秋が終わる頃。
 だいぶ寒くなってきた。
 私達は今、面接練習に励んでいる。
 今日も放課後には面接練習がある。
 先生たちがローテーションで面接官役をし、実戦的な練習をしている。

「あー! 今日も面接練習かー。飽きたぁー!」
「私もー。まだ部活やっていた方が楽だわ」
「二人とも! 集中しなよ。あとになって困るのは自分なんだからね!」

 私とふーに喝を入れる千秋。

「あたしの今日の練習、校長先生とだー」
「うちは内藤先生」
「私は川村先生だ」

 練習は十六時から始まる。
 それぞれ指定された教室に移動する。
 私は自分の教室で面接練習を行うため、川村先生を待つだけだ。

 何度も練習を重ねてきたからか、気持ちに余裕を持って質問に答えられるようになった。
 もはや、おさらいといったところだ。
 いま一度、予想された質問をまとめた用紙を見返しながらイメージトレーニングをしていた。
 少しすると、川村先生が教室に入ってきた。

「おまたせー。じゃー、始めようか」
「はい。宜しくお願いします」

 私は一度教室から出た。
 入室するところから面接練習が始まる。
 私は教室の扉をノックした。
 川村先生の「どうぞ」という声が聞こえてから、入室する。
 私は静かに歩き、椅子の横に立つ。

「それでは、学校名と名前を言って下さい」
「姫乃森中学校から参りました、工藤夏希です。宜しくお願いします」
「はい、ではお掛け下さい」
「失礼します」

 ここでようやく椅子に座る。
 そして、面接官からの質問が始まる。

「では、我が校を受験しようと思った理由をお聞かせ下さい」
「はい。私は、小さい頃から郷土芸能が好きで、貴校の郷土芸能部に憧れを抱いていました。貴校でしか出来ない郷土芸能に魅力を感じ、受験することを決めました」
「中学校生活の中で何か郷土芸能をやっていましたか?」
「太鼓と神楽をやっていました」

 ここまでは良かった。

「あなたの長所は何ですか?」
「何事にも挑戦する積極性があることです」
「あなたの担任の先生の長所は何ですか?」
「優しくて、いつも生徒のために尽くしてくれるところです」

 ニヤついている!
 先生! 
 顔に出ていますよ!

「次に、毎週土曜日の十八時からやっているロボットアニメについてお聞きします。あなたは、あのロボットアニメは好きですか?」
「はい。よく見ています」
「あのロボットアニメは何期が好きですか?」
「今放送されている五期が好きです」
「初代は?」
「すみません。初代は私が生まれる前に放送されていたものであるため、見たことがありませんので、分かりません」
「主人公のカズヤについてどう思いますか?」
「すみません。初代はよく分からないので……」
「はい、分かりました。これで面接を終わります。お疲れさまでした」
「ありがとうございました。失礼いたします」

 私は教室から出て、戸を閉めた。
 少しすると、「入っていいよー」と川村先生の声が聞こえた。
 入室し、講評をもらい、次に活かすのだが……。

「はい、おつかれー」
「お疲れじゃないです! 何ですか最後の質問! 私、食品科を受ける人なのに! ロボってなんですか!? 私、工業科を受けるんじゃないんですけどッ! そして、自分のことを聞いておいて、ニヤニヤするのやめて下さい!」
「ごめん、ごめん。面接練習パーフェクトだからさー。ちょっと遊んでみたの。あとさー、やっぱ褒められると嬉しいじゃん。そりゃー、ニヤつくよ」

 ヒドイ! 
 こっちは第一志望校受験合格をかけているのに!
 遊ぶなよ!
 てか、川村先生の反省会になってる!

「んじゃー、本番もさっきみたいに堂々と出来るようにねー。バスの時間まで、勉強してていいよー。お疲れさーん」

 軽すぎる! 
このチャラ男!

「はい……。お疲れさまでした」

 あとは勉強を頑張るのみか。
 六十点以上は当たり前に取れるようになった。
 もうひと頑張りだ! 
 そう思っていると、千秋とふーが教室に戻ってきた。

「おつー」
「おっつー。どうだった?」
「あたしはオッケイ! 校長先生に褒められた!」
「良かったね。千秋は?」
「うちもバッチリ! なっつは?」
「パーフェクトらしいけど……。ヒドい練習だった。面接というより、雑談?」
「あー分かるー。川村先生、最近、練習が雑談になってるもんね。うちは逆に気楽で楽しかったよ」
「あたしは、アニメとかよく分からないから、毎回困ってるんだよねー」
「川村先生の時は、やっぱり雑談なのか。他の三人の先生方はしっかりしているから安心だけど」
「まぁーねー。あ、時間まで三人で受験勉強しよーよ」
「いいねー!」

 ふーの提案で三人で時間まで受験勉強をして過ごしたのであった。