おとぎ話の中でシンデレラが王子様ともう一度出会えたのは彼女が落とした靴を王子様が街中の女の子にその靴を履かせてみたからだそう。
もしも、今の自分をシンデレラに例えるのならわたしは魔法が解けた、ただの女の子。
少し前までは特別な魔法にかけられて、自然と頬が緩んでしまうような幸せな日々を過ごしていたけれど、魔法が解けた今、また君と……なんてことは現実のわたしにはありえないから。
だって、君はおとぎ話に出てくる王子様みたいに街中の女の子にこれはあなたのですか?と聞いて靴を履かせないだろうし、そもそもわたしは靴なんて落としてはいない。
所詮は女の子の誰もが夢見るおとぎ話の世界の話。
現実世界とはまるで違う。
現実はそんなに甘くない。
わたしと君が再び交わる世界線はゼロに近い。
また魔法使いがわたしに魔法をかけてくれないかな、なんてそれも都合のいいこと。
でも、もし……もう一度わたしの前に魔法使いが現れたとしてもわたしではなく君に【幸せになる魔法】を全力でかけてもらうだろう。
それか、今度はわたしが魔法使いになろう。
君の恋を叶える、君の幸せを叶える、とびきりの魔法使いに。
たとえ、胸に抱えたこの想いが叶わなくたってそこに“君”という存在さえあればそれだけでいい。
それくらい、君には幸せでいて欲しい。
ずっとお日様のような優しい笑顔を浮かべていきていってほしい。
大切な誰かとかけがえのない未来を築いていってほしい。
どうか、どうか、君がこれからも笑って過ごせますように。
わたしのこの想いがもう二度と愛する君に届くことがなくてもわたしの想いはずっと、変わらない。
どれだけ長い年月が経ったとしてもわたしはたった一人、君だけを愛しているから。
だから、もう泣かないで。苦しまないで。
笑ってよ、最後にもう一度だけ。
どれだけ悲しい恋の行方でもそれが運命だと言うのならば、わたしは受け入れるよ。
わたしはどんなに時が経っても君との幸せに満ちた宝物のような日々を絶対に忘れないから。
たとえ、君が永遠にわたしのことを忘れても――。
(きっと、君に怒られるだろうけれど)