「さて、これからのお話しですね」
四人に見つめられる中、日向は一度だけ瞳を閉じ姿勢を正すと、静かに言葉を発した。
「わたしは――妖とも月代ともお会いしたいと考えています。お待ちするのではなく、こちらから。そこで、わたしの意志を伝えます」
その日向の言葉に、
「――――」
灯澄、燈燕、スズ、陽織は黙って聞いていた。今の言葉は、単に意見を言っているわけではない。当主として、先を歩む道、自分たちの未来を決める宣言だった。
日向は覚悟と誓いの言葉を続けた。強く、惑わず――自分の全てを込めるように。
「わたしはどちらとも戦うつもりはありません。どちらの味方にもなります」
「しかし、それは、どちらの敵にもなり得るぞ」
「いえ、両方ともと味方となります」
「だが――」
問いかけ、なお言いかけた燈燕を止め、灯澄は改めて日向を見た。
真っ直ぐな瞳。どこまでも澄み、そして、どこまでも柔らかく、強い。
灯澄は内で笑った――あの時と一緒だ。あの翠月の夜。桜と舞った強く優しい日向の視線。それだけで、答えはでている。迷う必要などなかった。
「――分かった。ならば、我らは信じる」
「有難うございます」
日向は微笑み頭を下げた。その心が伝わったように、陽織もスズもにこりと笑った。陽織などは目が少し潤んでもいる。
ただ一人、燈燕は頭を掻き、不満ではなく純粋な疑問を日向へと向けた。
「しかし、だからといってどうするのだ。会いに行くといっても相手がどうするか」
「ほう、お前がそんなことを気にするとは珍しいな」
「珍しいのはお前だ。信じるはいいが、具体的になにをするかは決めなければならないだろう」
睨んでくる燈燕に灯澄は笑った。もちろん、灯澄としても具体的な行動を考えてはいる。だが、日向がここまで話す以上、もう先の事は決めているのだろう。自分たちは、それを手助けしてやればいい。灯澄はそう腹を決めている。