そういえば、ギルド内から逃げ出した二人はどうするのだろう。
「マリシャさん、ギルド内から逃げ出した二人の男はどうするんですか?」
「現在ギルドから諜報も出来る冒険者を出して探しています。少し時間が経っているので離れた所にいる可能性も……、ちょうどいいタイミングですね」
マリシャさんの持っていたペンダント型の魔道具が何やら光出した。
もしかして通信に使う魔道具かな?
「冒険者から連絡だと、どうも街の外の森に逃げ込んだみたいですね。あそこはランクの低い冒険者も多く訪れるので早めに対処しないと。あなた?」
「おう、直ぐに向かう。サトーも一緒にこい」
「俺もですか? 俺もまだ低ランクですよ?」
「もうその言い訳は通用しないぞ。リンの嬢ちゃん達は念の為にバルガス様とビアンカ殿下の護衛についてくれ」
「分かりましたわ」
「よし、行くぞ!」
ガンドフさんが役割分担を強引に決めて、俺も一緒に森に行く事になった。
リンさんはバルガス様とビアンカ殿下の護衛に。
騎士さんも一人怪我しているし、ここは万全の状態でお屋敷まで送らないと。
「サトーよ、妾達の事は心配するな。それよりも取り逃した奴らの事を頼むのじゃ」
「サトーさん、こちらの事は気にせずに。無事に送り届けますわ」
ビアンカ殿下とリンさんまで言われてしまったので、腹を括って森に行く事に。
ガンドフさんと一緒に、冒険者ギルドを出て急いで森に向かう。
街の門も、ガンドフさんが急ぎという事で言うとすんなり通してくれた。
ギルドの副マスターって肩書きは、こういう時に役に立つんだな。
「今日は薬草取りの冒険者も多いんだよ。この間サトーが一杯取ってきたのもあってな。念の為にこの森にどの位冒険者が入っているかを調べさせているが、危ない事になっていない事を祈るばかりだ」
えー、あの沢山取った薬草がそんなに影響あったなんで。
ますます俺も頑張らないと行けないや。
森に到着したが、この前と違いなんだか騒がしい気配がする。
「ガンドフさん、何やら森が騒がしい気がします」
「この気配が感じる事が出来れば一流だぞ。森の中で何か起きてやがる」
残念な事に、ガンドフさんと意見が一致してしまったようだ。
と、そんな事を思っていたら、森の中からこちらに駆け出してくる集団がいた。
あれは確か……
「うわー! 早く逃げろ!」
「おーい、ガイくーん!」
「あ、サトーさんだ。助かった」
明らかにホッとした表情のガイくんたちがこちらに向かって走ってきた。
「何があったの?」
「俺たち今日は薬草取りに行っていたんだ。初心者講習で先生だったビルゴさんも一緒についてくれて。そうしたら森の奥に二人の男が走っていって、しばらくしたら森の奥から大きな熊が襲ってきたんだ」
「やっぱりあいつら何かやらかしたんだ」
「今、ビルゴさんが食い止めているけど、他にも自分達みたいに薬草取りにきている人がいてその人が怪我しているんだ」
不幸中の幸かビルゴさん達がいたんだ。でも怪我人を庇ってだといくらビルゴさんでも危ないぞ。
「よし、これから俺たちも森の中に向かう。お前達は逃げてきた他の冒険者を一箇所にまとめておけ。もうすぐ応援のギルド職員がくる」
「ひいい……」
「おっと、ガイくん。この人はギルドの副ギルドマスターのガンドフさんだ。安心してくれ」
「は、はい……」
ガイくんは突然話しかけてきた副ギルドマスターにびっくりしていたみたいだ。
そりゃいきなり二メートルを超える大男が声をかけてきたらたまったもんじゃないよね。
「急いで行くぞ!」
「分かりました」
「サトーさん、気をつけて!」
ガイくん達に見送られながら、急いで森の中に入っていく。
森の中に入ってしばらくすると、大きな音が聞こえてきた。
これは熊の叫び声か?
程なくして、熊と戦っているビルゴさんに遭遇した。
熊といっても体長三メートルくらいの大きな熊だ。
ビルゴさんともう一人がなんとか熊を抑えていて、残りの人が怪我した人を背にしている。
男の子二人と女の子一人の五歳位の子ども三人の様で、女の子が足に怪我している。
「ビルゴさん、助太刀します!」
「お、ガンドフさんとサトーか。助かる!」
「サトー。一旦子どもを少し離しした所に避難させろ!」
「ガンドフさん、分かりました」
怪我した女の子を抱き上げ、子ども達を急いで少し離れた木の影に避難させる。
男の子は小さいながらも女の子を守る様だ。
急いでガンドフさんとビルゴさんの元に戻る。
「はぁ!」
戦いに専念できる様になって、ビルゴさんたちの連携も良くなったみたい。
だけどビルゴさんの大剣も弾かれてしまう。
着地の隙をついて熊がビルゴさんに襲いかかったので、斬り込んで牽制をした。
「助かった、サトー」
「いえ、でも熊ってあんなに強かったでしたっけ?」
「普通ならさっきの一撃で終わっている。熊の首を見ろ」
「何か輪っかみたいなのがついていますね」
「あれは隷属の魔道具だ。あれで熊の実力以上の力を出しているんだろう。間違いなく男どもの仕業だ」
「そういえば、その男どもは?」
「どうも熊にやられた可能性がある。熊が現れる前に男の悲鳴が聞こえた」
「じゃああの熊は制御不可能に?」
「多分その可能性が高いぞ」
ちょっと疑問に思ったことをビルゴさんに聞いたが、なんだか最悪な答えが返ってきた。
暴走している上に攻撃も通らないなんて、絶対に街に出しちゃだめだ。
「二人とも下がれ!」
ガンドフさんが何やら準備をしていたのが出来たみたいで、俺とビルゴさんは急いで熊から離れた。
「グァァァアア!」
その瞬間、熊の足元から無数のツルが発生し熊の動きを止める。
熊はもがくが無数に出てくるツルに対処できず、ついには転倒した。
「すご……」
「初見は誰でも驚くもんだ。ああ見えてガンドフさんは後方支援のスペシャリストで魔法使いであり魔道具使いなんだ」
「えー! 肉体派ではないんですか?」
「ある程度は武器も使えるぞ。だがそれ以上に後方支援の技術が優れている。それにパートナーがあの人だからなあ」
「マリシャさんですね。あの人ほどすごい前衛はなかなかお目にかかれないですし、そう言われると納得です」
まさに人は見かけによらないというのを体現している様だ。
「よし、完全に動きを封じ込めたぞ。お前ら、首の輪っかを壊せ!」
「「はい!」」
ガンドフさんの合図で俺とビルゴさんが熊に切り掛かる。
「はぁ!」
最初の俺の一撃で、魔道具の輪っかにヒビが入った様だ。
「サトーよくやった。これで終わりだ!」
そこにビルゴさんが一撃を入れ、熊の首にあった魔道具の輪っかが壊れた。
「グアー!」
その瞬間、熊は魔道具で無理やり出されていた力を失い、ガンドフさんの拘束魔法に耐えきれずに圧死した様だ。
元の力を考えると、どれだけの力を無理やり引き出されたんだろう。恐ろしい魔道具だ。
「サトーよ、アイテムボックスに熊と魔道具を回収しろ。重要な証拠だ」
「はい!」
ビルゴさんに言われて熊と魔道具を回収する。
流石の俺でもわかるレベルで、この魔道具はヤバすぎる。
「さて、ビルゴとサトーは俺について来い。男どもを捕まえるぞ。残りの二人は子どもを森の外に避難させろ」
「「「「了解!」」」」
ここからは役割分担。ビルゴさんの仲間の人が子どもを避難させ、俺はガンドフさんとビルゴさんと一緒に男どもを捕まえにいく。
ここまでやるなんて、襲撃の件も含めて正直腹が立っていった。
「うぅ……」
「がはっ……」
熊を倒した所から少し奥にいくと、あの男どもが倒れていた。
熊を上手くコントロール出来なかったのだろう、一人は左腕の肘から先を食いちぎられ、もう一人は右足の太ももから先を失っていた。
出血量が多いが、幸にして発見が早かったのでまだ息はあった。
「お前らに今死んでもらっては困るからな。死ぬならちゃんと罪がはっきりしてからだ!」
そういうと、ガンドフさんは二人に回復魔法をかけて傷口を塞いだ。
二人は出血量もあるので、傷が塞がっても動けない様だ。
そんな二人をヒョイと軽く担ぎ上げるのもガンドフさんだ。
しかしながら、本当にこのおっさんは優秀な後方支援役だな……
「あ、副ギルドマスター。それにビルゴ様もサトー様もお帰りなさい」
ビルゴさんが前、俺が後ろを護衛しながらガンドフさんが男ども担いで連行する。
そして森を抜けると、怪我人をしているギルドの職人に混じって、冒険者の人数を確認している受付のお姉さんがいた。
こっちに気がついて声をかけてくれた。
「副ギルドマスター、森に入った冒険者は全て確認済です。怪我をしたのもあの女の子の他に数名で、みんな軽傷です」
「報告ご苦労。おい、こいつらも尋問した後に牢に入れておけ」
「「はい!」」
ガンドフさんが数人の男のギルド職員に、拘束した男どもを運ばせている。
どうやらリアカーみたいな物で護送するようだ。
そしてあの小さな子ども達はっと……、いた。
あらら、森から出て気が抜けてしまったのか男の子二人が大泣きしている。
そんな男の子達の頭を、怪我した女の子が苦笑しながらなでなでしている。
怪我もちゃんと手当てしてあるし、そばにガイくんたちもいて見守っているから大丈夫そうだな。
一足先に男どもを乗せたリアカーを引きながらギルド職員がギルドに向かっていく。
念の為ビルゴさんが護衛に着く。
この状況じゃあ、口封じなんて事もあり得そうだし。
その他の冒険者と一緒に街に戻ります。
ちなみにあの男の子たちは泣き疲れてしまったのか寝てしまい、ガイくん達に背負われています。
女の子の方は元気に歩いています。怪我の影響も心配なさそうだ。
街につき冒険者達はギルドの中に入っていき、ガンドフさんと一緒に解体スペースへ。
そこにはマリシャさんとビルゴさん達もいた。
アイテムボックスに入れた熊と魔道具を取り出すと、マリシャさんの顔が歪んだ。
「隷属の魔道具……。詳細確認の必要もなく闇の魔道具だ。魔物を無理やり支配下に置き能力以上の力を引き出すことが出来るが、コントロール出来るかは魔道具をつけた人次第。恐らくやつらの実力不足でコントロールできなかったのだろう」
「ええ、私もその意見に同感だわ。以前に同じ現場に遭遇した事があるから。この熊も何もなければ森の奥でのんびりしていたはずだし、馬鹿な男どもの被害者だわ」
あの暴れっぷりからしてやばい魔道具であることは一目瞭然だし、被害にあったこの熊も可哀想だな。
「恐らくもう動かれているかと思うけど、今回の次第を書き留めて、バルガス様に急ぎ街の警備の強化を依頼するわ。無益な殺生から街の人も冒険者も守らないと」
「手紙はサトーに託そう。悪いがビルゴたちが護衛についてくれ」
「わかった。サトーはこの事件の中心人物だし、相手も何かする可能性はありそうだな」
マリシャさんが急ぎ手紙を書いてくれるので、無事にバルガス様とビアンカ殿下の所に持っていかないと。
色々大詰めになってきたぞ。
「マリシャさん、ギルド内から逃げ出した二人の男はどうするんですか?」
「現在ギルドから諜報も出来る冒険者を出して探しています。少し時間が経っているので離れた所にいる可能性も……、ちょうどいいタイミングですね」
マリシャさんの持っていたペンダント型の魔道具が何やら光出した。
もしかして通信に使う魔道具かな?
「冒険者から連絡だと、どうも街の外の森に逃げ込んだみたいですね。あそこはランクの低い冒険者も多く訪れるので早めに対処しないと。あなた?」
「おう、直ぐに向かう。サトーも一緒にこい」
「俺もですか? 俺もまだ低ランクですよ?」
「もうその言い訳は通用しないぞ。リンの嬢ちゃん達は念の為にバルガス様とビアンカ殿下の護衛についてくれ」
「分かりましたわ」
「よし、行くぞ!」
ガンドフさんが役割分担を強引に決めて、俺も一緒に森に行く事になった。
リンさんはバルガス様とビアンカ殿下の護衛に。
騎士さんも一人怪我しているし、ここは万全の状態でお屋敷まで送らないと。
「サトーよ、妾達の事は心配するな。それよりも取り逃した奴らの事を頼むのじゃ」
「サトーさん、こちらの事は気にせずに。無事に送り届けますわ」
ビアンカ殿下とリンさんまで言われてしまったので、腹を括って森に行く事に。
ガンドフさんと一緒に、冒険者ギルドを出て急いで森に向かう。
街の門も、ガンドフさんが急ぎという事で言うとすんなり通してくれた。
ギルドの副マスターって肩書きは、こういう時に役に立つんだな。
「今日は薬草取りの冒険者も多いんだよ。この間サトーが一杯取ってきたのもあってな。念の為にこの森にどの位冒険者が入っているかを調べさせているが、危ない事になっていない事を祈るばかりだ」
えー、あの沢山取った薬草がそんなに影響あったなんで。
ますます俺も頑張らないと行けないや。
森に到着したが、この前と違いなんだか騒がしい気配がする。
「ガンドフさん、何やら森が騒がしい気がします」
「この気配が感じる事が出来れば一流だぞ。森の中で何か起きてやがる」
残念な事に、ガンドフさんと意見が一致してしまったようだ。
と、そんな事を思っていたら、森の中からこちらに駆け出してくる集団がいた。
あれは確か……
「うわー! 早く逃げろ!」
「おーい、ガイくーん!」
「あ、サトーさんだ。助かった」
明らかにホッとした表情のガイくんたちがこちらに向かって走ってきた。
「何があったの?」
「俺たち今日は薬草取りに行っていたんだ。初心者講習で先生だったビルゴさんも一緒についてくれて。そうしたら森の奥に二人の男が走っていって、しばらくしたら森の奥から大きな熊が襲ってきたんだ」
「やっぱりあいつら何かやらかしたんだ」
「今、ビルゴさんが食い止めているけど、他にも自分達みたいに薬草取りにきている人がいてその人が怪我しているんだ」
不幸中の幸かビルゴさん達がいたんだ。でも怪我人を庇ってだといくらビルゴさんでも危ないぞ。
「よし、これから俺たちも森の中に向かう。お前達は逃げてきた他の冒険者を一箇所にまとめておけ。もうすぐ応援のギルド職員がくる」
「ひいい……」
「おっと、ガイくん。この人はギルドの副ギルドマスターのガンドフさんだ。安心してくれ」
「は、はい……」
ガイくんは突然話しかけてきた副ギルドマスターにびっくりしていたみたいだ。
そりゃいきなり二メートルを超える大男が声をかけてきたらたまったもんじゃないよね。
「急いで行くぞ!」
「分かりました」
「サトーさん、気をつけて!」
ガイくん達に見送られながら、急いで森の中に入っていく。
森の中に入ってしばらくすると、大きな音が聞こえてきた。
これは熊の叫び声か?
程なくして、熊と戦っているビルゴさんに遭遇した。
熊といっても体長三メートルくらいの大きな熊だ。
ビルゴさんともう一人がなんとか熊を抑えていて、残りの人が怪我した人を背にしている。
男の子二人と女の子一人の五歳位の子ども三人の様で、女の子が足に怪我している。
「ビルゴさん、助太刀します!」
「お、ガンドフさんとサトーか。助かる!」
「サトー。一旦子どもを少し離しした所に避難させろ!」
「ガンドフさん、分かりました」
怪我した女の子を抱き上げ、子ども達を急いで少し離れた木の影に避難させる。
男の子は小さいながらも女の子を守る様だ。
急いでガンドフさんとビルゴさんの元に戻る。
「はぁ!」
戦いに専念できる様になって、ビルゴさんたちの連携も良くなったみたい。
だけどビルゴさんの大剣も弾かれてしまう。
着地の隙をついて熊がビルゴさんに襲いかかったので、斬り込んで牽制をした。
「助かった、サトー」
「いえ、でも熊ってあんなに強かったでしたっけ?」
「普通ならさっきの一撃で終わっている。熊の首を見ろ」
「何か輪っかみたいなのがついていますね」
「あれは隷属の魔道具だ。あれで熊の実力以上の力を出しているんだろう。間違いなく男どもの仕業だ」
「そういえば、その男どもは?」
「どうも熊にやられた可能性がある。熊が現れる前に男の悲鳴が聞こえた」
「じゃああの熊は制御不可能に?」
「多分その可能性が高いぞ」
ちょっと疑問に思ったことをビルゴさんに聞いたが、なんだか最悪な答えが返ってきた。
暴走している上に攻撃も通らないなんて、絶対に街に出しちゃだめだ。
「二人とも下がれ!」
ガンドフさんが何やら準備をしていたのが出来たみたいで、俺とビルゴさんは急いで熊から離れた。
「グァァァアア!」
その瞬間、熊の足元から無数のツルが発生し熊の動きを止める。
熊はもがくが無数に出てくるツルに対処できず、ついには転倒した。
「すご……」
「初見は誰でも驚くもんだ。ああ見えてガンドフさんは後方支援のスペシャリストで魔法使いであり魔道具使いなんだ」
「えー! 肉体派ではないんですか?」
「ある程度は武器も使えるぞ。だがそれ以上に後方支援の技術が優れている。それにパートナーがあの人だからなあ」
「マリシャさんですね。あの人ほどすごい前衛はなかなかお目にかかれないですし、そう言われると納得です」
まさに人は見かけによらないというのを体現している様だ。
「よし、完全に動きを封じ込めたぞ。お前ら、首の輪っかを壊せ!」
「「はい!」」
ガンドフさんの合図で俺とビルゴさんが熊に切り掛かる。
「はぁ!」
最初の俺の一撃で、魔道具の輪っかにヒビが入った様だ。
「サトーよくやった。これで終わりだ!」
そこにビルゴさんが一撃を入れ、熊の首にあった魔道具の輪っかが壊れた。
「グアー!」
その瞬間、熊は魔道具で無理やり出されていた力を失い、ガンドフさんの拘束魔法に耐えきれずに圧死した様だ。
元の力を考えると、どれだけの力を無理やり引き出されたんだろう。恐ろしい魔道具だ。
「サトーよ、アイテムボックスに熊と魔道具を回収しろ。重要な証拠だ」
「はい!」
ビルゴさんに言われて熊と魔道具を回収する。
流石の俺でもわかるレベルで、この魔道具はヤバすぎる。
「さて、ビルゴとサトーは俺について来い。男どもを捕まえるぞ。残りの二人は子どもを森の外に避難させろ」
「「「「了解!」」」」
ここからは役割分担。ビルゴさんの仲間の人が子どもを避難させ、俺はガンドフさんとビルゴさんと一緒に男どもを捕まえにいく。
ここまでやるなんて、襲撃の件も含めて正直腹が立っていった。
「うぅ……」
「がはっ……」
熊を倒した所から少し奥にいくと、あの男どもが倒れていた。
熊を上手くコントロール出来なかったのだろう、一人は左腕の肘から先を食いちぎられ、もう一人は右足の太ももから先を失っていた。
出血量が多いが、幸にして発見が早かったのでまだ息はあった。
「お前らに今死んでもらっては困るからな。死ぬならちゃんと罪がはっきりしてからだ!」
そういうと、ガンドフさんは二人に回復魔法をかけて傷口を塞いだ。
二人は出血量もあるので、傷が塞がっても動けない様だ。
そんな二人をヒョイと軽く担ぎ上げるのもガンドフさんだ。
しかしながら、本当にこのおっさんは優秀な後方支援役だな……
「あ、副ギルドマスター。それにビルゴ様もサトー様もお帰りなさい」
ビルゴさんが前、俺が後ろを護衛しながらガンドフさんが男ども担いで連行する。
そして森を抜けると、怪我人をしているギルドの職人に混じって、冒険者の人数を確認している受付のお姉さんがいた。
こっちに気がついて声をかけてくれた。
「副ギルドマスター、森に入った冒険者は全て確認済です。怪我をしたのもあの女の子の他に数名で、みんな軽傷です」
「報告ご苦労。おい、こいつらも尋問した後に牢に入れておけ」
「「はい!」」
ガンドフさんが数人の男のギルド職員に、拘束した男どもを運ばせている。
どうやらリアカーみたいな物で護送するようだ。
そしてあの小さな子ども達はっと……、いた。
あらら、森から出て気が抜けてしまったのか男の子二人が大泣きしている。
そんな男の子達の頭を、怪我した女の子が苦笑しながらなでなでしている。
怪我もちゃんと手当てしてあるし、そばにガイくんたちもいて見守っているから大丈夫そうだな。
一足先に男どもを乗せたリアカーを引きながらギルド職員がギルドに向かっていく。
念の為ビルゴさんが護衛に着く。
この状況じゃあ、口封じなんて事もあり得そうだし。
その他の冒険者と一緒に街に戻ります。
ちなみにあの男の子たちは泣き疲れてしまったのか寝てしまい、ガイくん達に背負われています。
女の子の方は元気に歩いています。怪我の影響も心配なさそうだ。
街につき冒険者達はギルドの中に入っていき、ガンドフさんと一緒に解体スペースへ。
そこにはマリシャさんとビルゴさん達もいた。
アイテムボックスに入れた熊と魔道具を取り出すと、マリシャさんの顔が歪んだ。
「隷属の魔道具……。詳細確認の必要もなく闇の魔道具だ。魔物を無理やり支配下に置き能力以上の力を引き出すことが出来るが、コントロール出来るかは魔道具をつけた人次第。恐らくやつらの実力不足でコントロールできなかったのだろう」
「ええ、私もその意見に同感だわ。以前に同じ現場に遭遇した事があるから。この熊も何もなければ森の奥でのんびりしていたはずだし、馬鹿な男どもの被害者だわ」
あの暴れっぷりからしてやばい魔道具であることは一目瞭然だし、被害にあったこの熊も可哀想だな。
「恐らくもう動かれているかと思うけど、今回の次第を書き留めて、バルガス様に急ぎ街の警備の強化を依頼するわ。無益な殺生から街の人も冒険者も守らないと」
「手紙はサトーに託そう。悪いがビルゴたちが護衛についてくれ」
「わかった。サトーはこの事件の中心人物だし、相手も何かする可能性はありそうだな」
マリシャさんが急ぎ手紙を書いてくれるので、無事にバルガス様とビアンカ殿下の所に持っていかないと。
色々大詰めになってきたぞ。