「命に関わることとなる。それでもよいか」

 こちらが願ったことにも関わらず、そう問うてしまっていた。日向の意志を疑ったわけではない。だが、流されないようにしていた情が口を開かせてしまっていた。
 日向は顔を上げ、今一度灯澄へと視線を向けた。迷い無く、真っ直ぐに。

「死にはしません。その上で、必ず成してみせます。お二人の子を助けるために」

 灯澄は日向の瞳を受ける――これ以上のことは不要だった。これ以上は、日向の信を疑い、汚すことになる。

「礼をいう。ありがとう」

 蒼紅の二人は、自然と頭を下げていた。

「……日向」

 陽織は小さく呟き――そして、知らず涙していた。それが日向の成長を感じての嬉し涙か、または愛しい子が戦いに挑む苦しく悲しい涙かは分からない。だが、雫をこぼし涙した。

 ――出立は明日早朝。
 話の終わりに告げられた言葉に、日向は静かに頷いた。
 灯澄も、燈燕も、そして、母である陽織も今だ自分に全てを話していないことは感じていた。全てのことを知ってはいない自分自身。戦ったあと、どうなるか。知ったあと、どうなるか。
 だけれど、今のこの瞬間が自分にとっての全てが決まった時だということは感じていた。自分の未来、自分の進むべき道が決まった、いや、自ら望み決めた瞬間だと。

 ――ごめんなさい。

 心の中で謝る。相談することができなくて、きちんと話することができなくて――そして、別れをいえなくて。
 日向は日咲に謝り――約束した。また会えると約束し、心で願う。
 気持ちが届くことを信じ、きっと伝わると想い祈って――