「日愛の母になると誓いました。母の心を受け継ぎ、人と妖、共に手を伸ばし、共に生きていこうと誓いました。けれど――」

 心配そうに見上げる日愛の手をきゅっと握り、日向は自身の未熟を責めるように、そしてまた、そこから目を逸らさず前を向くように、瞳、燐光と煌めかせ、凛と言葉を発した。

「月代家とお話したことで、自分がまだ子供だと、何の力もなく、人に何も与えられない未熟な人間だと気づきました。わたしはまだ弱く、子供です」

 日向はありのままを伝えていく。その心底を、自らの真実を、偽らず、隠すことなく、全てを伝えた。

「大人になろうと思います。みんなを護れるよう……いえ、争うことがないよう、みんなが笑顔でいられるように。わたしは、強くなります」
「うん――」

 妃紗は、日向のそのままを全て受け止めるように頷いた。日向から視線を逸らさず、真っ直ぐに見つめ、そして、視線を想いを受けて。

「妖の世界にも、月代の世界にもわたしは入りません。一学生として、みんなと一緒に生き、そして、大人になります。今は、それが一番の道だと思いました」
「うん、そう……」

 妃紗はまた頷き――そして、一度瞼を閉じ、大きく頷くと、日向を見つめ微笑んだ。

「分かりました。日向の思うようにやってみなさい。私は支え応援します」
「妃紗さん……ありがとうございます」

 日向は頭を下げ、そして、微笑み返した。
 日愛は日向に抱きつき、陽織、灯澄、燈燕、スズも安心したように、そしてまた、日向を信じて間違いではなかったと改めて確信して笑った。

 ――そんな時。

 バタンッ!

「ひなちゃんっ!!」

 勢いよく扉が開き、そこから一人の少女――綺麗な長い黒髪に日向と同じ制服を着た女性徒、城守日咲が飛び込んできた。随分と走ったのか、頬を紅に染め、はあはあと息を切らせている。