カツンカツン。
えー、只今バルガスの街の冒険者ギルドの二階に上がる階段を登っております。
俺とミケの冒険者登録で、ゴブリンの件は隊長さんが説明すると思っていました。
それが一緒にギルドマスターに説明する事になりました。
こんこん。
「ギルドマスター、お連れいたしました」
「おう入ってくれや」
二階の奥の部屋の前に着いたところで、職員さんがギルドマスターに俺たちが着いた事を告げたら、中から野太い声が聞こえた。
きっと冒険者ギルドのマスターだから、きっといかつい人のはず……
かちゃ。
ドアが開くと、中には小柄な若い長い髪の女性と、二メートル近くのスキンヘッドの筋肉モリモリの男性がいた。
おお、さすがギルドマスター。いかにも歴戦の冒険者って感じだ。
案内してくれた職員の方がお茶を入れてくれた。
「どうぞお座りください」
女性の方が声をかけ、一同はソファーに座った。
「隊長殿、今回は災難だったな。報告は聞いたが、あんなこと普通は起きはしない」
「全くだ、ガンドフ殿。我々だけの戦力ではとても太刀打ち出来なかった。サトー殿が助っ人に入ってくれなければ全滅も覚悟したほどだ」
「そいつは幸運だったな。そこの兄ちゃんと嬢ちゃんは見かけによらず強いんだな」
「うー、嬢ちゃんじゃないもん。ミケだもん!」
「がっはは! そうか悪いな」
このガンドフと言われる人は豪快な人だな。それに意見を言い返したミケもすごいが。
ガンドフという人がギルドマスターかと思ったら、衝撃の結果が待っていた。
「ほら、あなた。ミケちゃんが困惑していますよ」
「そうですよガンドフ殿。ギルドマスターもお困りですし」
「そいつはいけねえや、悪いな嬢ちゃん」
「だから嬢ちゃんじゃないもん!」
あれ?隊長さんが女性の方をギルドマスターといったぞ。それに女性の方がガンドフさんをあなたといったぞ。
まさかまさか……
「サトー殿、混乱させてすまない。こちらの女性がギルドマスターのマリシャ殿だ。そして男性の方が副ギルドマスターのガンドフ殿だ。ちなみにお二人はご夫婦でもある」
えー!、女性の方がギルドマスターなのか!。しかも夫婦かよ。マジで美女と野獣、下手すれば犯罪者に見えるぞ。
「改めまして、この街の冒険者ギルドマスターのマリシャと言います。旦那が失礼な事をして申し訳ありません」
「副ギルドマスターのガンドフだ。改めてよろしく」
「サトーです。この子はミケで、オオカミがシル、スライムがスラタロウです。しかしご夫婦なのですね、正直驚きました」
「ミケです!」
「サトーさんにミケちゃんね。ミケちゃん、さっきはごめんね」
「大丈夫!」
いや、ギルドマスターがマリシャさんだということよりも、二人が夫婦という事に驚いたよ。
「がはは、みんなそういうから気にする事ないぞ。それにマリシャの方が歳……」
ゴス、どん。
あれ、目の前からガンドフさんが吹っ飛んで、床に転がっているぞ。
「あなた、お客様の前で女性の年齢は喋ってはいけませんよ」
「ヒューヒュー」
「隊長さん、サトーさん。ごめんなさいね。あれはいないものだと思ってもらって結構ですよ」
「「はい……」」
……マリシャさん、笑顔だけど圧力が半端ないぞ。ミケもびっくりしている。
ガンドフさんは、虫の息だけど大丈夫か?
「サトー殿、マリシャ殿は武芸の達人で、『瞬殺拳のマリシャ』と言われた凄腕です」
「何となく理解出来ました……」
隊長さんがこっそり教えてくれたが、でないと巨漢の男性が吹っ飛ばないよね。
マリシャさんには逆らわない様にしないと。
「では、始めましょうか。隊長さん、ゴブリンが襲ってきた時の状況をもう一度説明していただけますか」
「は! 道中は普段と変わらず、順調でした。しかしながら街まで半日という所で、突然上位種を含むゴブリンの集団が襲ってきました。最初は我々だけで撃退していましたが、だんだんと押されてきました。そこをサトー殿が助っ人で入っていただき、何とか撃退出来ました」
「そう、大変でしたね隊長さん。サトーさんも状況を教えてもらえないですか?」
「はい、俺たちも特に道中は問題なかったです。このシルが魔物とかの気配を感じることが出来て、少し先で魔物が大量に検知され血の匂いもしたと。ですので急いで現場に駆けつけました」
「ありがとうサトーさん。うーん、その時だけ急にゴブリンの大群がきたのね。明らかにおかしいですね」
マリシャさんに促されて、隊長さんと俺がゴブリンに襲われた際の状況を話したが、ゴブリンに襲われる前後は特に問題がなかったんですよね。
「マリシャ殿。実はゴブリンに襲われた後、こんな物が馬車の下にくっついてました。事前の点検ではこんなものはくっついていませんでした」
隊長さんが見せてくれたのは、小さな何か焦げたものだった。
確かお屋敷に着いたときに、バルガス様が執事さんに馬車のチェックをするように言っていたけど、何かあったんだ。
そう思ったら、床にのびていたガンドフさんが急に起き上がった。
「この道具は……、隊長殿、しばらく預かっても構わないかな?」
「ええ、どうぞ。バルガス様の許可もあります」
「ありがたい。しばらくこれを解析させていただきたい」
「あなた、何かわかるの?」
「昔、意図的に魔物を呼び寄せる道具があった。これはそれの改良型のようだ。しかし誰が何の目的でこんな物を。こういうのは闇市場にしか出回ってない物だぞ」
おお、ガンドフさんすげー。一気に状況が進んだぞ。
しかしガンドフさんは見た目とは違って、そういうのに詳しいんだ。
「隊長殿、何かわかったらすぐに連絡します。これは出回ってはいけないものだ」
「感謝する。よろしく頼むガンドフ殿」
これでギルドマスターとの話は終わりかな?
そう思っていたら、マリシャさんがミケに話しかけた。
「ミケちゃん、今日は旦那がごめんね。お詫びにこれをあげるね」
「これは?」
「これは私が昔使っていたガントレットよ。私には小さいけどミケちゃんにはピッタリだと思うよ」
「ありがとー!」
マリシャさんはアイテムバック? みたいな物からガントレットを取り出して、ミケにプレゼントしていた。
サイズ的にもミケにピッタリだ。
「マリシャさん、こんな良いものをありがとうございます」
「良いのよ。ちゃんと整備してあるから問題ないし、ものは使ってもらった方がいいですし」
「そうですか。ミケ、大事に使いなね」
「うん!」
ミケもガントレットをもらって大喜びだ。
と、ここでまたガンドフさんがやらかしてしまう。
「お、嬢ちゃんいいのもらったな。でも何十年も前のもの……、ごふ」
「あなた、そんな昔の様なものの言い回しはやめてください。さあみなさん、下に降りましょう。あなたはそこの書類を片付けるように」
「ヒューヒュー」
「「「……」」」
ガンドフさんはまた吹っ飛ばされて、床の上で虫の息。しかも書類整理をやれというおまけ付け。
隊長さんとミケと顔を合わして、改めてマリシャさんには逆らわないようにしようと心に誓ったのであった。
えー、只今バルガスの街の冒険者ギルドの二階に上がる階段を登っております。
俺とミケの冒険者登録で、ゴブリンの件は隊長さんが説明すると思っていました。
それが一緒にギルドマスターに説明する事になりました。
こんこん。
「ギルドマスター、お連れいたしました」
「おう入ってくれや」
二階の奥の部屋の前に着いたところで、職員さんがギルドマスターに俺たちが着いた事を告げたら、中から野太い声が聞こえた。
きっと冒険者ギルドのマスターだから、きっといかつい人のはず……
かちゃ。
ドアが開くと、中には小柄な若い長い髪の女性と、二メートル近くのスキンヘッドの筋肉モリモリの男性がいた。
おお、さすがギルドマスター。いかにも歴戦の冒険者って感じだ。
案内してくれた職員の方がお茶を入れてくれた。
「どうぞお座りください」
女性の方が声をかけ、一同はソファーに座った。
「隊長殿、今回は災難だったな。報告は聞いたが、あんなこと普通は起きはしない」
「全くだ、ガンドフ殿。我々だけの戦力ではとても太刀打ち出来なかった。サトー殿が助っ人に入ってくれなければ全滅も覚悟したほどだ」
「そいつは幸運だったな。そこの兄ちゃんと嬢ちゃんは見かけによらず強いんだな」
「うー、嬢ちゃんじゃないもん。ミケだもん!」
「がっはは! そうか悪いな」
このガンドフと言われる人は豪快な人だな。それに意見を言い返したミケもすごいが。
ガンドフという人がギルドマスターかと思ったら、衝撃の結果が待っていた。
「ほら、あなた。ミケちゃんが困惑していますよ」
「そうですよガンドフ殿。ギルドマスターもお困りですし」
「そいつはいけねえや、悪いな嬢ちゃん」
「だから嬢ちゃんじゃないもん!」
あれ?隊長さんが女性の方をギルドマスターといったぞ。それに女性の方がガンドフさんをあなたといったぞ。
まさかまさか……
「サトー殿、混乱させてすまない。こちらの女性がギルドマスターのマリシャ殿だ。そして男性の方が副ギルドマスターのガンドフ殿だ。ちなみにお二人はご夫婦でもある」
えー!、女性の方がギルドマスターなのか!。しかも夫婦かよ。マジで美女と野獣、下手すれば犯罪者に見えるぞ。
「改めまして、この街の冒険者ギルドマスターのマリシャと言います。旦那が失礼な事をして申し訳ありません」
「副ギルドマスターのガンドフだ。改めてよろしく」
「サトーです。この子はミケで、オオカミがシル、スライムがスラタロウです。しかしご夫婦なのですね、正直驚きました」
「ミケです!」
「サトーさんにミケちゃんね。ミケちゃん、さっきはごめんね」
「大丈夫!」
いや、ギルドマスターがマリシャさんだということよりも、二人が夫婦という事に驚いたよ。
「がはは、みんなそういうから気にする事ないぞ。それにマリシャの方が歳……」
ゴス、どん。
あれ、目の前からガンドフさんが吹っ飛んで、床に転がっているぞ。
「あなた、お客様の前で女性の年齢は喋ってはいけませんよ」
「ヒューヒュー」
「隊長さん、サトーさん。ごめんなさいね。あれはいないものだと思ってもらって結構ですよ」
「「はい……」」
……マリシャさん、笑顔だけど圧力が半端ないぞ。ミケもびっくりしている。
ガンドフさんは、虫の息だけど大丈夫か?
「サトー殿、マリシャ殿は武芸の達人で、『瞬殺拳のマリシャ』と言われた凄腕です」
「何となく理解出来ました……」
隊長さんがこっそり教えてくれたが、でないと巨漢の男性が吹っ飛ばないよね。
マリシャさんには逆らわない様にしないと。
「では、始めましょうか。隊長さん、ゴブリンが襲ってきた時の状況をもう一度説明していただけますか」
「は! 道中は普段と変わらず、順調でした。しかしながら街まで半日という所で、突然上位種を含むゴブリンの集団が襲ってきました。最初は我々だけで撃退していましたが、だんだんと押されてきました。そこをサトー殿が助っ人で入っていただき、何とか撃退出来ました」
「そう、大変でしたね隊長さん。サトーさんも状況を教えてもらえないですか?」
「はい、俺たちも特に道中は問題なかったです。このシルが魔物とかの気配を感じることが出来て、少し先で魔物が大量に検知され血の匂いもしたと。ですので急いで現場に駆けつけました」
「ありがとうサトーさん。うーん、その時だけ急にゴブリンの大群がきたのね。明らかにおかしいですね」
マリシャさんに促されて、隊長さんと俺がゴブリンに襲われた際の状況を話したが、ゴブリンに襲われる前後は特に問題がなかったんですよね。
「マリシャ殿。実はゴブリンに襲われた後、こんな物が馬車の下にくっついてました。事前の点検ではこんなものはくっついていませんでした」
隊長さんが見せてくれたのは、小さな何か焦げたものだった。
確かお屋敷に着いたときに、バルガス様が執事さんに馬車のチェックをするように言っていたけど、何かあったんだ。
そう思ったら、床にのびていたガンドフさんが急に起き上がった。
「この道具は……、隊長殿、しばらく預かっても構わないかな?」
「ええ、どうぞ。バルガス様の許可もあります」
「ありがたい。しばらくこれを解析させていただきたい」
「あなた、何かわかるの?」
「昔、意図的に魔物を呼び寄せる道具があった。これはそれの改良型のようだ。しかし誰が何の目的でこんな物を。こういうのは闇市場にしか出回ってない物だぞ」
おお、ガンドフさんすげー。一気に状況が進んだぞ。
しかしガンドフさんは見た目とは違って、そういうのに詳しいんだ。
「隊長殿、何かわかったらすぐに連絡します。これは出回ってはいけないものだ」
「感謝する。よろしく頼むガンドフ殿」
これでギルドマスターとの話は終わりかな?
そう思っていたら、マリシャさんがミケに話しかけた。
「ミケちゃん、今日は旦那がごめんね。お詫びにこれをあげるね」
「これは?」
「これは私が昔使っていたガントレットよ。私には小さいけどミケちゃんにはピッタリだと思うよ」
「ありがとー!」
マリシャさんはアイテムバック? みたいな物からガントレットを取り出して、ミケにプレゼントしていた。
サイズ的にもミケにピッタリだ。
「マリシャさん、こんな良いものをありがとうございます」
「良いのよ。ちゃんと整備してあるから問題ないし、ものは使ってもらった方がいいですし」
「そうですか。ミケ、大事に使いなね」
「うん!」
ミケもガントレットをもらって大喜びだ。
と、ここでまたガンドフさんがやらかしてしまう。
「お、嬢ちゃんいいのもらったな。でも何十年も前のもの……、ごふ」
「あなた、そんな昔の様なものの言い回しはやめてください。さあみなさん、下に降りましょう。あなたはそこの書類を片付けるように」
「ヒューヒュー」
「「「……」」」
ガンドフさんはまた吹っ飛ばされて、床の上で虫の息。しかも書類整理をやれというおまけ付け。
隊長さんとミケと顔を合わして、改めてマリシャさんには逆らわないようにしようと心に誓ったのであった。