ランドルフ伯爵の異変は、バスク領にいる軍務卿にも知らされた。
「報告します。ランドルフ伯爵領から複数ののろしのようなものが上がっています」
「ご苦労。総員、第一戦闘配備だ」
「はっ」
軍務卿はランドルフ伯爵領で動きがあると、直ぐに戦闘準備を指示した。長年の兵としての勘が、直ぐに戦闘が起こると予測したのだろう。
ちなみに軍務卿の周りにはヴィル様とリーフとドラコとベリルにホワイトに馬が、そして何故かあのうさぎ獣人の女の子もそばにいた。
ガルフとマルクは、バスク家嫡男のラルフと共に市内巡回にあたっている。
上空では、ショコラが周囲の監視をしていた。
「軍務卿、バスク卿がこちらにこられました」
「タイミングが良い。こちらにくるように案内を」
「はっ」
バスク卿が兵を引き連れて、軍務卿の所に合流した。
バスク卿ものろしを見て、直ぐに行動を始めていた。
「軍務卿、こちらの準備も万端です。市内も重点的に警戒にあたらせております」
「流石はバスク卿、準備が早い」
「闇ギルドやワース商会と戦闘した経験がありますので。奴らは奇襲も仕掛けてきます」
「前からくる軍隊は、おとりだと言うのか?」
「はい、前の戦いでも裏をかかれて、危うく防衛ラインを突破されかけました」
「何をしてくるかわからないか。中々にやりにくい相手だな」
軍務卿とバスク卿が話をしているが、何をしてくるかわからない相手の対応をしないといけない。
と、ここで女の子が軍務卿の袖を引っ張った。
「おじちゃん。何かがこのあたりを囲んでくる」
「なに?」
うさぎ獣人の特性か、はたまたこの子の探索能力が凄いのか。周知の僅かな異変に気がついたようだ。
「うん、確かに何かがいるねー。ドラコもベリルも戦闘準備だよー」
「了解」
「ワオーン」
リーフも何かを感じたらしく、直ぐに警戒に入った。
軍務卿もバスク卿も剣を抜き、ヴィル様も拳を握って周囲を警戒する。
グオー!
突如として三頭の魔獣が軍務卿を囲むように現れ、部隊の周囲にはゴブリンの群れが現れた。
「慌てるな。周囲を警戒しつつ、魔物の撃退に入れ」
「はい!」
慌てず軍務卿が軍に指示を出し、すぐさま部隊はゴブリンの討伐を始めた。
そして軍務卿達を取り囲むように魔獣が襲いかかるが、それを軍務卿とドラコとヴィル様が相対する。
しかしながら、それでも女の子は周囲の探索をやめていなかった。
それは、敵が現れたら真っ先に攻撃する馬も同様だった。
「いた、あの木の陰」
「ヒヒーン」
「うわー、何で分かった?」
不意に女の子が指差した方向に、馬が突進を仕掛ける。
幻影魔法でも使っていたのか、そこには明らかに闇ギルドの暗殺者と思われる者がいた。
馬の突然の突進に、暗殺者は為す術もなく吹き飛ばされた。
「直ぐにそいつを捕縛せよ。この混乱に乗じて何かを仕掛けてくる奴が、他にもいると思え」
「はっ」
バスク卿の指示により、すぐさま暗殺者は捕縛された。
更に周囲の警戒を強化するように、守備兵に指示を出す。
その間も女の子と馬は、暗殺者を見つけては吹き飛ばしていた。
「いやあ、あの子の探索能力は凄いな」
「はい、僕でも気が付きませんでした」
「魔法の腕もあるし、我が家に是非欲しいな」
「それは良い案ですけど、おばあさまに相談しないといけませんね」
「うぐ、それが待っていたか」
魔獣を倒した軍務卿とヴィル様が話をしていたが、女の子の探索能力は確かに凄いものだった。軍務卿が欲しがるのも頷ける。
ドラコも何とか魔獣を倒し、ホワイトとショコラの助けもあってゴブリンの群れも倒しきったようだ。
「お嬢ちゃん。周囲に他の暗殺者はいるか?」
「うーん、今は大丈夫。でもまたくるかも」
「はは、そいつは退屈しねえな。お嬢ちゃんも大変だな」
軍務卿は女の子の頭を撫でながら、久しぶりの大規模戦闘に心が踊っていたようだ。
そんな軍務卿の事を、女の子が不満気に見上げていた。
「わたしは、お嬢ちゃんって名前じゃないよ」
「あぁ? 名前聞いてないから知らねえよ」
「そうだっけ?」
「そうだ」
女の子はお嬢ちゃんって言われるのが不服そうだったけど、自分の名前を言ってない事に気がついていなかったようだ。
女の子は首を傾げて、不思議そうに軍務卿を見上げていた。
「ミミ、わたしはミミだよ」
「そうか、じゃあお嬢ちゃんは卒業だな」
「あー、また言った」
「卒業っていっただろ。期待してるぞ、ミミよ」
「うん!」
うさぎ獣人の女の子、もといミミは嬉しそうに軍務卿に笑いかけていた。
その後も暫くの間ミミは周囲の探索を行い、馬と共に次々と暗殺者を捕まえていったのだった。
「報告します。ランドルフ伯爵領から複数ののろしのようなものが上がっています」
「ご苦労。総員、第一戦闘配備だ」
「はっ」
軍務卿はランドルフ伯爵領で動きがあると、直ぐに戦闘準備を指示した。長年の兵としての勘が、直ぐに戦闘が起こると予測したのだろう。
ちなみに軍務卿の周りにはヴィル様とリーフとドラコとベリルにホワイトに馬が、そして何故かあのうさぎ獣人の女の子もそばにいた。
ガルフとマルクは、バスク家嫡男のラルフと共に市内巡回にあたっている。
上空では、ショコラが周囲の監視をしていた。
「軍務卿、バスク卿がこちらにこられました」
「タイミングが良い。こちらにくるように案内を」
「はっ」
バスク卿が兵を引き連れて、軍務卿の所に合流した。
バスク卿ものろしを見て、直ぐに行動を始めていた。
「軍務卿、こちらの準備も万端です。市内も重点的に警戒にあたらせております」
「流石はバスク卿、準備が早い」
「闇ギルドやワース商会と戦闘した経験がありますので。奴らは奇襲も仕掛けてきます」
「前からくる軍隊は、おとりだと言うのか?」
「はい、前の戦いでも裏をかかれて、危うく防衛ラインを突破されかけました」
「何をしてくるかわからないか。中々にやりにくい相手だな」
軍務卿とバスク卿が話をしているが、何をしてくるかわからない相手の対応をしないといけない。
と、ここで女の子が軍務卿の袖を引っ張った。
「おじちゃん。何かがこのあたりを囲んでくる」
「なに?」
うさぎ獣人の特性か、はたまたこの子の探索能力が凄いのか。周知の僅かな異変に気がついたようだ。
「うん、確かに何かがいるねー。ドラコもベリルも戦闘準備だよー」
「了解」
「ワオーン」
リーフも何かを感じたらしく、直ぐに警戒に入った。
軍務卿もバスク卿も剣を抜き、ヴィル様も拳を握って周囲を警戒する。
グオー!
突如として三頭の魔獣が軍務卿を囲むように現れ、部隊の周囲にはゴブリンの群れが現れた。
「慌てるな。周囲を警戒しつつ、魔物の撃退に入れ」
「はい!」
慌てず軍務卿が軍に指示を出し、すぐさま部隊はゴブリンの討伐を始めた。
そして軍務卿達を取り囲むように魔獣が襲いかかるが、それを軍務卿とドラコとヴィル様が相対する。
しかしながら、それでも女の子は周囲の探索をやめていなかった。
それは、敵が現れたら真っ先に攻撃する馬も同様だった。
「いた、あの木の陰」
「ヒヒーン」
「うわー、何で分かった?」
不意に女の子が指差した方向に、馬が突進を仕掛ける。
幻影魔法でも使っていたのか、そこには明らかに闇ギルドの暗殺者と思われる者がいた。
馬の突然の突進に、暗殺者は為す術もなく吹き飛ばされた。
「直ぐにそいつを捕縛せよ。この混乱に乗じて何かを仕掛けてくる奴が、他にもいると思え」
「はっ」
バスク卿の指示により、すぐさま暗殺者は捕縛された。
更に周囲の警戒を強化するように、守備兵に指示を出す。
その間も女の子と馬は、暗殺者を見つけては吹き飛ばしていた。
「いやあ、あの子の探索能力は凄いな」
「はい、僕でも気が付きませんでした」
「魔法の腕もあるし、我が家に是非欲しいな」
「それは良い案ですけど、おばあさまに相談しないといけませんね」
「うぐ、それが待っていたか」
魔獣を倒した軍務卿とヴィル様が話をしていたが、女の子の探索能力は確かに凄いものだった。軍務卿が欲しがるのも頷ける。
ドラコも何とか魔獣を倒し、ホワイトとショコラの助けもあってゴブリンの群れも倒しきったようだ。
「お嬢ちゃん。周囲に他の暗殺者はいるか?」
「うーん、今は大丈夫。でもまたくるかも」
「はは、そいつは退屈しねえな。お嬢ちゃんも大変だな」
軍務卿は女の子の頭を撫でながら、久しぶりの大規模戦闘に心が踊っていたようだ。
そんな軍務卿の事を、女の子が不満気に見上げていた。
「わたしは、お嬢ちゃんって名前じゃないよ」
「あぁ? 名前聞いてないから知らねえよ」
「そうだっけ?」
「そうだ」
女の子はお嬢ちゃんって言われるのが不服そうだったけど、自分の名前を言ってない事に気がついていなかったようだ。
女の子は首を傾げて、不思議そうに軍務卿を見上げていた。
「ミミ、わたしはミミだよ」
「そうか、じゃあお嬢ちゃんは卒業だな」
「あー、また言った」
「卒業っていっただろ。期待してるぞ、ミミよ」
「うん!」
うさぎ獣人の女の子、もといミミは嬉しそうに軍務卿に笑いかけていた。
その後も暫くの間ミミは周囲の探索を行い、馬と共に次々と暗殺者を捕まえていったのだった。