「体調はいかがですか?」
「だいぶ良くなりました。ありがとうございます」
翌朝、フローレンスさんの治療を兼ねてスラタロウ特製のお粥を持ってきた。
顔色は良くなったけど、表情はまだ暗い。
エステルとリンも一緒についてきて心配しているけど、フローレンスさんはだいぶ思いつめているようだ。
と、ここで小さな乱入者が現れた。
「おねーちゃん、お話ししよー!」
「ぼくたちが、いーこいーこしてあげる」
「ハリちゃんも、一緒にお話したいんだって」
マシュー君達もフローレンスさんと会ったことがあるから、体調が悪いのを心配しているようだ。
この子達なりに、フローレンスさんを看病したいらしい。
フローレンスさんは少しクスリと笑って、子ども達とおしゃべりを始めた。
「マシュー君達に感謝ですね」
「そうだね。今は無理した笑顔だけど、とっても楽しそうだよ」
「私達は、このまま子ども達の事もみています」
フローレンスさんはこのままエステルとリンに任せて、俺はビアンカ殿下とレイアとともに王城にワープした。
「すまぬな、色々忙しいところ呼び出して」
「いえいえ、思いっきり当事者ですから」
「フローレンスはどうだ?」
「まだ安静にしていますが、だいぶ良くなりました。子ども達と話せる程度まで回復しています」
「そうか、それは良かった。心の回復は暫くかかるから、ゆっくりとだな」
いつもの控室に行くと、陛下と宰相が待っていた。
直ぐにフローレンスさんの事を聞いてくるあたり、陛下も相当心配していたのだろう。
「さて、話をするか。本来はノースランド公爵の四男とサザンレイク侯爵の三男をゴレス領に派遣する予定が、今回のゴタゴタが収まるまでは捜査に参加することになった」
「操作対象の貴族が多くて、こちらも多くの手が必要ですからね」
「彼らは内政も優秀だが捜査指揮も優秀でな。今は現場指揮にあたってもらっている」
こればっかりはどうしようもない。
現当主が優秀だから、子どもも優秀なのだろう。
幸いにしてゴレス領は順調に動き始めているから、そこまで手はかからないのが救いだ。
万能スライムのスラタロウもいるし開発計画もできているから、俺達抜きでも問題ない。
「ビアンカとサトーは軍務卿について現場捜査、レイアは宰相について仕事だな」
「分かりました。助っ人を連れてきてもいいですか?」
「構わん。むしろ捜査を早く終えたいので、いくらでも手は欲しい」
陛下の許可を貰ったので、助っ人を迎えにいって軍務卿と合流した。
レイアはそのまま宰相と一緒に、王城内の宰相用執務室に向かった。
「お、きたか。こっちだこっち」
「お待たせしました」
王城内のとある部屋の前で、軍務卿が待っていた。
何故かミミも一緒にいるけど。
「今日は、貴族主義の連中が王城内で控室にしていた場所だ」
「めちゃくちゃ怪しい場所ですね」
「何でも、普段はメイドも立ち入らせてなかったようだ」
「まるで治外法権じゃのう」
「否定はできないな」
きっと貴族であることを盾にして、誰も入らせなかったのだろうな。
ドアを開けて中を見たら、想像以上の光景が広がっていた。
「きったないな」
「臭い」
「これは物凄いのう」
ゴミは散乱しているし、あたり一面は汚れている。
タバコや食べたものも散らばっていて、よくこんな中を控室にしていたよ。
獣人のミミは臭いに敏感なのか、手で鼻を押さえていた。
「軍務卿、先ずは生活魔法で綺麗にしていいですか?」
「やってくれ。これでは捜査もできん」
ということで急いで生活魔法で中の汚れを取ったが、それでも食べ残しやタバコの吸い殻もある。
窓を開けて換気をしながら、作業を開始する。
ここで助っ人を投入。
タラちゃんとフランソワにホワイトの三人。
狭い場所もあるので、お手伝いを頼んだ。
俺はゴミを集めるか。
「なんじゃこれは!」
控室の色々な作業をしていたら、陛下が通りかかってびっくりしていた。
途中からメイドさんも参加して、控室のゴミ拾い兼捜索を行っている。
ちなみにこのメイドさんは軍務卿の親戚の子で、たまたま手が空いたので連れてこられた。
いくら信頼している人でないといけないとはいえ、急に連れてこられたメイドさんは災難だよ。
「異臭がするから見に来たら、まさかこんな事になっておるとは」
「是非、この部屋を開けたときの光景と臭いを体験して欲しいです」
「夢に出てきそうだな」
陛下だけでなく、他の閣僚とかも集まってきた。
ちなみにゴミは大袋で二十個は出ていて、書類は少ししかない。
断片的だけど今回の件とか書いてあるから、成果が少し出ている。
これで何も成果が出なかったら、ただのゴミ屋敷清掃だよ。
と、ここでホワイトが一枚の書類を持ってきた。
どうもソファーの下に落ちていたらしい。
おや、思い出したくない名前が載っているぞ。
「皆さん、これを見てください」
「どれどれ? おい、これは本当か?」
「でも、タヌキ侯爵のサインは間違いないですね。念の為に筆跡鑑定をかけましょう」
「こんな所でこんな物が見つかるとは」
出てきたのは、タヌキ侯爵とビルゴの毒の取引書。
闇ギルドが絡んでいたか。
確かに、毒なんて簡単には手に入れる事はできない。
筆跡鑑定次第だけど、これは大きな証拠になるな。
その他にも、タラちゃんがハゲ伯爵と闇ギルドの取引の書類を見つけた。
現在貴族主義の連中の屋敷を騎士が捜索をしているが、明日は俺達もそちらに合流する事になるという。
「奴らは昔から忘れ物が多かったな」
陛下がしみじみと言うが、こんなもの忘れないで欲しい。
大体の捜索が終わったので、細かい清掃はメイドさんに任せることに。
だけどソファーとかがカビてしまって駄目になっているので、備品は総入れ替えだという。
あのゴミ屋敷の光景をみているから、俺はここを使いたくないな。
ビアンカ殿下は暫く王城にいるというので、仕事を終えたレイアを迎えに行ってゴレス領のお屋敷にワープした。
「サトーさんお帰りなさい。だいぶ疲れていますね」
「只今戻りました。王城内の貴族主義の控室を捜索したら、まさかのゴミ屋敷だったので」
「それは、何とも言えないですね……」
リンが出迎えてくれたけど、今日は肉体的にも精神的にも疲れた。
ゆっくり休みたい所だが、ここでお屋敷内にエステルがいないことに気がついた。
「あれ? エステルは何処に?」
「その、フローラ様が王城に連れて行きました。何でも王城内の部屋を総点検した所、エステル様の部屋が凄かったらしいので」
嗚呼、激怒しているフローラ様の姿が目に浮かぶ。
急遽連絡があって、ショコラがフローラ様を迎えに行ったんだな。
二、三日は帰ってこないと予想しておこう。
「だいぶ良くなりました。ありがとうございます」
翌朝、フローレンスさんの治療を兼ねてスラタロウ特製のお粥を持ってきた。
顔色は良くなったけど、表情はまだ暗い。
エステルとリンも一緒についてきて心配しているけど、フローレンスさんはだいぶ思いつめているようだ。
と、ここで小さな乱入者が現れた。
「おねーちゃん、お話ししよー!」
「ぼくたちが、いーこいーこしてあげる」
「ハリちゃんも、一緒にお話したいんだって」
マシュー君達もフローレンスさんと会ったことがあるから、体調が悪いのを心配しているようだ。
この子達なりに、フローレンスさんを看病したいらしい。
フローレンスさんは少しクスリと笑って、子ども達とおしゃべりを始めた。
「マシュー君達に感謝ですね」
「そうだね。今は無理した笑顔だけど、とっても楽しそうだよ」
「私達は、このまま子ども達の事もみています」
フローレンスさんはこのままエステルとリンに任せて、俺はビアンカ殿下とレイアとともに王城にワープした。
「すまぬな、色々忙しいところ呼び出して」
「いえいえ、思いっきり当事者ですから」
「フローレンスはどうだ?」
「まだ安静にしていますが、だいぶ良くなりました。子ども達と話せる程度まで回復しています」
「そうか、それは良かった。心の回復は暫くかかるから、ゆっくりとだな」
いつもの控室に行くと、陛下と宰相が待っていた。
直ぐにフローレンスさんの事を聞いてくるあたり、陛下も相当心配していたのだろう。
「さて、話をするか。本来はノースランド公爵の四男とサザンレイク侯爵の三男をゴレス領に派遣する予定が、今回のゴタゴタが収まるまでは捜査に参加することになった」
「操作対象の貴族が多くて、こちらも多くの手が必要ですからね」
「彼らは内政も優秀だが捜査指揮も優秀でな。今は現場指揮にあたってもらっている」
こればっかりはどうしようもない。
現当主が優秀だから、子どもも優秀なのだろう。
幸いにしてゴレス領は順調に動き始めているから、そこまで手はかからないのが救いだ。
万能スライムのスラタロウもいるし開発計画もできているから、俺達抜きでも問題ない。
「ビアンカとサトーは軍務卿について現場捜査、レイアは宰相について仕事だな」
「分かりました。助っ人を連れてきてもいいですか?」
「構わん。むしろ捜査を早く終えたいので、いくらでも手は欲しい」
陛下の許可を貰ったので、助っ人を迎えにいって軍務卿と合流した。
レイアはそのまま宰相と一緒に、王城内の宰相用執務室に向かった。
「お、きたか。こっちだこっち」
「お待たせしました」
王城内のとある部屋の前で、軍務卿が待っていた。
何故かミミも一緒にいるけど。
「今日は、貴族主義の連中が王城内で控室にしていた場所だ」
「めちゃくちゃ怪しい場所ですね」
「何でも、普段はメイドも立ち入らせてなかったようだ」
「まるで治外法権じゃのう」
「否定はできないな」
きっと貴族であることを盾にして、誰も入らせなかったのだろうな。
ドアを開けて中を見たら、想像以上の光景が広がっていた。
「きったないな」
「臭い」
「これは物凄いのう」
ゴミは散乱しているし、あたり一面は汚れている。
タバコや食べたものも散らばっていて、よくこんな中を控室にしていたよ。
獣人のミミは臭いに敏感なのか、手で鼻を押さえていた。
「軍務卿、先ずは生活魔法で綺麗にしていいですか?」
「やってくれ。これでは捜査もできん」
ということで急いで生活魔法で中の汚れを取ったが、それでも食べ残しやタバコの吸い殻もある。
窓を開けて換気をしながら、作業を開始する。
ここで助っ人を投入。
タラちゃんとフランソワにホワイトの三人。
狭い場所もあるので、お手伝いを頼んだ。
俺はゴミを集めるか。
「なんじゃこれは!」
控室の色々な作業をしていたら、陛下が通りかかってびっくりしていた。
途中からメイドさんも参加して、控室のゴミ拾い兼捜索を行っている。
ちなみにこのメイドさんは軍務卿の親戚の子で、たまたま手が空いたので連れてこられた。
いくら信頼している人でないといけないとはいえ、急に連れてこられたメイドさんは災難だよ。
「異臭がするから見に来たら、まさかこんな事になっておるとは」
「是非、この部屋を開けたときの光景と臭いを体験して欲しいです」
「夢に出てきそうだな」
陛下だけでなく、他の閣僚とかも集まってきた。
ちなみにゴミは大袋で二十個は出ていて、書類は少ししかない。
断片的だけど今回の件とか書いてあるから、成果が少し出ている。
これで何も成果が出なかったら、ただのゴミ屋敷清掃だよ。
と、ここでホワイトが一枚の書類を持ってきた。
どうもソファーの下に落ちていたらしい。
おや、思い出したくない名前が載っているぞ。
「皆さん、これを見てください」
「どれどれ? おい、これは本当か?」
「でも、タヌキ侯爵のサインは間違いないですね。念の為に筆跡鑑定をかけましょう」
「こんな所でこんな物が見つかるとは」
出てきたのは、タヌキ侯爵とビルゴの毒の取引書。
闇ギルドが絡んでいたか。
確かに、毒なんて簡単には手に入れる事はできない。
筆跡鑑定次第だけど、これは大きな証拠になるな。
その他にも、タラちゃんがハゲ伯爵と闇ギルドの取引の書類を見つけた。
現在貴族主義の連中の屋敷を騎士が捜索をしているが、明日は俺達もそちらに合流する事になるという。
「奴らは昔から忘れ物が多かったな」
陛下がしみじみと言うが、こんなもの忘れないで欲しい。
大体の捜索が終わったので、細かい清掃はメイドさんに任せることに。
だけどソファーとかがカビてしまって駄目になっているので、備品は総入れ替えだという。
あのゴミ屋敷の光景をみているから、俺はここを使いたくないな。
ビアンカ殿下は暫く王城にいるというので、仕事を終えたレイアを迎えに行ってゴレス領のお屋敷にワープした。
「サトーさんお帰りなさい。だいぶ疲れていますね」
「只今戻りました。王城内の貴族主義の控室を捜索したら、まさかのゴミ屋敷だったので」
「それは、何とも言えないですね……」
リンが出迎えてくれたけど、今日は肉体的にも精神的にも疲れた。
ゆっくり休みたい所だが、ここでお屋敷内にエステルがいないことに気がついた。
「あれ? エステルは何処に?」
「その、フローラ様が王城に連れて行きました。何でも王城内の部屋を総点検した所、エステル様の部屋が凄かったらしいので」
嗚呼、激怒しているフローラ様の姿が目に浮かぶ。
急遽連絡があって、ショコラがフローラ様を迎えに行ったんだな。
二、三日は帰ってこないと予想しておこう。