「日々常にお前と触れていなければ……癒滅が術で力を安定させなければすぐにまた力が溢れ暴れることになる」
「……そうなのですか」

 日愛と一緒に居る、そのことに変わりがない。だが、日愛が自由に動けないことに悲しみも感じ日向は瞳を伏せた。そんな日向に、灯澄はすぐに話を付け加えた。

「そう長い時ではない。徐々に力を取り戻すように御するだけだ。十年か……二十年もかかるとは思わぬが、おそらくはそれくらいの年数で自らで保つことができるようになるはずだ」
「丁度、子が大人になるほどだな。お前が母、いや、親がわりになるということだ」
「そうですか、良かった……」

 灯澄の後に燈燕も続く。二人のその言葉に日向も笑顔を戻し、あやすように日愛の頬を指で優しく撫でた。気持ちがいいのか、「ぅく……」と小さく鳴いて日愛は日向の手に頬を摺り寄せてくる。

「大丈夫です。約束しました。わたしは、日愛の親となります」
「そうか」

 誓いの瞳――その力強い凛とした光に灯澄と燈燕もまた優しく微笑んだ。
 救われた。救ってくれた――そう思う。助けられたのは日愛だけではない。今だからこそ分かる。助けられたのは、我らも同じだ。
 ――灯澄は、燈燕は姿勢を正し、日向へと向き直った。

「お前には詫びねばならない」
「灯澄さん、燈燕さん?」

 二人の変化に驚いたように声を上げる日向へ灯澄は続ける。このことは伝えなければならぬことだ。我らの誓いとして、共に在るために。

「お前を信じるといいつつ、どこかで友人の子のように考えていた。だから、迷い信じることができず、過ちを犯した」
「過ち?」
「そうだ。全ては我らの不信によるもの。護るということは不変のものだ。だが、そのことに逃げ、認めるのを避けていた。日愛を救ってくれと願った時に、全てを託すべきだったのだ。お前の母と同じように――当主として仕えるべきだった」
「灯澄さん……」
「本当にすまない、日向。そして――」

 灯澄と燈燕はスッと背を正し、日向へと頭を下げた。