その後、今日は新島さんがこの世界に来て間もないということですぐにお開きになった。新島さんも同行しての本格的な調査は明日から行うらしい。少し俯きがちに談話室から出ていく新島さんを見送ると私たちは情報を整理し始めた。

「ねえ、カンパネルラ。自分の死因がわからないってことがどうして起こるの?」

私がそう聞くとカンパネルラは

「そっか、まだその説明をしてなかったね」

と言って紙に図を書きながら説明してくれた。

「まず、人が亡くなるとその人の元へ汽車が迎えに来るんだ。その汽車の中で自分の人生全ての出来事が書かれた本を読みながら銀河ステーションへと向かうんだけど…」

かわいいキャラクター調の絵のおかげで説明が頭にスッと入ってくる。まるで絵本の読み聞かせを聴いているかのようでとても心地いい。

カンパネルラってこんなかわいい絵が描けるんだ

そんなことを思いながら私は続きに耳を傾けた。

「稀にその本が最後まで書かれていない人が現れることがあるんだ。そんな人たちは決まって亡くなった時間の少し前あたりからの記述が空白になっていてね。人は死ぬ時一度全ての記憶を忘れて、この本を読むうちに記憶を取り戻すんだけど空白のままだと思い出せないでしょ?だから、死因が分からないってことが起こるんだよ」

そう説明し終えるとカンパネルラはたくさんの書類が入ったファイルを持ってきた。
そこには様々な人物の写真と人生や死因解明の過程が事細かに書かれている。

「ただ、死因がわからない人は死者として不完全なんだ。だから、普通の人は本を読まないと自力で記憶を取り戻すことはできないけど、死因がわからない人はきっかけがあれば自力で思い出すことができる。僕たちの仕事はそのきっかけを探して死因を思い出す手伝いをすることだよ」

私はカンパネルラの話をメモしながら、書類に目を落とす。綺麗な字で些細なことも漏らさず書いてある書類から、カンパネルラの仕事の丁寧さが伝わってきた。

カンパネルラと同じくらい、私も相棒として頑張らなきゃ

改めて気合いが入る。
私はそう決意すると明日からの仕事に想いを馳せた。