「…………」
驚くほど変わっていない日向の家。その玄関を目にし、日咲はゆっくりと歩き出した。
引き戸の玄関に手をかける。治まらない激しい鼓動が、更に早くなる。白い肌が紅くなり、手に汗が落ちる中、ゆっくりと指に力を入れた。
お願い、と心で祈る――だけれど、少女の願いは届かず、指に力を入れた戸は開くことがなかった。
玄関はしまっていた。
「――っ!」
急いで庭に回り、縁側のある場所へと移動する。
誰か居て、誰か居て、と心で叫ぶが、縁側の戸は閉まり、中に見える障子も閉じられていた。人気のない寂しさと静けさを漂わせ、周りの家から微かに聞こえる朝の音だけが暖かな人の温もりを届けていた。
「ひなちゃん……」
冷たくなる身体と心。
日咲は人形の糸が切れたように力が抜け落ち、その場へと座り込んだ。
一つ、二つと雫がこぼれ、膝に落ちていく。
「ひなちゃん…………っ!」
うずくまった。うずくまり――日咲は涙を流しつづけた。何も考えられなかった。泣き続ける以外にできない。
「――――――っっ!!」
声を上げることすらできず、身体を震わせ日咲は泣いた。泣き続けた。
陽が昇り日向の暖かさが差し込んでも、顔を上げず陽に背を向け地にうずくまり――そして、泣いた。
ただ一人、ずっとずっと――