あれから、九年――互いに多少大人にはなっても、少女の愛らしさは変わることはなかった。いや、歳を重ねるにつれ、その可憐さは益々際立っている気がする。
そして、自分の心も変わることはなかった。いや……時を重ねるにつれ、想いは尚更深くなっていった。
「ひなちゃん、さようなら」
「また、明日ね」
別れの挨拶に「うん、また」と微笑んで応え、二人の少女は校門から右に歩き出した。
桜咲き、そして、散った花弁が僅かに流れている学園横の道。夕暮れの橙の空を見上げれば、影となり薄暗くなっている満開の桜が視線に入る。物悲しいような、寂しいような、そんな印象を受けてしまうのは夕暮れだからだろうか。それとも、自分の気持ちのせいだろうか。桜は変わらず可憐に咲いているというのに。
二人の少女の一人、長い綺麗な黒髪の少女は一度俯き、両手で持った自分の前にある鞄を見つめてから隣の少女へと顔を向けた。
「――ひなちゃん、進路は決めた?」
「……うん」
長い黒髪の綺麗な少女――城守日咲の質問に、隣にいた短い髪の可愛らしい少女――城守日向は頷くだけで曖昧に答えた。
自分たちも今年から三年生。本来なら、二年生の後半で進路は決めていなければならないのだが、日向は今だはっきりした返答を先生にはしていなかった。