私は恋がよくわからなかった。

昨日までは好きだと思っていたのに、些細なことがチクチクと胸に刺さって次の日にはもう無理だと嫌になってしまう。


少女漫画のヒーローは、みんなかっこよくて一途でヒロインにだけ優しくて困った時に必ず助けに来てくれてずっと大切にしてくれる。そんな人たちばかりだ。

そんなヒーローに嫌いな人なんて誰一人いなかった。


私は少女漫画を読みすぎてしまったせいで、理想が高く、求めるものが深くなってしまったのかもしれない。

何気ない日常だけじゃ物足りなくなっていたのかもしれない。


世界中でこの人だけがいればいい、これが最初で最後の恋でいい、そんな風に想えるたった一人の男の子に出会いたかった。
少女漫画や恋愛映画みたいな恋をしてみたかった。

理想なんて全部壊してくれる、そんな恋が私はできなかった。


私の高校生活は良く言えば“普通”、悪く言えば“つまらない”だった。


私は気づいてしまったんだ。もっと毎日に夢中になれるほどの刺激が欲しかったのだと。


両親の転勤でなぜかイケメンと2人暮らしになる、転校生の席が隣になる、アイドルと秘密の恋をしてしまう、子どもの頃に結婚の約束をした男の子と高校で運命の再会、好きな人と義理の兄妹になる、学校の王子様に気に入られる、俺様系男子にいきなりキスをされる…などなど。

一度は見たことのあるそのシチュエーションについつい自分を重ねてしまう。