「お兄ちゃん」
「ミケ、どうした?」
「リンお姉ちゃんとエステルお姉ちゃんって、いつ帰ってくるの?」
「うーん、早くて明日かな。この前バスク領に行ったときも、往復だけで二日かかったでしょ」
「そっか、寂しいな」
朝、珍しく早く起きたミケからリンさんとエステル殿下の事を聞かれた。
この間のバスク領の時も含めて二人とはずっと一緒だったから、ミケはちょっと寂しいみたいだ。
「お兄ちゃんは、お姉ちゃん達に会えなくて寂しい?」
「そうだね、いつも会っていた人がいないのは寂しいな」
いつも明るい二人だから、その二人がいないのは俺も少しさみしい気がする。
この時は気が付かなかったけど、俺とミケの話を他の四人がこっそり聞いていた事でこの後小さな騒動になる。
「「行ってきます!」」
「行ってらっしゃい」
スラムの炊き出しに向うミケとドラコを送り出し、俺も仕事を始める。
昨日ケリーさんが持ってきた書類にララ達もチェックした人が加わり、かなり分厚い資料になっている。
「アルス王子、候補者の数が凄いことになっていますね」
「しかし、それだけ優秀な人が多いということだ。既に第一関門は突破していますし」
「あの子達の善悪を見分ける能力は、かなり特殊ですからね」
「実は父上にこの事を伝えたら、是非王都でも行いたいと言ってきた。闇ギルドの件が落ち着いたら、同じ事を王都でもやることになるだろうな」
「本当ですか、その話は」
「本当だ。何しろ善悪は知識や武芸と違って見抜くのが難しい。それを見抜くとなれば、国としても欲しい人材だ」
昨日の子ども達の件がかなり大きな話になってきたぞ。
あの子達は知り合いの頼み事はホイホイと受けちゃうから、たぶんやることになるんだろうな。
書類を申込内容で分けながら、そんな事を思っていた。
「その話なら妾も聞いたのじゃ。後、今王都にいる保護した子どもの中にも似たような事ができるのがおってな、その子らも一緒にということらしいぞ」
「王城内部の人員のチェックと人員募集のチェックの両方を行う。恐らくは人神教国と争いになるだろうから、その前に内部組織を固めるという」
かなり具体的な案が出てきたけど、この内容だと前々から考えていたらしいがどうやって見分けるかの方法がなかったのだろうな。
そこにこの子達が現れたので、一気に対応するというわけか。
よし、資料の仕分けが終わったぞ。
「ルキアさん。ケリーさんからもらった資料の仕分けが終わりました」
「ありがとうございます、サトー様」
「ざっと見た感じですが、特に怪しいのはいませんでしたよ」
「能力とかは面接して判断しますので。しかし仕事が早いですね」
「いえいえ、ただ仕分けただけですから」
今回は獣人が多めだったから兵士配置が多いけど、文官やメイドさんの候補者もいたからそれなりには収穫がありそうだ。
「失礼します。自治組織より追加の候補者の資料が届きました」
あ、追加の仕事がやってきた。
今度は文官とメイドさんが多そうだ。
「さっそく確認しますね」
「サトーは冒険者や指揮官だけでなく、文官もできるのじゃな」
「法衣貴族になったら、王城勤務は確定だろう」
「あはは、それはどうも」
ランドルフ伯爵領の後のことも決まりそうだが、今は目の前の書類に注力しよう。
昼食を食べて暫くしたら書類の分類も終わって、さっそく明日から面接が始まるらしい。
「面接官は誰がやるんですか?」
「メイドはケリーとマリリ、文官はルキアとサトー、兵士は私とビアンカだな。エステルとリンがいれば、担当割り振りできるのだがな」
「さらりと俺の名前が入っていましたね」
「当たり前だ。手が足りんのだ、使える手があればいくらでも使うぞ」
元執事のモルガンさんと元騎士団長のレオさんは、自治組織とお屋敷を行ったり来たりで忙しいので面接官はできないという。
俺らが頑張らないと、モルガンさんとレオさんの手があかないわけだ。
と、ここで想定外の人が姿をあらわした。
「ただいま」
「ただいま戻りました」
執務室にあらわれたのは、昨日朝早くバスク領へ向かったはずのエステル殿下とリンさんだ。
どう考えても帰ってくるのが早すぎる。
アルス王子とビアンカ殿下も、怪しげな顔を二人にむけていた。
と、そこに疲れた顔をしたオリガさんが入ってきた。更にその後には、バスク領にいるはずのガルフさんとマルクさんもいた。
取り敢えず、一番事情を知っていそうなオリガさんに色々聞いてみよう。
「オリガさん、だいぶやつれてますけど何かあったんですか?」
「それがエステル殿下とリン様が、サトー様に早く逢いたいと馬を速く走らせまして」
「それはなんというか、こちらこそ申し訳無いないです」
あの馬が暴走しないまでも速く走ったんだ。そりゃ早く着くな。
しかし二人はなんてことをしたんだよ。
「ラルフ様が事前に難民の代表と帰還について話をしていたので、何名かがこちらにくることはすんなりときまりました。後、手が足りなさそうだということで、ワース商会の件も落ち着いたのでガルフとマルクが同行することになりました」
「大体はわかりました。それよりもオリガさんは体調大丈夫ですか?」
「わたしは大丈夫なのですが同行した難民の方々がダウンしてまして、今はマリリが治療中となります」
オリガさんも限界そうで、よく見るとガルフさんとマルクさんも顔色が悪い。
ルキアさんの配慮で三人は、休んでもらうことに。
俺がオリガさんと話している間、エステル殿下とリンさんは正座しながらアルス王子とビアンカ殿下から色々言われていた。
流石に今回は二人の擁護はできないな。
「ぶー、せっかく逢えたのにサトーは助けてくれないし」
「当たり前です。周りの人に迷惑をかけているんですから」
夕食時、エステル殿下が説教されている時に助けてくれなかったと不貞腐れていた。
因みにリンさんはやりすぎたと周りの人に謝罪していた。
エステル殿下もリンさんを見習って欲しい。
「一刻も早く逢いたいという乙女心が、サトーにはわからないんだ」
「離れ離れになるわけでもないし、明日には逢えると思ってましたから」
「くぅー、サトーは冷静なんだから」
はあ、早く逢えたのは嬉しいけど、これじゃ中々落ち着けないな。
そう思っていたら、ララとリリとレイアが爆弾を投入してきた。
「お兄ちゃんが、お姉ちゃん達に会えなくて寂しいって言っていたよ」
「リリも聞いた。確かに言っていたよ」
「パパ、寂しがっていた」
「な、お前ら何でそれを」
ララ達が朝のミケとの会話を聞いていたのか、色々喋りだした。
「あ、僕も聞いたよ。ねえ、ミケちゃん」
「ミケがお姉ちゃんいなくて寂しいって言ったら、お兄ちゃんも寂しいって」
「あああっ」
更にドラコとミケも喋りだした。
周りを見渡すと、エステル殿下はニヤニヤが止まらないし、リンさんは顔を真っ赤にしている。
「サトーも、いっちょ前に寂しがるのじゃな」
「少しビックリしましたね」
ビアンカ殿下マリリさんは少しビックリしていた。
「なあに、サトーも寂しかったの?」
「ノーコメントで」
エステル殿下が酔っぱらいの様に、俺の肩に腕をかけながら絡んできた。
「何だったら、今晩一緒に寝てあげるわよ」
「「「「「だめー!」」」」」
エステル殿下がとんでもない事を言ってきたが、すかさず子ども達が割り込んできた。
手を広げてバリアみたいにしている。
「ちょっとした冗談だよ」
「違う、本気だった」
「うっ」
エステル殿下は冗談と言ってきたが、レイアがぼそっとつぶやき本気だと見抜いてたじろいている。
てか、本当に本気だったのかよ。
「急いで帰ってきたんですから、今日はゆっくり休んでください」
「うー、分かったよ」
俺にも言われて、エステル殿下は渋々といった感じで諦めた。
「ぎゅー」
「あの、みなさん。何しているの?」
「バリア」
寝るときも子ども達がくっついてきている。
バリアってなんですかって思っていたら、いきなりドアが開いた。
「「あっ」」
「本当に入ってくるとは」
そこに現れたのは、寝巻きに着替えたエステル殿下とリンさんだった。
まさか本当に入ってくるとは。
「お二人とも、流石に一緒に寝るのは無理ですよ」
「だから言ったじゃないですか、無理ですって」
「あははは、お邪魔しました」
リンさんはどうもエステル殿下を止めていたらしい。
エステル殿下は子ども達に睨まれていたのもあって、スゴスゴと退散して行った。
はあ、暫くこういう攻防が続くのは勘弁してほしい。
「ミケ、どうした?」
「リンお姉ちゃんとエステルお姉ちゃんって、いつ帰ってくるの?」
「うーん、早くて明日かな。この前バスク領に行ったときも、往復だけで二日かかったでしょ」
「そっか、寂しいな」
朝、珍しく早く起きたミケからリンさんとエステル殿下の事を聞かれた。
この間のバスク領の時も含めて二人とはずっと一緒だったから、ミケはちょっと寂しいみたいだ。
「お兄ちゃんは、お姉ちゃん達に会えなくて寂しい?」
「そうだね、いつも会っていた人がいないのは寂しいな」
いつも明るい二人だから、その二人がいないのは俺も少しさみしい気がする。
この時は気が付かなかったけど、俺とミケの話を他の四人がこっそり聞いていた事でこの後小さな騒動になる。
「「行ってきます!」」
「行ってらっしゃい」
スラムの炊き出しに向うミケとドラコを送り出し、俺も仕事を始める。
昨日ケリーさんが持ってきた書類にララ達もチェックした人が加わり、かなり分厚い資料になっている。
「アルス王子、候補者の数が凄いことになっていますね」
「しかし、それだけ優秀な人が多いということだ。既に第一関門は突破していますし」
「あの子達の善悪を見分ける能力は、かなり特殊ですからね」
「実は父上にこの事を伝えたら、是非王都でも行いたいと言ってきた。闇ギルドの件が落ち着いたら、同じ事を王都でもやることになるだろうな」
「本当ですか、その話は」
「本当だ。何しろ善悪は知識や武芸と違って見抜くのが難しい。それを見抜くとなれば、国としても欲しい人材だ」
昨日の子ども達の件がかなり大きな話になってきたぞ。
あの子達は知り合いの頼み事はホイホイと受けちゃうから、たぶんやることになるんだろうな。
書類を申込内容で分けながら、そんな事を思っていた。
「その話なら妾も聞いたのじゃ。後、今王都にいる保護した子どもの中にも似たような事ができるのがおってな、その子らも一緒にということらしいぞ」
「王城内部の人員のチェックと人員募集のチェックの両方を行う。恐らくは人神教国と争いになるだろうから、その前に内部組織を固めるという」
かなり具体的な案が出てきたけど、この内容だと前々から考えていたらしいがどうやって見分けるかの方法がなかったのだろうな。
そこにこの子達が現れたので、一気に対応するというわけか。
よし、資料の仕分けが終わったぞ。
「ルキアさん。ケリーさんからもらった資料の仕分けが終わりました」
「ありがとうございます、サトー様」
「ざっと見た感じですが、特に怪しいのはいませんでしたよ」
「能力とかは面接して判断しますので。しかし仕事が早いですね」
「いえいえ、ただ仕分けただけですから」
今回は獣人が多めだったから兵士配置が多いけど、文官やメイドさんの候補者もいたからそれなりには収穫がありそうだ。
「失礼します。自治組織より追加の候補者の資料が届きました」
あ、追加の仕事がやってきた。
今度は文官とメイドさんが多そうだ。
「さっそく確認しますね」
「サトーは冒険者や指揮官だけでなく、文官もできるのじゃな」
「法衣貴族になったら、王城勤務は確定だろう」
「あはは、それはどうも」
ランドルフ伯爵領の後のことも決まりそうだが、今は目の前の書類に注力しよう。
昼食を食べて暫くしたら書類の分類も終わって、さっそく明日から面接が始まるらしい。
「面接官は誰がやるんですか?」
「メイドはケリーとマリリ、文官はルキアとサトー、兵士は私とビアンカだな。エステルとリンがいれば、担当割り振りできるのだがな」
「さらりと俺の名前が入っていましたね」
「当たり前だ。手が足りんのだ、使える手があればいくらでも使うぞ」
元執事のモルガンさんと元騎士団長のレオさんは、自治組織とお屋敷を行ったり来たりで忙しいので面接官はできないという。
俺らが頑張らないと、モルガンさんとレオさんの手があかないわけだ。
と、ここで想定外の人が姿をあらわした。
「ただいま」
「ただいま戻りました」
執務室にあらわれたのは、昨日朝早くバスク領へ向かったはずのエステル殿下とリンさんだ。
どう考えても帰ってくるのが早すぎる。
アルス王子とビアンカ殿下も、怪しげな顔を二人にむけていた。
と、そこに疲れた顔をしたオリガさんが入ってきた。更にその後には、バスク領にいるはずのガルフさんとマルクさんもいた。
取り敢えず、一番事情を知っていそうなオリガさんに色々聞いてみよう。
「オリガさん、だいぶやつれてますけど何かあったんですか?」
「それがエステル殿下とリン様が、サトー様に早く逢いたいと馬を速く走らせまして」
「それはなんというか、こちらこそ申し訳無いないです」
あの馬が暴走しないまでも速く走ったんだ。そりゃ早く着くな。
しかし二人はなんてことをしたんだよ。
「ラルフ様が事前に難民の代表と帰還について話をしていたので、何名かがこちらにくることはすんなりときまりました。後、手が足りなさそうだということで、ワース商会の件も落ち着いたのでガルフとマルクが同行することになりました」
「大体はわかりました。それよりもオリガさんは体調大丈夫ですか?」
「わたしは大丈夫なのですが同行した難民の方々がダウンしてまして、今はマリリが治療中となります」
オリガさんも限界そうで、よく見るとガルフさんとマルクさんも顔色が悪い。
ルキアさんの配慮で三人は、休んでもらうことに。
俺がオリガさんと話している間、エステル殿下とリンさんは正座しながらアルス王子とビアンカ殿下から色々言われていた。
流石に今回は二人の擁護はできないな。
「ぶー、せっかく逢えたのにサトーは助けてくれないし」
「当たり前です。周りの人に迷惑をかけているんですから」
夕食時、エステル殿下が説教されている時に助けてくれなかったと不貞腐れていた。
因みにリンさんはやりすぎたと周りの人に謝罪していた。
エステル殿下もリンさんを見習って欲しい。
「一刻も早く逢いたいという乙女心が、サトーにはわからないんだ」
「離れ離れになるわけでもないし、明日には逢えると思ってましたから」
「くぅー、サトーは冷静なんだから」
はあ、早く逢えたのは嬉しいけど、これじゃ中々落ち着けないな。
そう思っていたら、ララとリリとレイアが爆弾を投入してきた。
「お兄ちゃんが、お姉ちゃん達に会えなくて寂しいって言っていたよ」
「リリも聞いた。確かに言っていたよ」
「パパ、寂しがっていた」
「な、お前ら何でそれを」
ララ達が朝のミケとの会話を聞いていたのか、色々喋りだした。
「あ、僕も聞いたよ。ねえ、ミケちゃん」
「ミケがお姉ちゃんいなくて寂しいって言ったら、お兄ちゃんも寂しいって」
「あああっ」
更にドラコとミケも喋りだした。
周りを見渡すと、エステル殿下はニヤニヤが止まらないし、リンさんは顔を真っ赤にしている。
「サトーも、いっちょ前に寂しがるのじゃな」
「少しビックリしましたね」
ビアンカ殿下マリリさんは少しビックリしていた。
「なあに、サトーも寂しかったの?」
「ノーコメントで」
エステル殿下が酔っぱらいの様に、俺の肩に腕をかけながら絡んできた。
「何だったら、今晩一緒に寝てあげるわよ」
「「「「「だめー!」」」」」
エステル殿下がとんでもない事を言ってきたが、すかさず子ども達が割り込んできた。
手を広げてバリアみたいにしている。
「ちょっとした冗談だよ」
「違う、本気だった」
「うっ」
エステル殿下は冗談と言ってきたが、レイアがぼそっとつぶやき本気だと見抜いてたじろいている。
てか、本当に本気だったのかよ。
「急いで帰ってきたんですから、今日はゆっくり休んでください」
「うー、分かったよ」
俺にも言われて、エステル殿下は渋々といった感じで諦めた。
「ぎゅー」
「あの、みなさん。何しているの?」
「バリア」
寝るときも子ども達がくっついてきている。
バリアってなんですかって思っていたら、いきなりドアが開いた。
「「あっ」」
「本当に入ってくるとは」
そこに現れたのは、寝巻きに着替えたエステル殿下とリンさんだった。
まさか本当に入ってくるとは。
「お二人とも、流石に一緒に寝るのは無理ですよ」
「だから言ったじゃないですか、無理ですって」
「あははは、お邪魔しました」
リンさんはどうもエステル殿下を止めていたらしい。
エステル殿下は子ども達に睨まれていたのもあって、スゴスゴと退散して行った。
はあ、暫くこういう攻防が続くのは勘弁してほしい。