突如として現れた魔法陣が黒く光りだした。
とっさに腕で光を直視しないように遮る。
そして黒い光が消えた後、そこにいたのはビルゴと闇の魔道士の姿だった。
しかし何かがおかしい。ビルゴと闇の魔道士に実体感がないというか、気配が薄い気がする。
アルス王子とルキアさんも違和感に気がついていて、警戒をしていた。
「ふう、突然呼ばれたと思ったらこれはこれは領主夫人様。いかがされましたか?」
ビルゴは恭しく領主夫人に挨拶をしていた。
やはり領主夫人とは知り合いだったか。
「ビルゴよ、あの者共を殺せ」
「おや、これはアルス王子とルキアではないですか。ふむ、領主夫人にとって大ピンチのようですね」
「うるさい、さっさと殺れ」
もう、領主夫人は正常な思考ではないようだ。
狂ったように、こちらを殺せって繰り返し言っている。
目が血走って、口から泡を吐きながらだから、人間に見えなくて本当にオークの様に見えるぞ。
ビルゴと領主夫人のやりとりの隙きをついて、ルキアさんがビルゴと闇の魔道士に向かって魔法を放った。
「ふっ」
「やはり、そうか」
「流石はアルス王子、ご明察で」
ルキアさんが放った魔法は、ビルゴと闇の魔道士をすり抜けて背後の壁に当たった。
違和感の正体はこれだったんだ。
実際に召喚されたわけではなく、映像みたいなので見えているだけなんだ。
ビルゴも、この事は直ぐに認めていた。
「実体ではないとはな」
「そちらの攻撃は通じないのさ。こちらもある攻撃以外は何もできないがな」
「ある攻撃?」
ビルゴがニヤリと笑った瞬間に、闇の魔道士が杖をかざした。
辺りに魔法陣が複数展開し、魔獣が複数現れた。
背後でも何か光った様なので、どうも街中でも魔獣が召喚されたらしい。
「さて、我々も暇ではないんでね。領主夫人、後はご自分でよろしく」
「な、私を見捨てる気か」
「それでは。今日はサトーに会えないのが残念だが、アルス王子にルキアよまた会おう」
言うことだけ言って、ビルゴと闇の魔道士はさっさと消えてしまった。
そして呆然と座り込んでいる領主夫人。
つまり闇ギルドは、ブルーノ侯爵を切り捨てたと言うことだ。
そしてビルゴは、アルス王子とルキアさんにまた会おうと言った。
この位は簡単に乗り切れると、闇ギルド側も踏んでいるのだろう。
ちなみに俺は、常にビルゴの視線の範疇にいたはずだ。
うん、全く気づいていなかった。
「殺せ、殺せ殺せ殺せ! ふぐ」
本格的に領主夫人が壊れてきたので、さっさとタラちゃんに拘束してもらった。
ビルゴと闇の魔道士もいない以上、これ以上時間をかける必要もない。
ついでにバカ息子と司会も、ぐるぐる巻きにしておく。
バカ息子は未だに気絶したまんまだよ。
「アルス王子、さっさとコイツらを片付けましょう」
「うお、誰かと思ったらサトーか。声まで女性のものに。以前サトーの女装姿を見ていなければ、全く気づかなかったぞ」
「えーっと、そこまでわかりませんか?」
「一見すると、男性だとはとても思わない」
「あはは、ですよね」
「ルキアさんまで酷い」
アルス王子は、全く俺の事に気がついていなかった。
ルキアさんも、何もフォローしていないぞ。
「もういいです」
「そう落ち込むな」
「せっかくの美人顔が台無しですよ」
「さて、我々も動こう。騎士は来場者の護衛を」
「「「は!」」」
アルス王子が、護衛についてきていた騎士に指示を出し、俺も再度アイテムボックスから刀を取り出して魔獣に相対する。
とはいってもビルゴも闇の魔道士もいないし、事前の準備もなく突然の召喚だったから魔獣のレベルも弱い。
取り敢えず魔獣の腕とかを切ってみたけど、特に再生することもない。
ルキアさんが魔法を放っても、すんなりと直撃していた。
もう色々と確認する必要もないな。
「ふっ」
「ぎゃあああ」
取り敢えず、魔獣を頭から真っ二つにしてみた。
領主夫人の目の前で。
領主夫人が何か言っていたが、気にしないでおこう。
アルス王子もルキアさんも、順調に魔獣を倒していた。
特に問題なさそうだ。
騎士の人も難なく魔獣を倒していた。
自治組織の腕っぷしがいい人も強かったが、その中でも元騎士団長の奥さんであの大阪のおばちゃん風の人が物凄かった。
「女神様のお慈悲をくらいやがれ!」
おばちゃんは、いつの間にか取り出したゴツいメイスをフルスイングした。
スゲー、一撃で魔獣の頭をメイスでふっとばした。
飛ばされた頭は大きな弧を描き、縛られて床に転がっていた領主夫人の顔の目の前に。
「ぎゃあああ、化物! ぱた」
どうも領主夫人は魔獣の顔とこんにちはをしたらしく、何か叫んだと思ったらパタリと気絶してしまったようだ。
うるさいのがようやく静かになったよ。
「さて、魔物は片付いたな。次は違法奴隷の保護だ」
「今ビアンカ殿下とエステル殿下が対応しています。恐らくメイドにも違法奴隷がいるかと」
アルス王子と話をしていると、小隊も到着したようだ。
「アルス王子、小隊第四班到着しました」
「よし、先ずは飛龍部隊と共に、領主夫人とその子どもに偽領主と人神司祭の身体検査を。その若い男もだ。その後に飛龍での移送準備。ギルド長と国教会司祭は監視し、ギルドと国教会からの人員が着たら引き渡すように」
「分かりました」
アルス王子は周囲にテキパキと指示を出していく。
俺は、今日は大人しくしていよう。
「アルス王子殿下、お久しぶりでございます。元家宰のモルガンでございます。我々もお手伝いいたします」
「モルガンよ久しいな。手伝い感謝する」
モルガンさん達も加わり、領主邸の捜索と違法奴隷の救出が加速しだした。
念の為に、領主夫人とバカ息子を生活魔法できれいにしておく。
いくら任務とはいえ、失禁している人の身体検査なんかやりたくないよね。
魔獣が現れたタイミングで、ミケたちも動いていた。
「あっ、ビアンカお姉ちゃん。街の所々が光っているよ」
「恐らく闇ギルドが動いたのじゃろう。シルにミケよ、街に現れた魔獣退治を頼むぞ」
「ミケちゃん、頑張ってね」
「うん、ミケ頑張るよ!」
「我に任せるが良いぞ」
街に魔獣が現れたと同時に、領主邸内にも魔獣が現れたらしいが、どうもそれは誕生パーティーの会場のみだったらしい。
そのために、ビアンカ殿下は領主邸では無く、街の対応を優先することにした。
「お馬さん、どっちが沢山倒せるか競争だよ」
「「ヒヒーン!」」
ミケはシルに乗って、馬とともに街に向かった。
その後ろ姿を、ビアンカ殿下とエステル殿下が心配そうに見つめていた。
「うーん、妾は少し心配じゃ」
「だよね。ミケちゃんに馬がやりすぎないか」
「うむ、そのとおりじゃ」
不安そうな二人を尻目に、ミケと馬は街に現れた魔獣を蹂躪していった。
街に現れた一部の魔物はリンや従魔によって倒されたが、殆どが競争の名のもとにミケと馬によって倒された。
「ただいま、ビアンカお姉ちゃん」
「「ヒヒーン」」
ミケとシルと馬は、三十分もかからずに領主邸に戻ってきた。
ミケと馬は不満げな顔をしている。
「ミケよ戻ったか。随分と早い帰りじゃのう」
「ミケちゃん、不満そうな顔しているね?」
「だって、相手が弱すぎたんだもん。競争も引き分けだし」
「「ブルル」」
手応えのある敵がいなくて、ミケと馬は不満そうだったが、ビアンカ殿下とエステル殿下は無茶をしないで済んでホッとしていた。
こうして街に現れた魔獣も、無事に討伐が完了したのだった。
とっさに腕で光を直視しないように遮る。
そして黒い光が消えた後、そこにいたのはビルゴと闇の魔道士の姿だった。
しかし何かがおかしい。ビルゴと闇の魔道士に実体感がないというか、気配が薄い気がする。
アルス王子とルキアさんも違和感に気がついていて、警戒をしていた。
「ふう、突然呼ばれたと思ったらこれはこれは領主夫人様。いかがされましたか?」
ビルゴは恭しく領主夫人に挨拶をしていた。
やはり領主夫人とは知り合いだったか。
「ビルゴよ、あの者共を殺せ」
「おや、これはアルス王子とルキアではないですか。ふむ、領主夫人にとって大ピンチのようですね」
「うるさい、さっさと殺れ」
もう、領主夫人は正常な思考ではないようだ。
狂ったように、こちらを殺せって繰り返し言っている。
目が血走って、口から泡を吐きながらだから、人間に見えなくて本当にオークの様に見えるぞ。
ビルゴと領主夫人のやりとりの隙きをついて、ルキアさんがビルゴと闇の魔道士に向かって魔法を放った。
「ふっ」
「やはり、そうか」
「流石はアルス王子、ご明察で」
ルキアさんが放った魔法は、ビルゴと闇の魔道士をすり抜けて背後の壁に当たった。
違和感の正体はこれだったんだ。
実際に召喚されたわけではなく、映像みたいなので見えているだけなんだ。
ビルゴも、この事は直ぐに認めていた。
「実体ではないとはな」
「そちらの攻撃は通じないのさ。こちらもある攻撃以外は何もできないがな」
「ある攻撃?」
ビルゴがニヤリと笑った瞬間に、闇の魔道士が杖をかざした。
辺りに魔法陣が複数展開し、魔獣が複数現れた。
背後でも何か光った様なので、どうも街中でも魔獣が召喚されたらしい。
「さて、我々も暇ではないんでね。領主夫人、後はご自分でよろしく」
「な、私を見捨てる気か」
「それでは。今日はサトーに会えないのが残念だが、アルス王子にルキアよまた会おう」
言うことだけ言って、ビルゴと闇の魔道士はさっさと消えてしまった。
そして呆然と座り込んでいる領主夫人。
つまり闇ギルドは、ブルーノ侯爵を切り捨てたと言うことだ。
そしてビルゴは、アルス王子とルキアさんにまた会おうと言った。
この位は簡単に乗り切れると、闇ギルド側も踏んでいるのだろう。
ちなみに俺は、常にビルゴの視線の範疇にいたはずだ。
うん、全く気づいていなかった。
「殺せ、殺せ殺せ殺せ! ふぐ」
本格的に領主夫人が壊れてきたので、さっさとタラちゃんに拘束してもらった。
ビルゴと闇の魔道士もいない以上、これ以上時間をかける必要もない。
ついでにバカ息子と司会も、ぐるぐる巻きにしておく。
バカ息子は未だに気絶したまんまだよ。
「アルス王子、さっさとコイツらを片付けましょう」
「うお、誰かと思ったらサトーか。声まで女性のものに。以前サトーの女装姿を見ていなければ、全く気づかなかったぞ」
「えーっと、そこまでわかりませんか?」
「一見すると、男性だとはとても思わない」
「あはは、ですよね」
「ルキアさんまで酷い」
アルス王子は、全く俺の事に気がついていなかった。
ルキアさんも、何もフォローしていないぞ。
「もういいです」
「そう落ち込むな」
「せっかくの美人顔が台無しですよ」
「さて、我々も動こう。騎士は来場者の護衛を」
「「「は!」」」
アルス王子が、護衛についてきていた騎士に指示を出し、俺も再度アイテムボックスから刀を取り出して魔獣に相対する。
とはいってもビルゴも闇の魔道士もいないし、事前の準備もなく突然の召喚だったから魔獣のレベルも弱い。
取り敢えず魔獣の腕とかを切ってみたけど、特に再生することもない。
ルキアさんが魔法を放っても、すんなりと直撃していた。
もう色々と確認する必要もないな。
「ふっ」
「ぎゃあああ」
取り敢えず、魔獣を頭から真っ二つにしてみた。
領主夫人の目の前で。
領主夫人が何か言っていたが、気にしないでおこう。
アルス王子もルキアさんも、順調に魔獣を倒していた。
特に問題なさそうだ。
騎士の人も難なく魔獣を倒していた。
自治組織の腕っぷしがいい人も強かったが、その中でも元騎士団長の奥さんであの大阪のおばちゃん風の人が物凄かった。
「女神様のお慈悲をくらいやがれ!」
おばちゃんは、いつの間にか取り出したゴツいメイスをフルスイングした。
スゲー、一撃で魔獣の頭をメイスでふっとばした。
飛ばされた頭は大きな弧を描き、縛られて床に転がっていた領主夫人の顔の目の前に。
「ぎゃあああ、化物! ぱた」
どうも領主夫人は魔獣の顔とこんにちはをしたらしく、何か叫んだと思ったらパタリと気絶してしまったようだ。
うるさいのがようやく静かになったよ。
「さて、魔物は片付いたな。次は違法奴隷の保護だ」
「今ビアンカ殿下とエステル殿下が対応しています。恐らくメイドにも違法奴隷がいるかと」
アルス王子と話をしていると、小隊も到着したようだ。
「アルス王子、小隊第四班到着しました」
「よし、先ずは飛龍部隊と共に、領主夫人とその子どもに偽領主と人神司祭の身体検査を。その若い男もだ。その後に飛龍での移送準備。ギルド長と国教会司祭は監視し、ギルドと国教会からの人員が着たら引き渡すように」
「分かりました」
アルス王子は周囲にテキパキと指示を出していく。
俺は、今日は大人しくしていよう。
「アルス王子殿下、お久しぶりでございます。元家宰のモルガンでございます。我々もお手伝いいたします」
「モルガンよ久しいな。手伝い感謝する」
モルガンさん達も加わり、領主邸の捜索と違法奴隷の救出が加速しだした。
念の為に、領主夫人とバカ息子を生活魔法できれいにしておく。
いくら任務とはいえ、失禁している人の身体検査なんかやりたくないよね。
魔獣が現れたタイミングで、ミケたちも動いていた。
「あっ、ビアンカお姉ちゃん。街の所々が光っているよ」
「恐らく闇ギルドが動いたのじゃろう。シルにミケよ、街に現れた魔獣退治を頼むぞ」
「ミケちゃん、頑張ってね」
「うん、ミケ頑張るよ!」
「我に任せるが良いぞ」
街に魔獣が現れたと同時に、領主邸内にも魔獣が現れたらしいが、どうもそれは誕生パーティーの会場のみだったらしい。
そのために、ビアンカ殿下は領主邸では無く、街の対応を優先することにした。
「お馬さん、どっちが沢山倒せるか競争だよ」
「「ヒヒーン!」」
ミケはシルに乗って、馬とともに街に向かった。
その後ろ姿を、ビアンカ殿下とエステル殿下が心配そうに見つめていた。
「うーん、妾は少し心配じゃ」
「だよね。ミケちゃんに馬がやりすぎないか」
「うむ、そのとおりじゃ」
不安そうな二人を尻目に、ミケと馬は街に現れた魔獣を蹂躪していった。
街に現れた一部の魔物はリンや従魔によって倒されたが、殆どが競争の名のもとにミケと馬によって倒された。
「ただいま、ビアンカお姉ちゃん」
「「ヒヒーン」」
ミケとシルと馬は、三十分もかからずに領主邸に戻ってきた。
ミケと馬は不満げな顔をしている。
「ミケよ戻ったか。随分と早い帰りじゃのう」
「ミケちゃん、不満そうな顔しているね?」
「だって、相手が弱すぎたんだもん。競争も引き分けだし」
「「ブルル」」
手応えのある敵がいなくて、ミケと馬は不満そうだったが、ビアンカ殿下とエステル殿下は無茶をしないで済んでホッとしていた。
こうして街に現れた魔獣も、無事に討伐が完了したのだった。