カツンカツン。
石畳に足音を響かせながら歩くこと五分。
メイドさんが先導をして飛龍専用の発着所から控室に移動するのだが、未だに到着しない。
「サトー様、すみません」
「いえいえ、この位全然平気ですよ」
「お兄ちゃんが疲れたら、ミケが変わってあげるよ」
「ふふ、ありがとうございます」
「「ぐぬぬ」」
体が回復しても当面リハビリが必要なシルク様は、まだ長距離を歩けないので俺が背負っている。
俺の後ろからは、エステル殿下とリンさんの俺の事を刺すような視線を感じる。
どうも、シルク様が俺におんぶされているのが羨ましいらしい。
いや、いくらなんでも王城内でお二人を背負うことはないですよ。
「「じゃあ後で!」」
「おんぶしません」
「なんで!」
うう、不毛な事で言い争いになっているよ。
アルス王子よ、笑っていないで止めてくれ。
それから歩く事数分。
階段も上がったりしながらようやく控室に到着した。
一人で王城内を歩いたら、絶対に迷子になるぞ。
「アルス王子殿下にエステル王女殿下。自室にお着替えを用意しております」
「え? ここで着替えるのじゃないの?」
「当たり前だ、馬鹿者。サトー、着替え終わったらここに来るから」
「分かりました、俺達も着替えて待っています」
エステル殿下はアルス王子にドナドナされて行った。
さて、俺も着替えるようにしよう。
「メイドさん、着替えはどこで行えば良いですか?」
「着替え用の部屋がございます。後ほど担当の者が伺いますので、暫くお待ちください」
すげー、着替える用の部屋もあるのか。それに着付け専用の人も。
もしかしたら侯爵家のルキアさんなら、専門の人とかいたかもしれないな。
それにしても国王陛下か、一体どんな方なのだろう。
「リンさん、ルキアさん。国王陛下にあった事あります?」
「私はないです。子爵家の妾腹なので、お会いする機会はないですね」
「私は小さい頃にお会いした事があります。お母様が陛下の妹でしたので、その縁で。とてもお優しい方だという記憶があります」
あ、そうか。ルキアさんのお母さんは陛下の妹だった。
アルス王子やエステル殿下にビアンカ殿下とも、いとこになるんだった。
そう考えると、今のメンバーってかなり凄い面子だな。
コンコン。
「はい、どうぞ」
お、着替え担当の方が来たのかな。
俺が声をかけると、ドアが開いた。
「はあ、疲れた疲れた。こうも難題ばかりでは堪らんのう」
「人神教国もそうですが、一部の貴族の動向も注視しないとなりませんね」
「戦費がかさむのは避けたいですね。北方の未開地でも開拓しスラムの人員も送り込めば、物流も動いて景気も良くなりますね」
「「「「……」」」」
えーっと、いきなり部屋の中に這入ってきてどっかりとソファーに座ったこの人達は誰だろう。
とっても高そうな服を着ているし、一人は王冠をつけているし、話している内容が内容だし。
見た目はイケメンな中年って感じだが、だらけている今の姿はあまりよろしくない。
まだ手を付けていなかった俺とリンさんとルキアさんの紅茶を飲み、お茶請けのお菓子をモリモリと食べている。
何となく嫌な予想がするが、スルーしていいのかな?
「おじちゃん、このお菓子美味しいね」
「そうか、美味いか。やっぱり茶菓子は美味いに限るな」
あ、ミケが王冠をつけた人とお菓子を頬張りながら喋っている。
これはもう無視できない。
先陣を切って、ルキアさんが恐る恐る王冠をつけた人に話しかけた。
「あの、陛下でございますか?」
「なんだ、ルキアその呼び方は。昔の様におじちゃまでもいいのだぞ」
「いえ、流石にそれは」
おおう、何という返しだ。
目の前にいる人は陛下で間違い無いらしいが、だいぶ残念な感じがする。
そういえば前にエステル殿下に似てフリーダムな性格と聞いた覚えがあるが、どう考えてもエステル殿下よりもっとフリーダムだぞ。
「何だお前らは、揃いも揃って固まりおって。儂らだってたまにはだらけたいのだ」
「まあ、そういうことです。ソファーにお座りください」
「息子らの話も聞きたいのでな、そう気を張る必要もない」
フリーダム三人組に促されて、俺とリンさんとルキアさんとシルク様はソファーに座った。
「紅茶おかわり」
「儂らのもおかわりだ」
ミケ、この状況でよく紅茶のおかわり頼めるな。
そして、それに続くフリーダム三人組も遠慮ないな。
「儂はアーサー七世じゃ。ついでに国王をやっておる」
陛下は金髪の癖毛で体もがっしりしていて顔もとても良いのに、言動がかなり残念だ。
オンとオフの切り替えが上手いと思いたい。
「私は宰相をしているブルックだ。ケインが世話になっている」
宰相はケイン様と同じ暗めの茶髪で、知的なイケメン。
言動はかなりまともに感じる。
「俺は財務卿のザイフだ。息子のジェラードをこき使ってやってくれ」
財務卿もジェラード様と同じグレーの髪だが、騎士と見間違うほどの筋肉ムキムキマッチョマン。
着てるスーツがパツンパツンだよ。
財務関係なんて仕事違うんじゃないと言うくらいの、暑苦しい人だ。
「儂らは幼なじみでのう。たまにこうして息抜きをしておる」
「陛下は普段は真面目ですよ。常に気を張ると疲れますし」
「そうそう、俺も仕事を休んで狩りに行きたい気分だぜ」
「まあ娘の婚約者候補だし、宰相と財務卿の息子とも知り合いだ。変に気構える必要もないだろう」
「軍務卿からも評価高いですから、我々もあって見たいわけですよ」
「農商務卿とか内務卿に外務卿も、是非サトーに会いたいと言っていたな。謁見終わったら会いにくると思うぞ」
色々言っているが、向こうは気を張らない付き合いを希望しているらしい。
何で俺は、次から次にこんなに偉い人に捕まるんだろうか。
「しかし、先程の話を俺達の前で話しても良かったのですか?」
「どうせ人神教国の事と貴族主義の連中の事は知っているだろう。というか中心にいて、この後も対応して貰わなければならない」
「今まではこちらも様子見でいたところだったが、やつらを正々堂々と追求する理由ができた。これは非常に大きい事です」
「今は対人神教国になっているが、王国の周辺の国の事もある。この後もサトーには、国の発展と防衛に期待していると言うわけだ」
おお、この人達は当分の間俺達をこき使うつもりだ。
人神教国の事が片付けばゆっくりできるというのは、妄想になりつつあるぞ。
「シルク嬢も今回の降格の件は気にしなくていいぞ。どうせサトーと一緒に活動していれば、直ぐに功績が溜まって伯爵への復帰と新たな領地を得るだろう」
「そ、そうですか。ご配慮頂きありがとうございます」
「他家への見せしめ的なところもある。ちゃんと功績を上げれば色々検討はする」
事前にアルス王子から降格の話を聞いていたシルク様だが、その裏話をあっさりと聞かされて複雑な表情をしていた。
まあ、人神教国が全面的に悪いのがわかったのもあって、ある程度の配慮もしたのだろう。
コンコン。
「失礼します。皆様のお着替えの準備ができました」
ここでようやく本命の着替え担当の人がきた。
だいぶ助かった気がする。
「もうそんな時間か」
「では後程会おう」
「謁見と言ってもどうせ閣僚クラスしかいない。気楽にだな」
パタン。
言うだけ言って、陛下たちは行ってしまった。
何というか、とても精神的に疲れた。
ちなみにメイドさんは、陛下がいても平然としていた。
どうも暇を見つけて応接室でだらけているのは日常茶飯事らしい。
石畳に足音を響かせながら歩くこと五分。
メイドさんが先導をして飛龍専用の発着所から控室に移動するのだが、未だに到着しない。
「サトー様、すみません」
「いえいえ、この位全然平気ですよ」
「お兄ちゃんが疲れたら、ミケが変わってあげるよ」
「ふふ、ありがとうございます」
「「ぐぬぬ」」
体が回復しても当面リハビリが必要なシルク様は、まだ長距離を歩けないので俺が背負っている。
俺の後ろからは、エステル殿下とリンさんの俺の事を刺すような視線を感じる。
どうも、シルク様が俺におんぶされているのが羨ましいらしい。
いや、いくらなんでも王城内でお二人を背負うことはないですよ。
「「じゃあ後で!」」
「おんぶしません」
「なんで!」
うう、不毛な事で言い争いになっているよ。
アルス王子よ、笑っていないで止めてくれ。
それから歩く事数分。
階段も上がったりしながらようやく控室に到着した。
一人で王城内を歩いたら、絶対に迷子になるぞ。
「アルス王子殿下にエステル王女殿下。自室にお着替えを用意しております」
「え? ここで着替えるのじゃないの?」
「当たり前だ、馬鹿者。サトー、着替え終わったらここに来るから」
「分かりました、俺達も着替えて待っています」
エステル殿下はアルス王子にドナドナされて行った。
さて、俺も着替えるようにしよう。
「メイドさん、着替えはどこで行えば良いですか?」
「着替え用の部屋がございます。後ほど担当の者が伺いますので、暫くお待ちください」
すげー、着替える用の部屋もあるのか。それに着付け専用の人も。
もしかしたら侯爵家のルキアさんなら、専門の人とかいたかもしれないな。
それにしても国王陛下か、一体どんな方なのだろう。
「リンさん、ルキアさん。国王陛下にあった事あります?」
「私はないです。子爵家の妾腹なので、お会いする機会はないですね」
「私は小さい頃にお会いした事があります。お母様が陛下の妹でしたので、その縁で。とてもお優しい方だという記憶があります」
あ、そうか。ルキアさんのお母さんは陛下の妹だった。
アルス王子やエステル殿下にビアンカ殿下とも、いとこになるんだった。
そう考えると、今のメンバーってかなり凄い面子だな。
コンコン。
「はい、どうぞ」
お、着替え担当の方が来たのかな。
俺が声をかけると、ドアが開いた。
「はあ、疲れた疲れた。こうも難題ばかりでは堪らんのう」
「人神教国もそうですが、一部の貴族の動向も注視しないとなりませんね」
「戦費がかさむのは避けたいですね。北方の未開地でも開拓しスラムの人員も送り込めば、物流も動いて景気も良くなりますね」
「「「「……」」」」
えーっと、いきなり部屋の中に這入ってきてどっかりとソファーに座ったこの人達は誰だろう。
とっても高そうな服を着ているし、一人は王冠をつけているし、話している内容が内容だし。
見た目はイケメンな中年って感じだが、だらけている今の姿はあまりよろしくない。
まだ手を付けていなかった俺とリンさんとルキアさんの紅茶を飲み、お茶請けのお菓子をモリモリと食べている。
何となく嫌な予想がするが、スルーしていいのかな?
「おじちゃん、このお菓子美味しいね」
「そうか、美味いか。やっぱり茶菓子は美味いに限るな」
あ、ミケが王冠をつけた人とお菓子を頬張りながら喋っている。
これはもう無視できない。
先陣を切って、ルキアさんが恐る恐る王冠をつけた人に話しかけた。
「あの、陛下でございますか?」
「なんだ、ルキアその呼び方は。昔の様におじちゃまでもいいのだぞ」
「いえ、流石にそれは」
おおう、何という返しだ。
目の前にいる人は陛下で間違い無いらしいが、だいぶ残念な感じがする。
そういえば前にエステル殿下に似てフリーダムな性格と聞いた覚えがあるが、どう考えてもエステル殿下よりもっとフリーダムだぞ。
「何だお前らは、揃いも揃って固まりおって。儂らだってたまにはだらけたいのだ」
「まあ、そういうことです。ソファーにお座りください」
「息子らの話も聞きたいのでな、そう気を張る必要もない」
フリーダム三人組に促されて、俺とリンさんとルキアさんとシルク様はソファーに座った。
「紅茶おかわり」
「儂らのもおかわりだ」
ミケ、この状況でよく紅茶のおかわり頼めるな。
そして、それに続くフリーダム三人組も遠慮ないな。
「儂はアーサー七世じゃ。ついでに国王をやっておる」
陛下は金髪の癖毛で体もがっしりしていて顔もとても良いのに、言動がかなり残念だ。
オンとオフの切り替えが上手いと思いたい。
「私は宰相をしているブルックだ。ケインが世話になっている」
宰相はケイン様と同じ暗めの茶髪で、知的なイケメン。
言動はかなりまともに感じる。
「俺は財務卿のザイフだ。息子のジェラードをこき使ってやってくれ」
財務卿もジェラード様と同じグレーの髪だが、騎士と見間違うほどの筋肉ムキムキマッチョマン。
着てるスーツがパツンパツンだよ。
財務関係なんて仕事違うんじゃないと言うくらいの、暑苦しい人だ。
「儂らは幼なじみでのう。たまにこうして息抜きをしておる」
「陛下は普段は真面目ですよ。常に気を張ると疲れますし」
「そうそう、俺も仕事を休んで狩りに行きたい気分だぜ」
「まあ娘の婚約者候補だし、宰相と財務卿の息子とも知り合いだ。変に気構える必要もないだろう」
「軍務卿からも評価高いですから、我々もあって見たいわけですよ」
「農商務卿とか内務卿に外務卿も、是非サトーに会いたいと言っていたな。謁見終わったら会いにくると思うぞ」
色々言っているが、向こうは気を張らない付き合いを希望しているらしい。
何で俺は、次から次にこんなに偉い人に捕まるんだろうか。
「しかし、先程の話を俺達の前で話しても良かったのですか?」
「どうせ人神教国の事と貴族主義の連中の事は知っているだろう。というか中心にいて、この後も対応して貰わなければならない」
「今まではこちらも様子見でいたところだったが、やつらを正々堂々と追求する理由ができた。これは非常に大きい事です」
「今は対人神教国になっているが、王国の周辺の国の事もある。この後もサトーには、国の発展と防衛に期待していると言うわけだ」
おお、この人達は当分の間俺達をこき使うつもりだ。
人神教国の事が片付けばゆっくりできるというのは、妄想になりつつあるぞ。
「シルク嬢も今回の降格の件は気にしなくていいぞ。どうせサトーと一緒に活動していれば、直ぐに功績が溜まって伯爵への復帰と新たな領地を得るだろう」
「そ、そうですか。ご配慮頂きありがとうございます」
「他家への見せしめ的なところもある。ちゃんと功績を上げれば色々検討はする」
事前にアルス王子から降格の話を聞いていたシルク様だが、その裏話をあっさりと聞かされて複雑な表情をしていた。
まあ、人神教国が全面的に悪いのがわかったのもあって、ある程度の配慮もしたのだろう。
コンコン。
「失礼します。皆様のお着替えの準備ができました」
ここでようやく本命の着替え担当の人がきた。
だいぶ助かった気がする。
「もうそんな時間か」
「では後程会おう」
「謁見と言ってもどうせ閣僚クラスしかいない。気楽にだな」
パタン。
言うだけ言って、陛下たちは行ってしまった。
何というか、とても精神的に疲れた。
ちなみにメイドさんは、陛下がいても平然としていた。
どうも暇を見つけて応接室でだらけているのは日常茶飯事らしい。