「――日向っ」

 障子を開け、部屋へと入ってきた瞬間、陽織はまずそう呼びかけた。

「お母さん」

 日向は顔を向け、にこりと微笑んだ。身体を起こし、膝で眠る日愛を優しく撫でながら。

「どうして起きている。寝たままでいろ」
「寝たままで皆さんと会うのはなんだか申し訳なくて……」
「まったく、どうしてそういうところを気にかける。まず自らの身体を気にしろ」

 答えた日向に、問いかけた燈燕は呆れて続けた。

「そうです。まだ治ってないのです、日向。寝ておきなさい」

 目覚めた日向に安心してから一転、陽織は燈燕の言葉に頷き寝かせようと傍へと寄る。
 そんな陽織の後ろに燈燕が続き、最後に灯澄が部屋へと入り障子を閉めた。日向、日愛と灯澄、燈燕、陽織。これで全てが揃ったことになる。

 日向は母である陽織に対し大丈夫と笑顔で応じつつ、三人が無事であったことに安堵した。あれだけの傷ならば、まだ完全には治ってはいないのかもしれないが、こうして五人揃って会えたことにまず喜ぶ。
「寝ていなさい」と勧める陽織との問答からひと段落。灯澄、燈燕、陽織も座り、場が落ち着いてから日向は改めて問いかけた。

「わたしはどれくらい寝ていたのですか?」
「三日だ」
「三日……そうですか」

 三日間眠り続けた――それだけ大変なことだったのだと改めて知る。日愛を撫で、日向は問いを続けた。

「日愛も一緒にですか?」
「そうだ。お前と同じく日愛もこの三日間眠り続けている。目覚めたばかりなのだ、力が安定するまでは時間がかかるだろう。だが、心配することはない」

 灯澄もまた日愛を見つめてから、安心させるように日向へと伝えた。

「見ての通り、安らかに眠っている。安心しきっているのだろう。今は寝かせておけ。しばらくすれば、眼が覚める」
「良かった」

 穏やかな日愛の寝顔。頭を撫でつつ眼にかかる髪をのかせ、その表情を見て日向は微笑んだ。

「日愛に関しては、加えてもう一つ話して置かねばならない」

 顔を上げ見つめてくる日向に、灯澄は言葉を続けた。