「切符拝見します」
その言葉と共に号車間の扉が開けられ、車掌さんが入ってくる。
私と流風は事務員証を差し出した。
「おや、これはこれは。三次空間の方ですね。この事務員証は天井も、それ以上でもどこまでもいける切符ですから、決して失くされないように。お仕事お疲れさまでした」
車掌さんはそう言いながら社員証に刻印をつけると、次の人の元へ進んだ。
「ねぇ、三次空間ってなに?」
「うーん。生きた人間が住む世界.....みたいな意味かな?僕らは生きた人間だから他の人と社員証が違うんだ」
そんな話をしながらしばらく揺られていると
——次は、よだか よだか——
と車内アナウンスが聞こえてきた。
「着くみたいだね。降りたら僕についてきて」
車窓からは見慣れた街の明かりが見えてくる。慣れ親しんだ街も上から見下ろすと知らない街のようにキラキラしている気がした。
だんだんと汽車が降下していき、よだか駅の線路に繋がった透明な線路の上を進むと、ゆっくりとホームに停車する。
私たちが汽車を降りてホームに立つと汽車は流れ星のようになって消えた。
「帆奈、こっちだよ」
「あ、うん!」
流風の声にハッとして私はすぐについていく。
よだか駅の中に入るのは初めてだなぁ。心霊スポットなんて言われてるくらいだし、荒れ放題だったらやだな。
少し怯えながら、駅舎の中に入ると想像と全く違う景色が広がっていた。
ろうそくの光が灯るランプが至る所に下がっており、木造なのも相まってとても温かな雰囲気を醸し出していた。荒れとは無縁の隅々まで掃除が行き届いた舎内は心霊スポットだなんて言われているのが信じられないくらい居心地の良さそうな空間だった。
「素敵な舎内だね!外観の雰囲気と全然違う」
「ここを担当しているヨダカさんはとっても綺麗好きだからね。内装もすごくこだわっているんだよ」
「そうなんだ……確かにすごく過ごしやすそうだもんね」
「うん。僕もここはすごくお気に入りで、仕事がない時もたまにここにきて過ごしたりするんだ……けど、あれ?」
キョロキョロと辺りを見渡しながら流風はそう言う。
「どうしたの?」
「いや、いつもならヨダカさんがいるんだけど見当たらなくて。帆奈が新しく働くことになったから報告して挨拶しようと思ったんだけど、ちょっと時間遅くなっちゃったし帰ったのかな」
「時間……?そうだ、時間!」
私はすっかり忘れていたことを思い出す。
今何時だろう?草むらにいた時の時点で時間遅かったし、今真夜中なんじゃ?
「どうしよう。すごい時間経っちゃってるよね……」
存在を忘れていたスマホを取り出して時間を確認しようとすると
「ああ、安心して帆奈。多分こっちではそんなに時間経ってないはずだよ」
と流風が言った。疑問に思いながらもスマホの時間を確認すると、本当に20分くらいしか経っていなかった。
「本当だ。え、なんで?」
「三次空間と、銀河ステーションの世界の時間の流れ方は違うみたいなんだ。銀河ステーションで1日泊まったとしても、三次元空間だと2時間半くらいしか経ってないんだよ。最初は慣れないと思うけどね」
「へえ!ほんとに不思議な世界なんだね」
「僕も最初は戸惑ったよ。これに関しては慣れるしかないね」
そう言われ、私は早めに慣れたいなと思った。
家に帰る前に流風と連絡先の交換をする。初めて、家族以外の人が追加されて思わず笑顔になった。
「じゃあ、仕事ができた時は僕から連絡するよ。ヨダカさんたちに紹介するのはまた今度にしよう」
「うん!ほんとに今日はありがとう。えっと………また、明日!」
久しぶりに言うその言葉に少し緊張する。流風は優しく笑った。
「また明日、帆奈」
その言葉と共に号車間の扉が開けられ、車掌さんが入ってくる。
私と流風は事務員証を差し出した。
「おや、これはこれは。三次空間の方ですね。この事務員証は天井も、それ以上でもどこまでもいける切符ですから、決して失くされないように。お仕事お疲れさまでした」
車掌さんはそう言いながら社員証に刻印をつけると、次の人の元へ進んだ。
「ねぇ、三次空間ってなに?」
「うーん。生きた人間が住む世界.....みたいな意味かな?僕らは生きた人間だから他の人と社員証が違うんだ」
そんな話をしながらしばらく揺られていると
——次は、よだか よだか——
と車内アナウンスが聞こえてきた。
「着くみたいだね。降りたら僕についてきて」
車窓からは見慣れた街の明かりが見えてくる。慣れ親しんだ街も上から見下ろすと知らない街のようにキラキラしている気がした。
だんだんと汽車が降下していき、よだか駅の線路に繋がった透明な線路の上を進むと、ゆっくりとホームに停車する。
私たちが汽車を降りてホームに立つと汽車は流れ星のようになって消えた。
「帆奈、こっちだよ」
「あ、うん!」
流風の声にハッとして私はすぐについていく。
よだか駅の中に入るのは初めてだなぁ。心霊スポットなんて言われてるくらいだし、荒れ放題だったらやだな。
少し怯えながら、駅舎の中に入ると想像と全く違う景色が広がっていた。
ろうそくの光が灯るランプが至る所に下がっており、木造なのも相まってとても温かな雰囲気を醸し出していた。荒れとは無縁の隅々まで掃除が行き届いた舎内は心霊スポットだなんて言われているのが信じられないくらい居心地の良さそうな空間だった。
「素敵な舎内だね!外観の雰囲気と全然違う」
「ここを担当しているヨダカさんはとっても綺麗好きだからね。内装もすごくこだわっているんだよ」
「そうなんだ……確かにすごく過ごしやすそうだもんね」
「うん。僕もここはすごくお気に入りで、仕事がない時もたまにここにきて過ごしたりするんだ……けど、あれ?」
キョロキョロと辺りを見渡しながら流風はそう言う。
「どうしたの?」
「いや、いつもならヨダカさんがいるんだけど見当たらなくて。帆奈が新しく働くことになったから報告して挨拶しようと思ったんだけど、ちょっと時間遅くなっちゃったし帰ったのかな」
「時間……?そうだ、時間!」
私はすっかり忘れていたことを思い出す。
今何時だろう?草むらにいた時の時点で時間遅かったし、今真夜中なんじゃ?
「どうしよう。すごい時間経っちゃってるよね……」
存在を忘れていたスマホを取り出して時間を確認しようとすると
「ああ、安心して帆奈。多分こっちではそんなに時間経ってないはずだよ」
と流風が言った。疑問に思いながらもスマホの時間を確認すると、本当に20分くらいしか経っていなかった。
「本当だ。え、なんで?」
「三次空間と、銀河ステーションの世界の時間の流れ方は違うみたいなんだ。銀河ステーションで1日泊まったとしても、三次元空間だと2時間半くらいしか経ってないんだよ。最初は慣れないと思うけどね」
「へえ!ほんとに不思議な世界なんだね」
「僕も最初は戸惑ったよ。これに関しては慣れるしかないね」
そう言われ、私は早めに慣れたいなと思った。
家に帰る前に流風と連絡先の交換をする。初めて、家族以外の人が追加されて思わず笑顔になった。
「じゃあ、仕事ができた時は僕から連絡するよ。ヨダカさんたちに紹介するのはまた今度にしよう」
「うん!ほんとに今日はありがとう。えっと………また、明日!」
久しぶりに言うその言葉に少し緊張する。流風は優しく笑った。
「また明日、帆奈」