「お前の一族が何故そんな力を持っているか。それは、我らには分からぬ。だが、確かなことは人とは違うその力ゆえ、お前の一族は特別な役割を担わなければならなくなったということだ。同じく人とは違う場に在る者――妖を伏し降す役目を」
「妖……」
「妖怪やモノの怪、魑魅魍魎とも呼ばれる。伝承や御伽話にもでてくるものだ。知ってはおろう」
「はい」
普通の者なら信じられるはずもない突飛な話だったろうが、日向は真っ直ぐに受け入れ頷いた。否定も疑いもない。余程の器でなければこうはいかない……または、言い方は悪いが余程の馬鹿でなければ。
とはいえ、日向自身も人とは異なる力を自覚している。それを考えれば、日向にしてみればそれほど突飛な話でもなかったのかもしれない。逆に有り難くもあった。こちらの本来の姿を明かしても大丈夫だということを知って。
「付け加えれば、人の姿はしているが我らも妖の仲間だ。私の元の姿は付喪神、そして、こやつは火魂となる。いずれ、本来の姿を見せる時もあるだろうが、今はそれだけを知っておけばいい」
「分かりました」
日向はまた素直に頷いた。あえて聞くことはしないが……もしかしたら灯澄と燈燕が人とは違う気配を纏っていることを日向は気付いていたのかもしれない。これだけ聡い子であれば、感じていたとしても不思議ではなかった。
理解が早いことに感謝しつつ――そして、少しの迷いも含みながら灯澄は話を続けた。全てを話すのは日向が自らの行く末を選んでからとは思ったことだが、話を聞かずとも日向はすでに理解し覚悟を決めているのではないのか――