学校が終わり私が向かう場所は病院だ。
病気がちのお母さんが入院しており私は毎日欠かさずお見舞いに向かう。差し入れはいつもお母さんが大好きな瓶牛乳。
お店によってから行かないとな
そんなことを考えながら校門を目指すと、桜の木の下にいるクラスメイトの姿が目に入った。
夜市くんを中心にみんな楽しそうにおしゃべりしている。
私はそれを横目に急いで学校を後にした。
夜市くんと私は小さい頃から仲が良かった。お互いの父親同士が仲良くしていたため、私はよく夜市くんの家に遊びに行っていた。星の図鑑を眺めたり、おもちゃの汽車で遊んだりしていた。中学も同じところを受験しようねと言って、勉強も一緒にしたりしていた。しかし、小学6年生の時にお母さんが入院することになり、お父さんも海外転勤で私は親戚の家に行ったため受験できず、せめて高校は天河学園に行きたいと思って受験して合格したが、前のように夜市くんに話しかけるには時間が経ち過ぎてしまって勇気が出なかった。
また前みたいにたくさん話がしたいな
そう思いながらお母さんお気に入りの牛乳屋で瓶牛乳を買って、病院に向かった。
「ただいま、お母さん。具合はどう?」
個室のドアを開けてお母さんにそう言う。カーディガンを羽織ったお母さんはベッドから上体を起こしていた。
「おかえり、帆奈。今日は涼しかったからずっと具合が良かったよ。」
私はベット脇の椅子に腰掛けて牛乳を冷蔵庫にしまう。
「今日はお砂糖も買ってきたんだ。牛乳に入れてあげようと思って。」
「ありがとう。あとで飲むね。」
「お母さん、お姉ちゃん来た?」
「来たよ。洗濯物とか色々持っていってくれたみたい。あと、トマトのスープを作ったから今日はそれを食べてだって。今日は帰れないって。」
「うん、さっきLINEきてた。ねえ、お母さん。お父さん、そろそろ帰ってくるかもね。」
「そうだね。でも、どうして?」
「今日、ニュースでお父さんの会社の事業が成功して、海外に行ってた社員を日本に呼ぶんだって。」
「そうなのね。じゃあきっと帰ってくるわね。そういえば、今日は七夕祭りね。」
「そうだね。灯籠流しだけでも見にいこうかな。」
「そうしたら?綺麗だもんね、あの灯り。流風くんと一緒にいくの?」
「うん、多分一緒かな....」
「そう、気をつけてね。」
私はお母さんにまたねと手を振ると家に帰った。
自分の部屋に入ると私は着替えて、キッチンに向かう。早めの夜ご飯を食べて、しばらくテレビを見てから灯籠流しに行くことにした。
家を出てからしばらくして、前からクラスメイト達が近づいてきた。
あ、夜市くんだ
ちょうどそう思った時、夜市くんと目が合った。
夜市くんはにこっと笑って手を振ってくれる。
私も振り返そうとした時
「夜市!行こうぜー!」
そう言ってクラスの男子達が夜市くんのことを呼んだ。
私は振り返そうとした手を握りしめて、グループの脇を走って通り過ぎる。夜市くんに呼び止められた気がしたけれど、そのまま走り続けた。
気がつくと、人気のない林のひらけた場所にいた。
走ったせいかすごく体がだるい。私は草むらに寝転んで空を見上げた。
郊外にくればこんなに星がきれいに見えるんだな
そんなことを思いながら私は目を閉じた。
夜市くんに手振り返せなかった。クラスで孤立してから、自信がなくなっちゃったな。こんなことになるなら高校、違うとこにすればよかった。いくら特待で入れたってクラスで孤立するよりは良かったのかも。でも、私はきっとどこに行ったって同じか。
気がつくと月がさっきより沈んでいた。いつの間にか寝てしまっていたらしい。
そろそろ帰らなきゃ
そう思って身を起こすと
——銀河ステーション 銀河ステーション——
どこからかそんな声が聞こえてきた。
その直後、強い風が吹いて私は思わず目を瞑ってしまった。
次に目を開けたとき、私は見知らぬ夜の駅のホームに立っていた。
ここ、どこ?
キョロキョロと周りを見渡しても私以外の人は見当たらない。
空を見上げると今にも降り出しそうなほどに輝く星がある。
林で見たものと比べ物にならないくらい綺麗な星だ。
私は駅を歩いてまわることにした。
ホームは古く、木造でそんなに広くない。
線路はなくて駅の周りには水が満ち、綺麗な星々を水面に映し出している。
看板には銀河ステーションと書いてあった。
銀河ステーション?そういえば、林でそんな声を聞いたような.....
「おや?珍しいな。生きた人間がここにくるなんて」
いきなりそう話しかけられて私は思わず声を出して驚いてしまった。恐る恐る振り返ると、黒い帽子に黒い外套を纏った小学生くらいの女の子が立っていた。
病気がちのお母さんが入院しており私は毎日欠かさずお見舞いに向かう。差し入れはいつもお母さんが大好きな瓶牛乳。
お店によってから行かないとな
そんなことを考えながら校門を目指すと、桜の木の下にいるクラスメイトの姿が目に入った。
夜市くんを中心にみんな楽しそうにおしゃべりしている。
私はそれを横目に急いで学校を後にした。
夜市くんと私は小さい頃から仲が良かった。お互いの父親同士が仲良くしていたため、私はよく夜市くんの家に遊びに行っていた。星の図鑑を眺めたり、おもちゃの汽車で遊んだりしていた。中学も同じところを受験しようねと言って、勉強も一緒にしたりしていた。しかし、小学6年生の時にお母さんが入院することになり、お父さんも海外転勤で私は親戚の家に行ったため受験できず、せめて高校は天河学園に行きたいと思って受験して合格したが、前のように夜市くんに話しかけるには時間が経ち過ぎてしまって勇気が出なかった。
また前みたいにたくさん話がしたいな
そう思いながらお母さんお気に入りの牛乳屋で瓶牛乳を買って、病院に向かった。
「ただいま、お母さん。具合はどう?」
個室のドアを開けてお母さんにそう言う。カーディガンを羽織ったお母さんはベッドから上体を起こしていた。
「おかえり、帆奈。今日は涼しかったからずっと具合が良かったよ。」
私はベット脇の椅子に腰掛けて牛乳を冷蔵庫にしまう。
「今日はお砂糖も買ってきたんだ。牛乳に入れてあげようと思って。」
「ありがとう。あとで飲むね。」
「お母さん、お姉ちゃん来た?」
「来たよ。洗濯物とか色々持っていってくれたみたい。あと、トマトのスープを作ったから今日はそれを食べてだって。今日は帰れないって。」
「うん、さっきLINEきてた。ねえ、お母さん。お父さん、そろそろ帰ってくるかもね。」
「そうだね。でも、どうして?」
「今日、ニュースでお父さんの会社の事業が成功して、海外に行ってた社員を日本に呼ぶんだって。」
「そうなのね。じゃあきっと帰ってくるわね。そういえば、今日は七夕祭りね。」
「そうだね。灯籠流しだけでも見にいこうかな。」
「そうしたら?綺麗だもんね、あの灯り。流風くんと一緒にいくの?」
「うん、多分一緒かな....」
「そう、気をつけてね。」
私はお母さんにまたねと手を振ると家に帰った。
自分の部屋に入ると私は着替えて、キッチンに向かう。早めの夜ご飯を食べて、しばらくテレビを見てから灯籠流しに行くことにした。
家を出てからしばらくして、前からクラスメイト達が近づいてきた。
あ、夜市くんだ
ちょうどそう思った時、夜市くんと目が合った。
夜市くんはにこっと笑って手を振ってくれる。
私も振り返そうとした時
「夜市!行こうぜー!」
そう言ってクラスの男子達が夜市くんのことを呼んだ。
私は振り返そうとした手を握りしめて、グループの脇を走って通り過ぎる。夜市くんに呼び止められた気がしたけれど、そのまま走り続けた。
気がつくと、人気のない林のひらけた場所にいた。
走ったせいかすごく体がだるい。私は草むらに寝転んで空を見上げた。
郊外にくればこんなに星がきれいに見えるんだな
そんなことを思いながら私は目を閉じた。
夜市くんに手振り返せなかった。クラスで孤立してから、自信がなくなっちゃったな。こんなことになるなら高校、違うとこにすればよかった。いくら特待で入れたってクラスで孤立するよりは良かったのかも。でも、私はきっとどこに行ったって同じか。
気がつくと月がさっきより沈んでいた。いつの間にか寝てしまっていたらしい。
そろそろ帰らなきゃ
そう思って身を起こすと
——銀河ステーション 銀河ステーション——
どこからかそんな声が聞こえてきた。
その直後、強い風が吹いて私は思わず目を瞑ってしまった。
次に目を開けたとき、私は見知らぬ夜の駅のホームに立っていた。
ここ、どこ?
キョロキョロと周りを見渡しても私以外の人は見当たらない。
空を見上げると今にも降り出しそうなほどに輝く星がある。
林で見たものと比べ物にならないくらい綺麗な星だ。
私は駅を歩いてまわることにした。
ホームは古く、木造でそんなに広くない。
線路はなくて駅の周りには水が満ち、綺麗な星々を水面に映し出している。
看板には銀河ステーションと書いてあった。
銀河ステーション?そういえば、林でそんな声を聞いたような.....
「おや?珍しいな。生きた人間がここにくるなんて」
いきなりそう話しかけられて私は思わず声を出して驚いてしまった。恐る恐る振り返ると、黒い帽子に黒い外套を纏った小学生くらいの女の子が立っていた。