「はー、これはまた凄い出来だね。さっきの治療も見たけど、本当にスライムなのか信じられないよー」
スラタロウが作った台所やテーブルの周りを、リーフがふわふわ浮かびながらため息をついている。
目の前に妖精がいるという非日常がそこにあるのに、それ以上の衝撃だったので誰も何も言わない。
でもこれで難民の人の生活も、当面の間はどうにかなりそうだ。
「ごほん、さて難民の方々よ。故郷を離れる苦労は大変だったと思う。先ずは体を休めるがよい。この先の方針については追って周知する」
ここは王族であるアルス王子が難民に向けて大丈夫だと話していた。
難民の人はそれぞれの寝床になるテントを決めて入っていく。
テントはともかく、他は立派な施設が出来た。
この人たちをどうするかは、まだまだ先の話になるだろう。
「さて、後は定期的に騎士に巡回させるとして、魔物よけの堀や塀はどうするかな……」
アルス王子がポツリとつぶやいたのを聞き逃さないスライムが一匹。
ボコンボコンボコン……
難民キャンプを囲むように、あっという間に堀と塀が完成。
「うん、仕事が早い様で……」
今回ばかりはスラタロウの早技に苦笑しているアルス王子だった。
業務の引き継ぎを終えたアルス王子と共に、お屋敷に到着。
一足先に帰っていたバルガス様も交えての夕食です。
「サトー殿。今日は本当にありがとう。我々だけでは流石にどうする事もできなかった」
「そうね、ミケちゃんにスラタロウにも助けられたわ。それにサリーの成長も見れたのもよかったわ」
「「えへへ」」
バルガス夫妻から労いの言葉を頂いた。
確かに今回のはイレギュラーケースだから、俺たちも一杯一杯だった。
ちなみにマリー様に褒められたミケとサリー様は、一緒に照れている様。
「サトーよ、闇のギルドの問題もあるがそれよりも急ぎで対応しないといけない事態が発生した」
「アルス王子、何か問題でも?」
「実は今回の難民騒ぎが起きているのは、ここバルガス領だけでない事がわかった。ブルーノ侯爵領とランドルフ伯爵領に接した各領地で起きている」
「という事は、もうブルーノ侯爵領とランドルフ伯爵領は危険な状態に?」
「恐らくな。そして今、各地で難民キャンプが出来始めている。国としても急いで支援をしているが、実は間に合わさそうな所がある。リン嬢のところのバスク子爵領だ」
「え? リンさんのところですか?」
「そうだ、子爵領は残念な事にブルーノ侯爵領とランドルフ伯爵領の両方に接している。難民の流入量も多い。今は何とか持っているが、その内持たなくなるのは目に見えている」
「アルス王子。もしかして俺たちに?」
「ああ、今日の働きを見て十分だと感じた。それにブルーノ侯爵領とランドルフ伯爵領の両方に接しているので、これから両方の領地の対応をするのにもバスク子爵領は要となる。絶対に混乱はさせてはならない」
「確かに重要な地点ですね。今は死守しないといけません」
「既にリン嬢には情報を伝えてある。できれば明日にも一緒に出立してほしい」
「分かりました、準備します」
「悪いな、色々押し付けてしまって」
うーん、これは一大事だな。
難民の支援が冒険者の仕事といえば微妙だけど、この問題を放置するわけにはいかない。
「サトーよ、妾とルキアも一緒にいくぞ。お兄様はまだ軍勢を動かせる状況ではない。ならば身軽さが命の冒険者の出番というわけじゃ」
「ビアンカ殿下も同行されるのですか?」
「うむ、実は今回子爵領に行くのは何も難民支援だけではないのじゃ」
「と申しますと?」
「今回バルガス領に入った難民は全て問題なかったが、バスク領の難民はそうとは限らない。それにあまりにも難民が発生するタイミングが良すぎるのじゃ。さらに、ブルーノ侯爵家よりもランドルフ伯爵家からの難民の数が少ない。これもおかしい事じゃ」
「確かに……。こちらの襲撃を防いで僅かの日数しか経っておりませんね」
今回の難民騒動を隠れ蓑にして、闇ギルドが何かを仕出かす可能性もあるのか。
うーん、これを片付けないと平穏無事な冒険者生活が送れないぞ。
「サトーよ、もう一つ頼みがある。今回の襲撃の件で容疑者への尋問及びルキア嬢への聞き取りの結果、どうもブルーノ侯爵は正常な精神状態ではない上に、嫡男とされている側室の子どももブルーノ侯爵の子どもではない可能性が高いのだ」
「はあー? 何ですかそれは!」
「サトーもびっくりするのも仕方ないが恐らく事実だ。詳細はまだ確認中だが間違いない」
「と言うことは、伯爵家による侯爵家の乗っ取りが……」
「そうなる。そこでサトーには各領からの難民から出来るだけ情報を集めてきてくれ。どんな些細な事でも良い」
思わず王子に向かって叫んでしまった。
それ位のインパクトはあった。
これからの調査状況次第では、伯爵家の方が怪しい事になるぞ。
でもこれも危険な依頼だ。みんなに意思を確認しよう。
「ミケ、明日からだけど……」
「ミケ頑張るよ! リンお姉ちゃんを助けんだよ!」
うん、ミケはそういうと思った。
「主人よ、今回の騒動で恐らく闇ギルドに主人の名前と顔が知られた可能性があるぞ。ならば闇ギルドをどうにかしないいけないのは必然だぞ」
うわー、シルさんとっても貴重なアドバイスありがとう。
確かに今回の襲撃を潰したから、闇ギルドに俺が指名手配されている可能性がある。
「リーフはどうする?」
「出会ってまだ数時間だけど、こんなに面白い事は今までなかったよ。もちろん一緒にいくわ」
うーん、遊びに行くわけではないんだけどね。
スラタロウとホワイトとタラちゃんは、既に集まって作戦会議みたいなものをしているよ。
「アルス王子、ビアンカ殿下。今回の依頼お受けいたします」
「そうか、ありがとう。私からは最大限の支援を約束しよう」
「うむ、まあサトーなら問題ないじゃろう」
最初にこの世界に来た時に思ったよりも大事に巻き込まれている。
早く片付けてゆっくり冒険者稼業したいなあ……
スラタロウが作った台所やテーブルの周りを、リーフがふわふわ浮かびながらため息をついている。
目の前に妖精がいるという非日常がそこにあるのに、それ以上の衝撃だったので誰も何も言わない。
でもこれで難民の人の生活も、当面の間はどうにかなりそうだ。
「ごほん、さて難民の方々よ。故郷を離れる苦労は大変だったと思う。先ずは体を休めるがよい。この先の方針については追って周知する」
ここは王族であるアルス王子が難民に向けて大丈夫だと話していた。
難民の人はそれぞれの寝床になるテントを決めて入っていく。
テントはともかく、他は立派な施設が出来た。
この人たちをどうするかは、まだまだ先の話になるだろう。
「さて、後は定期的に騎士に巡回させるとして、魔物よけの堀や塀はどうするかな……」
アルス王子がポツリとつぶやいたのを聞き逃さないスライムが一匹。
ボコンボコンボコン……
難民キャンプを囲むように、あっという間に堀と塀が完成。
「うん、仕事が早い様で……」
今回ばかりはスラタロウの早技に苦笑しているアルス王子だった。
業務の引き継ぎを終えたアルス王子と共に、お屋敷に到着。
一足先に帰っていたバルガス様も交えての夕食です。
「サトー殿。今日は本当にありがとう。我々だけでは流石にどうする事もできなかった」
「そうね、ミケちゃんにスラタロウにも助けられたわ。それにサリーの成長も見れたのもよかったわ」
「「えへへ」」
バルガス夫妻から労いの言葉を頂いた。
確かに今回のはイレギュラーケースだから、俺たちも一杯一杯だった。
ちなみにマリー様に褒められたミケとサリー様は、一緒に照れている様。
「サトーよ、闇のギルドの問題もあるがそれよりも急ぎで対応しないといけない事態が発生した」
「アルス王子、何か問題でも?」
「実は今回の難民騒ぎが起きているのは、ここバルガス領だけでない事がわかった。ブルーノ侯爵領とランドルフ伯爵領に接した各領地で起きている」
「という事は、もうブルーノ侯爵領とランドルフ伯爵領は危険な状態に?」
「恐らくな。そして今、各地で難民キャンプが出来始めている。国としても急いで支援をしているが、実は間に合わさそうな所がある。リン嬢のところのバスク子爵領だ」
「え? リンさんのところですか?」
「そうだ、子爵領は残念な事にブルーノ侯爵領とランドルフ伯爵領の両方に接している。難民の流入量も多い。今は何とか持っているが、その内持たなくなるのは目に見えている」
「アルス王子。もしかして俺たちに?」
「ああ、今日の働きを見て十分だと感じた。それにブルーノ侯爵領とランドルフ伯爵領の両方に接しているので、これから両方の領地の対応をするのにもバスク子爵領は要となる。絶対に混乱はさせてはならない」
「確かに重要な地点ですね。今は死守しないといけません」
「既にリン嬢には情報を伝えてある。できれば明日にも一緒に出立してほしい」
「分かりました、準備します」
「悪いな、色々押し付けてしまって」
うーん、これは一大事だな。
難民の支援が冒険者の仕事といえば微妙だけど、この問題を放置するわけにはいかない。
「サトーよ、妾とルキアも一緒にいくぞ。お兄様はまだ軍勢を動かせる状況ではない。ならば身軽さが命の冒険者の出番というわけじゃ」
「ビアンカ殿下も同行されるのですか?」
「うむ、実は今回子爵領に行くのは何も難民支援だけではないのじゃ」
「と申しますと?」
「今回バルガス領に入った難民は全て問題なかったが、バスク領の難民はそうとは限らない。それにあまりにも難民が発生するタイミングが良すぎるのじゃ。さらに、ブルーノ侯爵家よりもランドルフ伯爵家からの難民の数が少ない。これもおかしい事じゃ」
「確かに……。こちらの襲撃を防いで僅かの日数しか経っておりませんね」
今回の難民騒動を隠れ蓑にして、闇ギルドが何かを仕出かす可能性もあるのか。
うーん、これを片付けないと平穏無事な冒険者生活が送れないぞ。
「サトーよ、もう一つ頼みがある。今回の襲撃の件で容疑者への尋問及びルキア嬢への聞き取りの結果、どうもブルーノ侯爵は正常な精神状態ではない上に、嫡男とされている側室の子どももブルーノ侯爵の子どもではない可能性が高いのだ」
「はあー? 何ですかそれは!」
「サトーもびっくりするのも仕方ないが恐らく事実だ。詳細はまだ確認中だが間違いない」
「と言うことは、伯爵家による侯爵家の乗っ取りが……」
「そうなる。そこでサトーには各領からの難民から出来るだけ情報を集めてきてくれ。どんな些細な事でも良い」
思わず王子に向かって叫んでしまった。
それ位のインパクトはあった。
これからの調査状況次第では、伯爵家の方が怪しい事になるぞ。
でもこれも危険な依頼だ。みんなに意思を確認しよう。
「ミケ、明日からだけど……」
「ミケ頑張るよ! リンお姉ちゃんを助けんだよ!」
うん、ミケはそういうと思った。
「主人よ、今回の騒動で恐らく闇ギルドに主人の名前と顔が知られた可能性があるぞ。ならば闇ギルドをどうにかしないいけないのは必然だぞ」
うわー、シルさんとっても貴重なアドバイスありがとう。
確かに今回の襲撃を潰したから、闇ギルドに俺が指名手配されている可能性がある。
「リーフはどうする?」
「出会ってまだ数時間だけど、こんなに面白い事は今までなかったよ。もちろん一緒にいくわ」
うーん、遊びに行くわけではないんだけどね。
スラタロウとホワイトとタラちゃんは、既に集まって作戦会議みたいなものをしているよ。
「アルス王子、ビアンカ殿下。今回の依頼お受けいたします」
「そうか、ありがとう。私からは最大限の支援を約束しよう」
「うむ、まあサトーなら問題ないじゃろう」
最初にこの世界に来た時に思ったよりも大事に巻き込まれている。
早く片付けてゆっくり冒険者稼業したいなあ……