カンパネルラと話した後はブルカニロさんから仕事の説明を受けた。カンパネルラは前に1人で調査した死者の死因が無事に見つかったのでその書類整理だ。
勤務時間や勤務日はまばらで、死因がわからない死者が現れると本格的に仕事が始まるらしい。
死者が来れば、相棒と面談をしたり現世(生きている人の世界)に調査しに行ったりなどをして、それ以外の日は職場に来ても来なくてもいいようでとずいぶん緩い。死因調査員には死者が見える人間しかなれないと聞いていたから忙しいと勝手に思っていたけれど、死因がわからない死者が現れることの方が少ないんだそうだ。ただ、今年は例年に比べて多いらしく忙しい日が続いているらしい。
次に現世に調査しにいく時についての説明をうけた。驚くことにミヤザワさんからもらった制服を着て現世に行くと普通の人には姿が見えなくなるという。着たら姿が見えなくなるなんて悪用されてしまったら怖いけれど、制服が選んだ人間、つまり《名前》に相応しい人間にしか着ることができないらしい。私は今着ている制服を見下ろす。ちゃんと選ばれていることにほっとした。
「と、まぁ仕事に関してはこんな感じでしょうか。他に何か質問はありますか?」
私は首を横に振る。
ブルカニロさんはバインダーのようなものをペラペラとめくった。
「では、次に通勤方法についてお話しします。ジョバンニさんは、よだか駅という駅をご存知ですか?」
「よだか駅...ですか?あの、心霊スポットの....」
よだか駅は私の住む街の郊外にある廃駅のことで、大正時代に造られ、近くに大きな駅ができたことで昭和初期に廃駅になったという歴史がある。最近になって近所の住民からの誰もいないはずの駅舎に灯りが灯っている、人影が見えるという話を受けて何度か取り壊そうとしたらしいけれど、原因不明の重機の故障が起こって中止になり、ならば文化財として保護しようとしとしてもまたもや原因不明の機器の故障で断念したりと心霊スポットとして有名になりつつある。
「実はそこは現世と銀河ステーションをつなぐ改札のような役割をしているんです。そこから出ている汽車に乗ってこの銀河ステーションに通勤してください。退勤時も同じです。最初のうちはカンパネルラ君と一緒に通勤してもらいますから、ゆっくり慣れていってください」
あの駅にそんな役割があったんだ。心霊スポットだと噂されていた割には幽霊が全く視えなかったから変だなと思っていたけれど。
「わかりました」
一通りの話を聞き終えてこれからの仕事に緊張しながら私は頷く。自分でも顔がこわばるのがわかった。
「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。気負いすぎずに仕事していきましょうね」
そんな私とは正反対の優しい笑顔でブルカニロさんが笑いかけてくれる。
ブルカニロさんの優しさで少しだけ緊張が和らいだ気がした。
すると、どこからか音楽が聞こえきた。
「おや、もうそんな時間ですか。他の死因調査員の紹介も済ませたかったのですが.....」
「ブルカニロさん、この音楽はなんですか?」
せっせと片付けを始めるブルカニロさんに私は尋ねる。
「ああ、まだその説明をしていませんでしたね。この音楽は終業時間を知らせるチャイムです。そして今日の銀河鉄道の最終便が発車する合図でもあるんですよ」
「へぇー!そうなんですね。すごく素敵な音楽で癒されます」
「この曲は星めぐりの歌といって、死者が星になったときに毎晩この曲を聴きながら光り輝くんです。星を統括している、双子のチュンセさんとポウセさんが竪琴を弾いてこの歌を歌いながら星たちの見回りに行くんですよ」
「ここにもいろんなお仕事があるんですね」
「ええ。この銀河ステーションの外もいつか案内しましょう」
「本当ですか!嬉しいです、楽しみにしていますね!」
ブルカニロさんの片付けの手伝いが終わる頃、コンコンと談話室の扉がノックされた
ブルカニロさんが返事をするとカンパネルラが部屋に入ってきた
「お疲れ様です、ブルカニロさん」
「お疲れ様です、カンパネルラ君。ではあとはカンパネルラ君にお任せしましょう。ジョバンニさんもお疲れ様でした」
「いろいろ説明してくださりありがとうございました。改めて、これからよろしくお願いします」
私はお辞儀をしてそう言った。ブルカニロさんがふふっと笑う。
「本当に礼儀正しい方ですね。こちらこそよろしくお願いします。では二人とも、また会いましょう」
ブルカニロさんは私たちに笑いかけるとドアノブに手をかける。すると、もう一度振り返り私の方へ向き直った
「そうそう。今度のデート、私も楽しみにしていますよ」
勤務時間や勤務日はまばらで、死因がわからない死者が現れると本格的に仕事が始まるらしい。
死者が来れば、相棒と面談をしたり現世(生きている人の世界)に調査しに行ったりなどをして、それ以外の日は職場に来ても来なくてもいいようでとずいぶん緩い。死因調査員には死者が見える人間しかなれないと聞いていたから忙しいと勝手に思っていたけれど、死因がわからない死者が現れることの方が少ないんだそうだ。ただ、今年は例年に比べて多いらしく忙しい日が続いているらしい。
次に現世に調査しにいく時についての説明をうけた。驚くことにミヤザワさんからもらった制服を着て現世に行くと普通の人には姿が見えなくなるという。着たら姿が見えなくなるなんて悪用されてしまったら怖いけれど、制服が選んだ人間、つまり《名前》に相応しい人間にしか着ることができないらしい。私は今着ている制服を見下ろす。ちゃんと選ばれていることにほっとした。
「と、まぁ仕事に関してはこんな感じでしょうか。他に何か質問はありますか?」
私は首を横に振る。
ブルカニロさんはバインダーのようなものをペラペラとめくった。
「では、次に通勤方法についてお話しします。ジョバンニさんは、よだか駅という駅をご存知ですか?」
「よだか駅...ですか?あの、心霊スポットの....」
よだか駅は私の住む街の郊外にある廃駅のことで、大正時代に造られ、近くに大きな駅ができたことで昭和初期に廃駅になったという歴史がある。最近になって近所の住民からの誰もいないはずの駅舎に灯りが灯っている、人影が見えるという話を受けて何度か取り壊そうとしたらしいけれど、原因不明の重機の故障が起こって中止になり、ならば文化財として保護しようとしとしてもまたもや原因不明の機器の故障で断念したりと心霊スポットとして有名になりつつある。
「実はそこは現世と銀河ステーションをつなぐ改札のような役割をしているんです。そこから出ている汽車に乗ってこの銀河ステーションに通勤してください。退勤時も同じです。最初のうちはカンパネルラ君と一緒に通勤してもらいますから、ゆっくり慣れていってください」
あの駅にそんな役割があったんだ。心霊スポットだと噂されていた割には幽霊が全く視えなかったから変だなと思っていたけれど。
「わかりました」
一通りの話を聞き終えてこれからの仕事に緊張しながら私は頷く。自分でも顔がこわばるのがわかった。
「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。気負いすぎずに仕事していきましょうね」
そんな私とは正反対の優しい笑顔でブルカニロさんが笑いかけてくれる。
ブルカニロさんの優しさで少しだけ緊張が和らいだ気がした。
すると、どこからか音楽が聞こえきた。
「おや、もうそんな時間ですか。他の死因調査員の紹介も済ませたかったのですが.....」
「ブルカニロさん、この音楽はなんですか?」
せっせと片付けを始めるブルカニロさんに私は尋ねる。
「ああ、まだその説明をしていませんでしたね。この音楽は終業時間を知らせるチャイムです。そして今日の銀河鉄道の最終便が発車する合図でもあるんですよ」
「へぇー!そうなんですね。すごく素敵な音楽で癒されます」
「この曲は星めぐりの歌といって、死者が星になったときに毎晩この曲を聴きながら光り輝くんです。星を統括している、双子のチュンセさんとポウセさんが竪琴を弾いてこの歌を歌いながら星たちの見回りに行くんですよ」
「ここにもいろんなお仕事があるんですね」
「ええ。この銀河ステーションの外もいつか案内しましょう」
「本当ですか!嬉しいです、楽しみにしていますね!」
ブルカニロさんの片付けの手伝いが終わる頃、コンコンと談話室の扉がノックされた
ブルカニロさんが返事をするとカンパネルラが部屋に入ってきた
「お疲れ様です、ブルカニロさん」
「お疲れ様です、カンパネルラ君。ではあとはカンパネルラ君にお任せしましょう。ジョバンニさんもお疲れ様でした」
「いろいろ説明してくださりありがとうございました。改めて、これからよろしくお願いします」
私はお辞儀をしてそう言った。ブルカニロさんがふふっと笑う。
「本当に礼儀正しい方ですね。こちらこそよろしくお願いします。では二人とも、また会いましょう」
ブルカニロさんは私たちに笑いかけるとドアノブに手をかける。すると、もう一度振り返り私の方へ向き直った
「そうそう。今度のデート、私も楽しみにしていますよ」