「そうだね、透雨ちゃん」



 ピタ、と晴さんが足を止めた。ともなって私の足も止まる。

 そうだね、という繋ぎの言葉はどこかチグハグだった。



「月、見える日にも会おうか」

「……え」

「雨の日だけじゃなくて、これからは会いたくなったら会おうよ」



 雨が降っている。パラパラ、パラパラ降っている。


 視線が絡み合って、数秒して、私たちは自然と顔を寄せた。


 雨の香りが鼻腔をつく。



「あの。よかったら永く(・・)、付き合ってもらえませんか」












 人を好きになって、結ばれて。

 そうすると、今まで感じていたドキドキやトキメキが、いつしか当たり前のものとなってしまう。



 そんなふうに、恋愛は慣れていくものなのだろうか。







 いいや、違う。

 慣れじゃない。私はずっと、ドキドキしている。


 今までも、これからも、変わらず。




 恋が愛に変わって、今より落ち着いたとしても、日常のどこかにときめきはころがっているはずで。



 同じ傘に入って、空を眺めて、名前に雨が二つあるねって笑い合って。



 そんな幸せを積み重ねていきたい。










 雨の日、という限定がなくなった待ち合わせは、余計に互いの気まぐれ。



 会いたくなったから、会いにいく。










────ただ、それだけでいいと思うのだ。













気まぐれランデブー

end.