城守日向と城守日咲。同じ苗字に似た名前。双子だと思われがちだが、実はそうではなかった。前述のように出会ったのは十年前、遠い親戚であった日向とその母親が縁を頼って田舎からこちらへと来たのが始まりだった。
城守家は多くの山や土地を所有し、学園をも運営する富豪の家だった。幼き日よりしっかりとした教育を受けお嬢様として育てられた日咲と、自然に咲く花のように純粋でありのままに生きてきた日向。
まるで違う境遇の中でそれぞれの生き方をしてきた二人だったが、何故か出会ってすぐにとけこみ、親友といえるほどまでに仲が良くなった。いや、逆に相反する境遇だったからこそ、これほど仲良くなれたのかもしれない。
そうして、二人は周囲から姉妹と間違われるほど常に一緒に過ごし、共に生きていくようになる。
性格が似ているということもあっただろう。どちらも大人しい性格ではあった。ただし、同じ大人しい性格でもその種類は違った。
日咲は清楚で知的、何事も冷静に把握し考え、控えめで心を表に出すことはあまりなく、常に一歩引いているような感じがあった。かといって無口で黙り籠もるタイプではなく発言するべきときははっきりとものを話す凛とした一面も持っていた。時折、日向のことでは感情的になったりもするのだが……だが、それもすぐに自分で反省し恥らうような性格をしていた。
対して日向は、まさに名の通り暖かな陽が降り注ぐような小春の空気を纏っているような少女だった。長年一緒にいた日咲でさえ怒っている姿を見たことがなく、常に微笑んでいる印象がある。そんな柔らかく暖かな雰囲気に、誰もが日向を好きになった。
頭が良く、面倒見も良く、優しく礼儀正しい。真面目ではあっても頑なではなく、常に接する人のことを考えていた。少しのんびりしており、お人好しな面もあるが、それも含めて日向の魅力だった。