燐と輝く瞳、凛と響く声――それが何よりの答えだった。陽織の気持ちに対する、日向の答え。
 そこには、迷いも惑いもなかった。ただ一つ在るは、日向の奥底の誓い。日愛を助けるという純粋なる想いだけ。

 ――本当に、よくここまで。

 陽織は溢れそうになる涙を我慢し、自身の内だけで呟いた。
 もう、言葉は不要だった。何かを話せば、それは日向の心を邪魔することになる。
 ただただ自分は日向と共に。今度こそ、絶対に離れず――


「――お待たせしました」
「…………」

 障子を開き謝す日向に、廊下で待っていた灯澄と燈燕は刹那に声が出せず、その姿を見入った。

(――まるで、瓜二つ)

 そう、思わずにはいられない。今までも似ているとは思っていたが、まさかこれほどとは。
 あの時と同じ装束。我らが出会ったあの時と、日愛を救ったあの時と――
 蘇ったのかと思ってしまう。今までの全てが幻で、あの時の現実が、初めて会ったあの時が再び戻ったのではないかと思う。

(――どうか)

 妖において霊という信仰はない。だけれど、知らず灯澄と燈燕は心で願ってしまっていた。
 どうか、母が見守ってくれますように――
 日向の母と、そして、日愛の母。その二人に願い、そして、同時に誓う。

「さあ、行くぞ」
「はい」

 日向は頷き、そして、声を発した。

「救って見せます、必ず」

 蒼紅の二人の誓いを日向が言霊として顕し、四人は歩を進めだした。
 神域の場へ、幼き天狗の子が眠る神木へと。