俺がエステル殿下を抱きしめている所に、リンさん達がやってきた。
どうやら研究所の捜索が終わって、報告にきたらしい。
いかん、こちらもダインに時間をかけすぎた。
リンさんはエステル殿下と抱き合っている俺を指さし、プンプンして怒りモードになっている。
「サトーさん、この大変な時に何をしているのですか!」
「いや、これは、その」
「エステル様だけズルいです。私も研究所の捜索を頑張ったご褒美がほしいです」
そう言って、リンさんも俺に抱きついてきた。
ここで抱きしめないと絶対に不機嫌になること間違いないので、片手でリンさんを抱いていく。
リンさんは機嫌良くなって、とろける笑顔になっている。
俺は思わず、二人に気づかれない様にため息をついた。
ビアンカ殿下とマリリさんがニヤニヤしているけど、気にしないことにしよう。
「この人達はどうしたんですか? 怪我の所が、まるで獣に食べられたようになっていますけど」
二人の抱擁を解いて、作業再開。
リンさんは、四肢を欠損しているメイドの傷を不審に思っていた。
ちなみにオリガさんとマリリさんが、俺とビアンカ殿下がおこなったメイドへの治療の続きをテキパキと行っていた。
「その傷は、あそこにいる魔獣がやったのよ」
「魔獣って、まさかダインですか?」
「ここであった時には既に魔獣となっていた。気味が悪いことに、食事と言っていたよ」
「そんな事の為にこんな大怪我を。でも、ダインならやりかねないですね」
「ああ。たとえ魔獣になっていなくても、ダインなら人間のままでも同じ事をしただろうな」
「私もそう思います」
うお、改めて元同級生からボロクソの評価をダインにしている。
人間の時でも同じ事をしたと言うあたり、本当にロクでもないやつだったのだろうな。
「取り急ぎ、怪我人は騎士に外に運び出させよう。ここに居ては二次被害を受けかねない」
「では、外にいる騎士に声をかけます」
アルス王子からの提案に、直ぐオリガさんが動いた。
俺はアイテムボックスから毛布をいくつか出して、メイド達にかけていく。
治療の効果があったのか、メイド達の顔色は随分と良くなった。
でも肉体的に加えて精神的にも大きな傷を負っているので、今後は十分なケアが必要だろう。
オリガさんに呼ばれた騎士によって、メイド達はテキパキと運ばれている。
あれ? 飛龍のそばに子ども達がいるけど、一体誰だろう?
「リンさん。飛龍のそばに子ども達がいますけど、どこの子どもですか?」
「あの子どもは、研究所に囚われていた子どもです」
「そうですか。まだあんなに囚われていたんですね」
本当に闇ギルドのやることは闇が深いな。
あんな子どもを、一体何の実験に使っていたのか。
「アルス王子、闇ギルドは証拠隠滅の為に、研究員を殺害していました」
「そうか。闇ギルドらしいといえばか」
「ただ、一人だけ息のある人がいて、その人は助ける事ができました」
「それはお手柄だ。その者の警護は、重点的におこなわないといけないな」
リンさんがアルス王子に色々報告しているが、一人とはいえ研究員を救う事ができたというのは大きい。
後は回収した書類の分析を、王都にいる専門家にやって貰わないといけないな。
そうこうしている内にメイド達の搬出も完了し、いよいよ敵の本丸に乗り込む事になる。
と、こちらの意気込みをはかったかのようなタイミングで、因縁のあの男が現れた。
「おやおや、皆さんお揃いで」
「ビルゴ!」
「サトーよ、久しぶりだな。よくぞここまできたよ」
まるでRPGのラスボスが言いそうなセリフをいうビルゴが、玄関ホールからつながる階段を上がった二階に現れた。
ちなみにビルゴは俺に会うのが久しぶりと言ったが、俺が女装した状態でブルーノ侯爵領の時に会っている。
くそう、ビルゴはあの時の俺を未だに女性と思っているらしい。
「食らうがよい」
「はあ!」
ビルゴが現れたタイミングでビアンカ殿下とマリリさんが魔法を放つが、これまたビルゴをすり抜けて後ろの壁に当たった。
ブルーノ侯爵領と同じく、またビルゴは幻影かよ。
「ビルゴ、最近幻影が多すぎではないか?」
「サトー達の活躍で、こちらも何かと忙しいのでね」
やや苦笑しながら、ビルゴが答えていた。
ビルゴにとって、俺達は目の上のたんこぶなのだろうな。
こっちとしては、逆にビルゴたち闇ギルドに人神教国が目の上のたんこぶなんだけど。
「ここでお前達には死んで貰わないといけない」
「いやなこった」
「サトーよ、プレゼントをやる。せいぜい苦労するんだな」
ビルゴが悪役らしい言葉を言ったと思ったら、玄関ホール一杯に魔獣を召喚し幻影を消し去った
でも、玄関ホール内の魔獣の数が多すぎる気がする。
これじゃ、魔獣も思うように動けないんじゃないかな?
数で押し切ろうと思ったらしいが、こちらはまとめて攻撃できる分そんなに時間もかからないで済みそうだ。
「アルス王子、ビルゴって少しアホになりました?」
「それだけ奴らも焦っているのだろう。数で押し切ろうにも、多すぎで魔獣自身も動けないとはな」
アルス王子と少し呆れながら、俺達は一斉に魔獣に向かって攻撃していく。
今回の魔獣は再生力重視なのか、切ってもまた再生してくるのが面倒くさい。
「皆さん、属性付きの魔法剣なら魔獣も再生できません」
「成程、切り口を焼くなり凍らせれば再生はできぬか」
と、ここでオリガさんから有り難いアドバイスがあった。
試しにビアンカ殿下が雷をまとった魔法剣で魔獣の腕を切断したところ、魔獣は腕を再生できなかった。
皆は各々の属性魔法の魔法剣を発動し、魔獣に切りかかっていく。
あ、そういえば俺の魔法属性は空間と回復と生活魔法だ。他の人のように、攻撃魔法が使えないや。
ここは、何の魔法が魔獣に効くか試してみよう。
まずは空間魔法。空間切断剣は使用魔力が多いのでやめておく。
空間切断剣なら、たぶん魔獣でも大丈夫な気がするが。
「せい」
うーん、これは駄目だ。普通に再生してしまう。切断面がきれいなだけだな。
次は回復魔法。
以前バルガス領の時に聖魔法の効果が抜群だったから、果たして回復魔法でも上手くいくか。
「とう」
ありゃ、これも駄目だ。
効かない訳ではないが、再生自体はしている。
過剰回復させれば効果がありそうだけど、普通に回復魔法を纏っただけでは効果が薄い。
では、最後に生活魔法で。
汚れとかをキレイにできるから、魔獣には効果があったりして。
「やあ」
おお、効いたよ。
生活魔法だと効果あるんだ。
生活魔法が、傷口に何らかの作用をする可能性がありそうだ。異常再生に効果があるんだな。
これなら俺も魔獣討伐に貢献できそうだ。
よーし、では次の魔獣は……
あれ、皆さんもう全部の魔獣倒したの?
そんなー、あんなに沢山の魔獣がいたのに、俺は一体しか倒していないぞ。
「サトーよ、何ガッカリしておるのだ?」
「いや、ようやく生活魔法が魔獣に効く事が分かったから、俺も魔獣を倒そうと思ったら既に全部倒されていてね」
「ふむ、それは仕方ない。妾も準備運動がしたかったのでな」
「右に同じです」
「あはは、皆さんストレス溜まってましたから」
リンさんが慰めてくれるが、ストレス発散に俺の分も倒されるとは。
よく見ると、タラちゃんとかも魔獣を倒していた。
タラちゃん達アルケニーは属性を帯びた糸が使えるし、スラタロウとタコヤキは魔法剣もどきが使える。
一番驚いたのが、サファイアがクチバシや足に属性魔法をまとわせて攻撃していたこと。上手く魔獣の急所を攻撃していたな。
「しかし、魔獣に生活魔法が効くのは大きな収穫だ。生活魔法を使うものは多いので、防衛の役に立ちそうだな」
「生活魔法自体は簡単ですからね」
アルス王子から一応の評価を受けつつ、俺達は玄関ホールから二階に上がって行った。
どうやら研究所の捜索が終わって、報告にきたらしい。
いかん、こちらもダインに時間をかけすぎた。
リンさんはエステル殿下と抱き合っている俺を指さし、プンプンして怒りモードになっている。
「サトーさん、この大変な時に何をしているのですか!」
「いや、これは、その」
「エステル様だけズルいです。私も研究所の捜索を頑張ったご褒美がほしいです」
そう言って、リンさんも俺に抱きついてきた。
ここで抱きしめないと絶対に不機嫌になること間違いないので、片手でリンさんを抱いていく。
リンさんは機嫌良くなって、とろける笑顔になっている。
俺は思わず、二人に気づかれない様にため息をついた。
ビアンカ殿下とマリリさんがニヤニヤしているけど、気にしないことにしよう。
「この人達はどうしたんですか? 怪我の所が、まるで獣に食べられたようになっていますけど」
二人の抱擁を解いて、作業再開。
リンさんは、四肢を欠損しているメイドの傷を不審に思っていた。
ちなみにオリガさんとマリリさんが、俺とビアンカ殿下がおこなったメイドへの治療の続きをテキパキと行っていた。
「その傷は、あそこにいる魔獣がやったのよ」
「魔獣って、まさかダインですか?」
「ここであった時には既に魔獣となっていた。気味が悪いことに、食事と言っていたよ」
「そんな事の為にこんな大怪我を。でも、ダインならやりかねないですね」
「ああ。たとえ魔獣になっていなくても、ダインなら人間のままでも同じ事をしただろうな」
「私もそう思います」
うお、改めて元同級生からボロクソの評価をダインにしている。
人間の時でも同じ事をしたと言うあたり、本当にロクでもないやつだったのだろうな。
「取り急ぎ、怪我人は騎士に外に運び出させよう。ここに居ては二次被害を受けかねない」
「では、外にいる騎士に声をかけます」
アルス王子からの提案に、直ぐオリガさんが動いた。
俺はアイテムボックスから毛布をいくつか出して、メイド達にかけていく。
治療の効果があったのか、メイド達の顔色は随分と良くなった。
でも肉体的に加えて精神的にも大きな傷を負っているので、今後は十分なケアが必要だろう。
オリガさんに呼ばれた騎士によって、メイド達はテキパキと運ばれている。
あれ? 飛龍のそばに子ども達がいるけど、一体誰だろう?
「リンさん。飛龍のそばに子ども達がいますけど、どこの子どもですか?」
「あの子どもは、研究所に囚われていた子どもです」
「そうですか。まだあんなに囚われていたんですね」
本当に闇ギルドのやることは闇が深いな。
あんな子どもを、一体何の実験に使っていたのか。
「アルス王子、闇ギルドは証拠隠滅の為に、研究員を殺害していました」
「そうか。闇ギルドらしいといえばか」
「ただ、一人だけ息のある人がいて、その人は助ける事ができました」
「それはお手柄だ。その者の警護は、重点的におこなわないといけないな」
リンさんがアルス王子に色々報告しているが、一人とはいえ研究員を救う事ができたというのは大きい。
後は回収した書類の分析を、王都にいる専門家にやって貰わないといけないな。
そうこうしている内にメイド達の搬出も完了し、いよいよ敵の本丸に乗り込む事になる。
と、こちらの意気込みをはかったかのようなタイミングで、因縁のあの男が現れた。
「おやおや、皆さんお揃いで」
「ビルゴ!」
「サトーよ、久しぶりだな。よくぞここまできたよ」
まるでRPGのラスボスが言いそうなセリフをいうビルゴが、玄関ホールからつながる階段を上がった二階に現れた。
ちなみにビルゴは俺に会うのが久しぶりと言ったが、俺が女装した状態でブルーノ侯爵領の時に会っている。
くそう、ビルゴはあの時の俺を未だに女性と思っているらしい。
「食らうがよい」
「はあ!」
ビルゴが現れたタイミングでビアンカ殿下とマリリさんが魔法を放つが、これまたビルゴをすり抜けて後ろの壁に当たった。
ブルーノ侯爵領と同じく、またビルゴは幻影かよ。
「ビルゴ、最近幻影が多すぎではないか?」
「サトー達の活躍で、こちらも何かと忙しいのでね」
やや苦笑しながら、ビルゴが答えていた。
ビルゴにとって、俺達は目の上のたんこぶなのだろうな。
こっちとしては、逆にビルゴたち闇ギルドに人神教国が目の上のたんこぶなんだけど。
「ここでお前達には死んで貰わないといけない」
「いやなこった」
「サトーよ、プレゼントをやる。せいぜい苦労するんだな」
ビルゴが悪役らしい言葉を言ったと思ったら、玄関ホール一杯に魔獣を召喚し幻影を消し去った
でも、玄関ホール内の魔獣の数が多すぎる気がする。
これじゃ、魔獣も思うように動けないんじゃないかな?
数で押し切ろうと思ったらしいが、こちらはまとめて攻撃できる分そんなに時間もかからないで済みそうだ。
「アルス王子、ビルゴって少しアホになりました?」
「それだけ奴らも焦っているのだろう。数で押し切ろうにも、多すぎで魔獣自身も動けないとはな」
アルス王子と少し呆れながら、俺達は一斉に魔獣に向かって攻撃していく。
今回の魔獣は再生力重視なのか、切ってもまた再生してくるのが面倒くさい。
「皆さん、属性付きの魔法剣なら魔獣も再生できません」
「成程、切り口を焼くなり凍らせれば再生はできぬか」
と、ここでオリガさんから有り難いアドバイスがあった。
試しにビアンカ殿下が雷をまとった魔法剣で魔獣の腕を切断したところ、魔獣は腕を再生できなかった。
皆は各々の属性魔法の魔法剣を発動し、魔獣に切りかかっていく。
あ、そういえば俺の魔法属性は空間と回復と生活魔法だ。他の人のように、攻撃魔法が使えないや。
ここは、何の魔法が魔獣に効くか試してみよう。
まずは空間魔法。空間切断剣は使用魔力が多いのでやめておく。
空間切断剣なら、たぶん魔獣でも大丈夫な気がするが。
「せい」
うーん、これは駄目だ。普通に再生してしまう。切断面がきれいなだけだな。
次は回復魔法。
以前バルガス領の時に聖魔法の効果が抜群だったから、果たして回復魔法でも上手くいくか。
「とう」
ありゃ、これも駄目だ。
効かない訳ではないが、再生自体はしている。
過剰回復させれば効果がありそうだけど、普通に回復魔法を纏っただけでは効果が薄い。
では、最後に生活魔法で。
汚れとかをキレイにできるから、魔獣には効果があったりして。
「やあ」
おお、効いたよ。
生活魔法だと効果あるんだ。
生活魔法が、傷口に何らかの作用をする可能性がありそうだ。異常再生に効果があるんだな。
これなら俺も魔獣討伐に貢献できそうだ。
よーし、では次の魔獣は……
あれ、皆さんもう全部の魔獣倒したの?
そんなー、あんなに沢山の魔獣がいたのに、俺は一体しか倒していないぞ。
「サトーよ、何ガッカリしておるのだ?」
「いや、ようやく生活魔法が魔獣に効く事が分かったから、俺も魔獣を倒そうと思ったら既に全部倒されていてね」
「ふむ、それは仕方ない。妾も準備運動がしたかったのでな」
「右に同じです」
「あはは、皆さんストレス溜まってましたから」
リンさんが慰めてくれるが、ストレス発散に俺の分も倒されるとは。
よく見ると、タラちゃんとかも魔獣を倒していた。
タラちゃん達アルケニーは属性を帯びた糸が使えるし、スラタロウとタコヤキは魔法剣もどきが使える。
一番驚いたのが、サファイアがクチバシや足に属性魔法をまとわせて攻撃していたこと。上手く魔獣の急所を攻撃していたな。
「しかし、魔獣に生活魔法が効くのは大きな収穫だ。生活魔法を使うものは多いので、防衛の役に立ちそうだな」
「生活魔法自体は簡単ですからね」
アルス王子から一応の評価を受けつつ、俺達は玄関ホールから二階に上がって行った。