翌日朝。
 今日は出立ということもあって、先ずはお屋敷のお部屋の荷物まとめ。
 と言ってもアイテムボックスの中に突っ込むだけ。
 ベットとかは生活魔法を使って綺麗にしておく。
 あまり綺麗にしちゃうとメイドさんの仕事がなくなるってルキアさんが言っていたけど、俺的にはお世話になったから綺麗にしていきたい。

「うむ、賑やかな食事もしばらくお預けか」
「そうですわね、何でも美味しいと元気に食べてくれるミケちゃんがいないと、ちょっとさみしいですね」
「……」

 ちょっとしんみりした空気の朝食。
 そうか、このお屋敷での食事も最後か。
 特にサリー様はしょんぼりしている。

「サリーよ、そうしょんぼりするな。サトーの事だ、どうせささっと解決してまた来てくれるのじゃ」
「ビアンカ殿下、本当?」
「おうよ、だからサリーも元気にしておれよ」
「うん」

 ビアンカ殿下も励ましてくれている。
 サリー様はミケと仲良かったからなあ。
 年下の知り合いだから、お姉ちゃんのつもりで接していたのだろう。

「サトー殿、見送りは街の門で行おう。リン殿が冒険者ギルドで待っているとの事なので、一緒に旅の支度をするのが良いでしょう」
「そうですわね、ビアンカ殿下もルキアさんも色々準備が必要でしょうし」
「うむ、そうじゃな。長距離の旅ではないにせよ、必要なものはあるのじゃ」

 ということで、朝食をとりお世話になった執事のグレイさんやメイドさんに挨拶をして、冒険者ギルドに向かいます。

「おやルキアよ。冒険服を新調したのか?」
「はい、サイズ的にもちょっときつかったので……」
「確かに前の服も似合っていたが、サトーには刺激が強そうだったのじゃ」
「あの……、その……」

 ビアンカ殿下、こっちに話を振らないでください。ルキアさんの顔が真っ赤です。
 ルキアさんは青を基調とした魔法服に新調していた。サイズもぴったりでよく似合っている。
 まあ、お胸の素敵な膨らみは隠せていないが。

「ミケも新しい冒険服欲しいなあ」
「じゃあミケ様も後ほど冒険服を見にいきましょうか?」
「うん!」
「妾はこの冒険服で良いが、念の為予備を見繕っておくかのう」

 ミケもビアンカ殿下も冒険服を見繕う様だ。
 うーん、俺は今のままでいいかな?
 
「いいわねー、人間は好きな服を色々着ることが出来てー」
「妖精は違うのか?」
「妖精の服は魔法で出来ているのー。しかもイメージが固定されているから変更出来ないんだー」
「それは残念だな」
「残念だよー」

 俺の肩に座っているリーフに妖精の服の事を聞いてみたら、魔法の服なので変更出来ないらしい
 俺の前でワイワイ服談義をしている女性陣を羨ましそうに見ていた。
 ちなみにホワイトはミケの頭の上、スラタロウはルキアさんの腕の中、タラちゃんとフランソワはシルにくっついて夢の中だ。

「サトーさん、こっちですわ」
「リンさん、お待たせしました」
「いえいえ、こちらも今来たばっかりですわ」
「それは良かった」

 冒険者ギルドの前でリンさん達が待っていた。
 どうやらそんなに待っていなかった様だ。

「リン、まるでデートの様な言葉」
「くすくす。そうですね、貸本でもよくあるセリフです」
「ななな、そんなつもりで言ったわけでは!」
「リンお姉ちゃん、お顔が真っ赤だよ」
「ミケさんも指をささないでくださいまし!」

 マリリさんとオリガさんにツッコまれ、ミケに顔の色を指摘されたリンさんは大慌て。
 あわあわしていて、見ている分にはとっても可愛い。
 しかしながら彼女いない歴イコール年齢な俺には、リンさんにかけてあげる言葉が見つからない。

「お主ら、三文芝居もその辺にしてさっさと中に入るぞ」
「「「……」」」

 ビアンカ殿下は俺たちをバッサリ切り、さっさとギルドの中に入っていく……
 みんな顔を見合わせて、無言でギルドの中に入っていきます。

「お、ミケの嬢ちゃん。昨日は大活躍だったな!」
「リンのねーちゃんも色々やっていたなあ」
「あのスライムの治療を受けてから調子がいいわ」
「巨乳のねーちゃんも治療もなかなかだよ」

 ギルドの中に入ると、色々な冒険者がミケ達に声をかけていた。
 昨日の炊き出しで鍋をもらったり、治療を受けていた人が多いみたいだ。
 屈強な男に頭を撫でられていても、ミケは笑顔だ。
 けれど、ルキアさんの事を巨乳のねーちゃんというのはNGです。

「ビアンカのお姉ちゃん、今日も薬草取りに行くんだ」
「昨日仲間になった子もやる気満々だよ!」

 ビアンカ殿下の周りには、昨日薬草取りに一緒に行った孤児院の子どもが集まっていた。
 人数は昨日の三分の一位。どうも沢山薬草が採れる様になったから、大勢では行かなくなったようだ。

「ふふふ、みなさん大人気ですね」
「そうですね。この街に来てまだ日が浅いけど、みなさんよくしてくれています」
「それだけの事をみなさんやっていらっしゃいますから。昨日の教会の事と難民の対応もすっかり話題になっていますよ」

 俺は受付のお姉さんと談笑していた。
 流石に屈強な男性に囲まれる趣味はない。

「あ、サトー様とリン様たちは、今回冒険者ランクがFランクに上がります」
「お、本当ですか?」
「はい。薬草採取の結果もいいですし、今回の不審者の確保も実績に加算されます。ギルド内の揉め事の対応という事になっています」
「それはありがたいです」
「ギルドマスターはもっと上まで上げたいと言っておられてましたが、規則ということもありますので」
「いえ、一つ一つゆっくりランクを上げていきます。いきなり上のランクに行くと面倒な事に巻き込まれそうですから」
「ふふ、サトー様らしいです。他の方はまだ時間かかりそうですので、先にサトー様のギルドカードの更新を行いますか?」
「そうですね、お願いします」

 色々あったけど、ランクが上がるのは嬉しいなあ。
 ミケ達は色々な人に声をかけられていて、もう少しかかりそうだ。

「はい、更新が完了しました」
「ありがとうご……、何ですかこの金額は!」

 無事ギルドカードの更新も終わった。
 カードの確認をしていたら、ランクは問題ないけど金額がおかしい事になっている。
 薬草取りで結構な金額稼いでいたけど、カードの金額の表示が桁一つ増えている。
 1000万ゴールド以上増えているよ……

「すみません、この金額は?」
「この金額は領主様からのご依頼になります。ゴブリンの集団の討伐に街までの護衛依頼。それに街中でも度々護衛依頼をこなされております。また魔法の家庭教師としての料金も入っております」
「それにしても金額が多いような気がしますよ」
「いえ、これは標準的な金額となります。サトー様はあまり意識されておりませんでしたが、領主様は公爵様ですので。最初はこの金額以上をご提示でしたが、サトー様だと受け取りを辞退されると思い、標準的な金額となりました」

 そうだな、これ以上の金額だと辞退するだろう。
 標準的な金額とはいえ大金だ。後できっちりお礼をしよう。

「分かりました、説明ありがとうございます」
「こちらこそ、昨日も突発的な依頼も受けて頂き、サトー様には感謝しています」
「お役に立てて何よりです。それではミケ達を呼びますね」
「はい、お願いします」
「ミケ、リンさん。ギルドカードの更新があるのでこっちに来てください」
「はーい!」
「今行きますわ」

 こうしてミケとリンさん達も無事にギルドランクの更新が完了。
 ちなみに、ルキアさんのランクは上がっていないが、何気にビアンカ殿下のランクもDに上がっていた。
 そういえば薬草も大量に採取した上に、襲撃者も捕まえていたな。

 無事ギルドカードの更新も終わり、今度は旅の支度。
 先ずは以前ルキアさんと一緒に来たお店へ。
 
「ルキアさん、お世話になったバルガス様にお礼をしたいので、一緒に見てくれませんか?」
「はい、私もお礼をしたいので見繕いましょう」
「ミケもお礼したい!」

 ポーションなどを補充しながら、ルキアさんとミケと一緒にバルガス様へのお礼を見繕っていく。
 うーん、何がいいかな?
 お、これは綺麗な懐中時計だ。これにしよう。
 ミケはペンダントみたいな物を選んでいる。
 ルキアさんは綺麗なネックレスだ。

 リンさん達も買い物が完了した模様。
 これからが勝負。
 ここも前にルキアさんがミケの服を選んだお店。
 普通の服だけでなく冒険服も売っているとの事。
 ルキアさんとミケにビアンカ殿下だけでなく、リンさんもお店の中へ。
 さらにシル以外の魔物もみんなお店へ。
 残されたのは俺とシル。

「主人、まさかこのお店は……」
「シル、何も言うな。男は黙って待つ」

 そうだ、シル。
 これが二回目だけど女性の買い物は長い。
 我慢だ我慢。

 一時間経過。

「うーん、この服がミケさんに似合っているんじゃないかな?」
「えー、この服がミケ様にあってますよ」
「いやいや、妾はこっちの方がいいと思うのじゃ」

 お店の女性陣は、ミケの服を選んでいるようだ。

「主人、暇だぞ……」
「言うな、俺も暇だ!」

 二時間経過…

「うーん、リンもルキアさんもスタイルがいいから羨ましい」
「本当じゃな。妾もいずれはこうなりたいものじゃ」
「ルキアお姉ちゃんもリンお姉ちゃんもお胸大きいよね」
「ミケ様、そんなことは……」
「ミケさん、レディはそんなこと言いませんわ」

 今はリンさんとルキアさんか。
 二人ともスタイルいいからなあ……
 男のロマンが詰まっているかならあ……

「主人、飽きたぞ……」
「俺だってとっくに飽きている」

 そして……

「お兄ちゃんお待たせ……、大丈夫?」

 大丈夫だよー。
 待ちすぎて燃え尽きているだけだから……
 シルも燃え尽きているよ。

「じゃあお兄ちゃんお金払ってね!」

 ミケは眩しい笑顔だ。
 うん、わかっているよ……。黙って男が払うよ……