「どうして……こんなことになったんだろう……」

 囚われた座敷牢の中で、すずはひとり呟いた。

――黄泉還し(よみかえし)の巫女。

 巫女とは言うものの、神職ではない。すずがそう呼ばれるのには、理由がある。
 彼女は、言葉通り死者を甦らせることが出来るからだ。

 すずがその能力に目覚めたのは、(よわい)十五の頃。
 彼女が住む村は山奥にあり、みな貧しいながらも慎ましく生きていた。
 その頃のすずは、周りと同じ黒髪に黒い瞳を持つ、ごくふつうの……元気で少しやんちゃな優しい女の子だった。

(けれども……。すべてが変わってしまったのは、あの頃から……)

 すずは目をつむり、想起する。
 すべてが変わってしまった、あの日のことを。
 彼女の自尊心が酷く落ち込んでいくきっかけとなった、黄泉還し能力に目覚めた悲しい日のことを……。