き掃除、淳はホールのモップがけをやりだした。
 私は掃除機をかけようと準備し、スイッチを押した。
 しかし、掃除機が作動しない。

「あれ? どうして?」
「なっつ、停電してんだから、掃除機使えるわけないじゃん」

 千秋がツッコんできた。

「あ、そっか。忘れてた」
「夏希さーん! モップ掛けたから、掃除機でゴミ吸って下さーい!」
「あっつー、停電してて使えなーい!」
「あ、そっか」

 淳も停電していたことを忘れていたようだ。

「夏希さーん! 電気つかなーい!」
「停電してるからつかないよー!」
「あ、そっか」

 きらりも忘れていたようだ。

「あんた達……」

 千秋は呆れていた。
 適当に掃除を終わらせて私達は解散した。
 みんな、汗と雪で濡れてビショビショになってしまっていた。
 お陰で、みんな家に帰ると親に怒られたのであった。
 後にふー達に奉仕活動の日のことを聞くと、バス停組もみんな揃って掃除をしたという。

「大雪で大変だったよねー。でもやんなきゃいけなかったし、しょうがないけどね」

 そう、ふーは言った。

 あとで、先生達から停電するくらいの大雪の日は危険であるため、無理にやらなくて良いことを言われた。
 終いには、バカ真面目にも程があるとまで言われてしまった。
 しかし、私達は満足していた。
 奉仕活動は今回で最後。
 ちゃんと掃除をしてきたことに胸を張っていたのであった。