ヒスイさんとのデート当日。
私はワイトブルーのワンピースを着て自室の鏡の前に立った。あのレターセットと同じで、私の一番お気に入りの服だ。
「でも夏物だから、さすがに今はもう季節はずれかな」
悩んだ結果、このワンピースの上にロングカーディガンを羽織ることにした。
前髪を整えていると、鏡に映る自分の唇に視線が向いた。『ヒスイ先生』と呼ぼうとして、ヒスイさんの指先にそれを止められた事を思い出す。
どうしよう。
ヒスイさんの指が唇に触れた感触が、今もはっきりと蘇ってくる。それを思い返すだけで、鏡に映る自分の顔が耳まで赤く染まり出した。
ドキドキして、胸が苦しいよ。
ヒスイさんの事が好きで、まだまだ好きが止まりそうにない。その声や背中、そして、たまに小さなイジワルもする優しい性格。その全てが大好きで仕方なかった。
どこか一つだけでも、嫌いなところを見つけられたなら、もう少し彼の側で余裕を持っていられるような気がする。
欠点を探そうとヒスイさんの事を思い返してみても、やっぱり全部素敵だなと、頭に思い描いた想像の彼に見惚れてしまう自分がいた。
「私……こんなに好きで大丈夫かな」
平常心、平常心。
何度も心でそう繰り返してから、私は待ち合わせ場所へ向かった。
****
駅前の噴水広場まで来ると、先に来てもう待っているヒスイさんがいた。私に気付き、右手を挙げて手を振っている。
手を振るヒスイさんも、格好いいな。
会って一秒で、もうキュンが心の上限に達してしまい。これから自分はどうなってしまうのだろうと不安になった。
これが二度目の初恋なら、もう少し上手な恋ができるといいのに。
そんな事を思いながら、私はヒスイさんの元へ駆け寄る。
「そのワンピースの色……」
「はい。あの封筒と同じ色です」
「やっぱりそうか。シリウスの色、すごく澪に似合ってるよ」
褒められた事が嬉しくて、舞い上がってしまいそうになる。
「でも、そのワンピースを見るのも二回目かもしれないな」
ヒスイさんが口元に手を当て、考え込むようにつぶやく。
「私もそんな気がします。きっとこの服を来て、デートしたことがあるんじゃないかって思ってました」
「一度目も可愛いなって思いながら、見てたんだろうな。俺は」
不意にキュンの爆弾を投下してくるヒスイさんのせいで、私の心音は大忙しに飛び跳ねている。
平常心、頑張って平常心。
自分で自分を励まして頑張った。
「あ、有り難うございます。そう言えば、ヒスイさんは今日も黒ですね」
なんとか普通に、言葉を返せてホッと息を吐く。
ヒスイさんは、グレーの薄手パーカーの上に黒ジャケットを羽織っている。
秋の装いのヒスイさんも、すごく格好いいな。
「単純に、黒色が好きっていうのもあるけど……。黒がプライドの色だって、教えてくれた人がいて、それがずっと心に残ってるからかな。でも、どれだけ思い出そうとしても、それを伝えてくれた人が誰なのか、そこだけは思い出せないんだ」
困ったようにヒスイさんが苦笑する。
もしかすると、それは二人の消えてしまった記憶に、関係のある人なのではないかと思った。
「その人から、どんな事を聞いたんですか?」
「天使が出てくる、神話みたいな話だよ」
「天使が?」
「黒い隊服を着て戦う、黒天使の話なんだ」
並んで歩き出しながら、ヒスイさんの話を聞く。
その物語に出てくる天使は、基本みんな白の服を身にまとっている。そんな天使達の中で、悪魔討伐部隊だけが黒の隊服を着用している。そんな天使たちのお話だった。
そして黒の隊服は、悪魔の返り血を浴びてもその穢れに染まらない色であること。戦いの中で追い詰められる事があっても、悪魔に寝返る事のない、何者にも染まらない信念を示す色であること。
物理的に、精神的に、決して他の色に染まらない。それが、天使の中で唯一、戦闘を目的とした部隊の意思を示すプライドの色だとヒスイさんが説明してくれた。
「この話を聞いた時、心が震えたんだ。それなのに、聞かせてくれた人を思い出せないなんて、恩知らずだよな。俺」
悲しそうな表情を浮かべ、自分を責めるように呟いたヒスイさんの言葉に、私は首を横に振る。
「それは違います! 私たち二人の出会いの記憶が消えたみたいに、きっと、話をしてくれたその人の記憶も消えてしまって……。それでもヒスイさんの心の中にその人への敬意があるから、その言葉がちゃんと胸に残り続けているんだと思います!」
必死に思いを伝えた。
ヒスイさんに悲しい顔なんかさせたくない。
「なんで澪が、俺より泣きそうになってんだよ」
微笑んだヒスイさんの手が、優しく私の髪を撫でる。それからそっと、手を握ってくれた。彼の体温に、どうしようもなくドキドキしてしまう。
「ありがとな」
そう言って笑った後、繋いだ手が一瞬離れ、それからすぐに指先を交互に重ねた繋ぎ方に変更された。
あ……。恋人繋ぎだ。
仲良しの香織先輩や舞衣ちゃんとだって、こんな風に手を繋いだ事はない。初めてのそれに緊張で固まっていると、ヒスイさんが顔を覗き込んできた。
「嫌だった?」
ただでさえ恋繋ぎで緊張しているのに、身を屈めて顔を覗き込むヒスイさんとの距離が近過ぎて……。私はうつむいて視線を逸らし、大きく首を横に振った。
「澪。ちゃんと目を見て、答えてよ」
甘い低音が囁く。
嫌ではないと伝わっているはずなのに、時々発動するヒスイさんの意地悪に心が掻き乱される。
うつむいていた顔を上げると、楽しそうに笑うヒスイさんと目が合った。
「私の反応で、遊ばないで下さい!」
「ごめん、ごめん。可愛いからつい、ちょっと意地悪したくなるんだ。澪の反応がいちいち可愛くて俺が困るよ」
困ると言いつつ、ちっとも困っているようには見えない。ヒスイさんは相変わらず楽しげに笑いながら、繋いだままの私の手を引き歩き出した。
****
この日は二人で、プラネタリウムに来ていた。
ようやく、冬の星座が登場するのだ。
並んで座席に着くと、冬の星座の中で一番有名なオリオン座についての説明が始まった。
『オリオン座は、ギリシャ神話の狩人オリオンの姿をした冬の星座で、オリオンのベルトにあたる三つの星が目印で、周囲を四つの明るい星が取り囲むリボンのような形をした見つけやすい星座です』
説明が神話の内容になると、不意に噴水広場で聞いたヒスイさんの黒が好きな理由の話に出てきた黒天使の事を思い出した。
あれも、星座にまつわる神話なのかな?
天使なのに全身黒を身にまとった、黒天使の物語。
真っ直ぐな信念を示す。
なんだか、ヒスイさんのことみたいだな。
私は星座から、そっと視線をヒスイさんに向けた。
真剣に星座を見つめる彼の横顔が素敵で、そこから目が離せなくなる。こんなに暗闇の中にいるのに、輝きを感じてしまう。彼の横顔に、見惚れずにはいられなかった。
「澪。俺じゃなくて、あっち」
ヒスイさんがプラネタリウムの夜空を指差す。見つめている事に気づいていないと思っていたのに、思い切りバレていた。
「はい……ごめんなさい」
「澪の好きなシリウスが出てるのに」
私が再び夜空を見上げると、シリウスを主星とするおおいぬ座の説明は終わっていた。
暗闇に慣れた目で建物の外に出ると、一気に秋の冷たい風が吹きつけ、私はギュッと目を閉じる。駅まで戻る前に少し休憩するため、建物の裏手にあるベンチに向かった。館内にはカフェなどは併設されていなかった。
温かい飲み物を買ってベンチに座ると、私の前にヒスイさんが立ってこちらを見下ろしている。ヒスイさんは座らないのかと不思議に思った時、その訳に気付いて私の鼓動が跳ねた。
風よけに、立ってくれているんだ。
風向きがちょうどベンチに向かって吹いている。それを遮るようにヒスイさんは立っているのだと分かった。
どうしていつも、こんなにスマートに優しさをくれるのだろう。
また大好きが加速して、私の中から溢れ出してしまいそうになる。私は無意識に手を伸ばし、ヒスイさんの服の裾を握り締めていた。
「上目遣いでそんな可愛いことされると、また俺の意地悪スイッチが入るかもしれないよ?」
「いいです。ヒスイさんになら、イジワルされても」
見下ろす視線と一緒に、囁くような問い掛けが降る。
「そんなに、俺のこと好き?」
ヒスイさんの目を見つめたまま、私はうなずいた。
「ちゃんと、言葉で伝えて」
今まで以上に甘さを帯びたヒスイさんの低音が、私の鼓膜を震わせ胸まで響いて小さく疼く。
少しの恥ずかしさと、たくさんの愛しさと、私はヒスイさんの服を握り締める手に力を込めて、全部の想いを声にした。
「好きです。一秒ずつ好きが増えて、どうすればいいか分からなくなるくらい……。ヒスイさんの事が好き。大好き!」
その瞬間──、額に柔らかな熱が触れた。
「好きだよ。俺も」
初めて彼がくれた愛の言葉。どうしようもなく嬉しくて、胸がいっぱいになる。
その言葉と同時に、額へ、瞳へ、頬へ、まるで誓いのような優しいキスの雨が降ってくる。
「澪、大好きだよ」
そして唇に、愛しさを重ね合う。
ヒスイさんの両手に頬を包み込まれ、私は、何度も何度も彼の唇の熱を知った。
私はワイトブルーのワンピースを着て自室の鏡の前に立った。あのレターセットと同じで、私の一番お気に入りの服だ。
「でも夏物だから、さすがに今はもう季節はずれかな」
悩んだ結果、このワンピースの上にロングカーディガンを羽織ることにした。
前髪を整えていると、鏡に映る自分の唇に視線が向いた。『ヒスイ先生』と呼ぼうとして、ヒスイさんの指先にそれを止められた事を思い出す。
どうしよう。
ヒスイさんの指が唇に触れた感触が、今もはっきりと蘇ってくる。それを思い返すだけで、鏡に映る自分の顔が耳まで赤く染まり出した。
ドキドキして、胸が苦しいよ。
ヒスイさんの事が好きで、まだまだ好きが止まりそうにない。その声や背中、そして、たまに小さなイジワルもする優しい性格。その全てが大好きで仕方なかった。
どこか一つだけでも、嫌いなところを見つけられたなら、もう少し彼の側で余裕を持っていられるような気がする。
欠点を探そうとヒスイさんの事を思い返してみても、やっぱり全部素敵だなと、頭に思い描いた想像の彼に見惚れてしまう自分がいた。
「私……こんなに好きで大丈夫かな」
平常心、平常心。
何度も心でそう繰り返してから、私は待ち合わせ場所へ向かった。
****
駅前の噴水広場まで来ると、先に来てもう待っているヒスイさんがいた。私に気付き、右手を挙げて手を振っている。
手を振るヒスイさんも、格好いいな。
会って一秒で、もうキュンが心の上限に達してしまい。これから自分はどうなってしまうのだろうと不安になった。
これが二度目の初恋なら、もう少し上手な恋ができるといいのに。
そんな事を思いながら、私はヒスイさんの元へ駆け寄る。
「そのワンピースの色……」
「はい。あの封筒と同じ色です」
「やっぱりそうか。シリウスの色、すごく澪に似合ってるよ」
褒められた事が嬉しくて、舞い上がってしまいそうになる。
「でも、そのワンピースを見るのも二回目かもしれないな」
ヒスイさんが口元に手を当て、考え込むようにつぶやく。
「私もそんな気がします。きっとこの服を来て、デートしたことがあるんじゃないかって思ってました」
「一度目も可愛いなって思いながら、見てたんだろうな。俺は」
不意にキュンの爆弾を投下してくるヒスイさんのせいで、私の心音は大忙しに飛び跳ねている。
平常心、頑張って平常心。
自分で自分を励まして頑張った。
「あ、有り難うございます。そう言えば、ヒスイさんは今日も黒ですね」
なんとか普通に、言葉を返せてホッと息を吐く。
ヒスイさんは、グレーの薄手パーカーの上に黒ジャケットを羽織っている。
秋の装いのヒスイさんも、すごく格好いいな。
「単純に、黒色が好きっていうのもあるけど……。黒がプライドの色だって、教えてくれた人がいて、それがずっと心に残ってるからかな。でも、どれだけ思い出そうとしても、それを伝えてくれた人が誰なのか、そこだけは思い出せないんだ」
困ったようにヒスイさんが苦笑する。
もしかすると、それは二人の消えてしまった記憶に、関係のある人なのではないかと思った。
「その人から、どんな事を聞いたんですか?」
「天使が出てくる、神話みたいな話だよ」
「天使が?」
「黒い隊服を着て戦う、黒天使の話なんだ」
並んで歩き出しながら、ヒスイさんの話を聞く。
その物語に出てくる天使は、基本みんな白の服を身にまとっている。そんな天使達の中で、悪魔討伐部隊だけが黒の隊服を着用している。そんな天使たちのお話だった。
そして黒の隊服は、悪魔の返り血を浴びてもその穢れに染まらない色であること。戦いの中で追い詰められる事があっても、悪魔に寝返る事のない、何者にも染まらない信念を示す色であること。
物理的に、精神的に、決して他の色に染まらない。それが、天使の中で唯一、戦闘を目的とした部隊の意思を示すプライドの色だとヒスイさんが説明してくれた。
「この話を聞いた時、心が震えたんだ。それなのに、聞かせてくれた人を思い出せないなんて、恩知らずだよな。俺」
悲しそうな表情を浮かべ、自分を責めるように呟いたヒスイさんの言葉に、私は首を横に振る。
「それは違います! 私たち二人の出会いの記憶が消えたみたいに、きっと、話をしてくれたその人の記憶も消えてしまって……。それでもヒスイさんの心の中にその人への敬意があるから、その言葉がちゃんと胸に残り続けているんだと思います!」
必死に思いを伝えた。
ヒスイさんに悲しい顔なんかさせたくない。
「なんで澪が、俺より泣きそうになってんだよ」
微笑んだヒスイさんの手が、優しく私の髪を撫でる。それからそっと、手を握ってくれた。彼の体温に、どうしようもなくドキドキしてしまう。
「ありがとな」
そう言って笑った後、繋いだ手が一瞬離れ、それからすぐに指先を交互に重ねた繋ぎ方に変更された。
あ……。恋人繋ぎだ。
仲良しの香織先輩や舞衣ちゃんとだって、こんな風に手を繋いだ事はない。初めてのそれに緊張で固まっていると、ヒスイさんが顔を覗き込んできた。
「嫌だった?」
ただでさえ恋繋ぎで緊張しているのに、身を屈めて顔を覗き込むヒスイさんとの距離が近過ぎて……。私はうつむいて視線を逸らし、大きく首を横に振った。
「澪。ちゃんと目を見て、答えてよ」
甘い低音が囁く。
嫌ではないと伝わっているはずなのに、時々発動するヒスイさんの意地悪に心が掻き乱される。
うつむいていた顔を上げると、楽しそうに笑うヒスイさんと目が合った。
「私の反応で、遊ばないで下さい!」
「ごめん、ごめん。可愛いからつい、ちょっと意地悪したくなるんだ。澪の反応がいちいち可愛くて俺が困るよ」
困ると言いつつ、ちっとも困っているようには見えない。ヒスイさんは相変わらず楽しげに笑いながら、繋いだままの私の手を引き歩き出した。
****
この日は二人で、プラネタリウムに来ていた。
ようやく、冬の星座が登場するのだ。
並んで座席に着くと、冬の星座の中で一番有名なオリオン座についての説明が始まった。
『オリオン座は、ギリシャ神話の狩人オリオンの姿をした冬の星座で、オリオンのベルトにあたる三つの星が目印で、周囲を四つの明るい星が取り囲むリボンのような形をした見つけやすい星座です』
説明が神話の内容になると、不意に噴水広場で聞いたヒスイさんの黒が好きな理由の話に出てきた黒天使の事を思い出した。
あれも、星座にまつわる神話なのかな?
天使なのに全身黒を身にまとった、黒天使の物語。
真っ直ぐな信念を示す。
なんだか、ヒスイさんのことみたいだな。
私は星座から、そっと視線をヒスイさんに向けた。
真剣に星座を見つめる彼の横顔が素敵で、そこから目が離せなくなる。こんなに暗闇の中にいるのに、輝きを感じてしまう。彼の横顔に、見惚れずにはいられなかった。
「澪。俺じゃなくて、あっち」
ヒスイさんがプラネタリウムの夜空を指差す。見つめている事に気づいていないと思っていたのに、思い切りバレていた。
「はい……ごめんなさい」
「澪の好きなシリウスが出てるのに」
私が再び夜空を見上げると、シリウスを主星とするおおいぬ座の説明は終わっていた。
暗闇に慣れた目で建物の外に出ると、一気に秋の冷たい風が吹きつけ、私はギュッと目を閉じる。駅まで戻る前に少し休憩するため、建物の裏手にあるベンチに向かった。館内にはカフェなどは併設されていなかった。
温かい飲み物を買ってベンチに座ると、私の前にヒスイさんが立ってこちらを見下ろしている。ヒスイさんは座らないのかと不思議に思った時、その訳に気付いて私の鼓動が跳ねた。
風よけに、立ってくれているんだ。
風向きがちょうどベンチに向かって吹いている。それを遮るようにヒスイさんは立っているのだと分かった。
どうしていつも、こんなにスマートに優しさをくれるのだろう。
また大好きが加速して、私の中から溢れ出してしまいそうになる。私は無意識に手を伸ばし、ヒスイさんの服の裾を握り締めていた。
「上目遣いでそんな可愛いことされると、また俺の意地悪スイッチが入るかもしれないよ?」
「いいです。ヒスイさんになら、イジワルされても」
見下ろす視線と一緒に、囁くような問い掛けが降る。
「そんなに、俺のこと好き?」
ヒスイさんの目を見つめたまま、私はうなずいた。
「ちゃんと、言葉で伝えて」
今まで以上に甘さを帯びたヒスイさんの低音が、私の鼓膜を震わせ胸まで響いて小さく疼く。
少しの恥ずかしさと、たくさんの愛しさと、私はヒスイさんの服を握り締める手に力を込めて、全部の想いを声にした。
「好きです。一秒ずつ好きが増えて、どうすればいいか分からなくなるくらい……。ヒスイさんの事が好き。大好き!」
その瞬間──、額に柔らかな熱が触れた。
「好きだよ。俺も」
初めて彼がくれた愛の言葉。どうしようもなく嬉しくて、胸がいっぱいになる。
その言葉と同時に、額へ、瞳へ、頬へ、まるで誓いのような優しいキスの雨が降ってくる。
「澪、大好きだよ」
そして唇に、愛しさを重ね合う。
ヒスイさんの両手に頬を包み込まれ、私は、何度も何度も彼の唇の熱を知った。