今日は私の部屋でヒスイさんと一緒に日曜日のデートプランを立てていた。
「まずは、駅前で待ち合わせがしたいんです」
私がそう言うと、「飛べるから、すぐに部屋まで迎えに来るけど……」とヒスイさんが不思議そうに首を傾げる。私は、学生にとってのデートは待ち合わせをする事から既に始まっているのだと力説した。
「あ……でも、ヒスイさんは私以外に見えてないから、うっかり名前を呼んで駆け寄ったりしたら、私が一人芝居してるみたいになっちゃいますね」
周りからすれば、ずっと一人で喋っている人に見えてしまう。
そう思うと、やはりヒスイさんとのデートはひと目に触れない場所を選ぶべきなのかもしれない。
「別のプランにした方がいいかな」
「それなら、実体化の申請を出せばいけると思う」
「実体化?」
聞き慣れない言葉に首を傾げながら問うと、ヒスイさんがそれを説明してくれた。
人間の肉体に近い状態になる事で、誰でも姿を見れるようになるらしい。
「え? でもそれじゃ、ヒスイさんの存在を認識してしまう人が……」
「天使としてじゃなく、澪と同じ『人間として』短期的に認識するんだ」
「短期的に?」
「そう。例えば……」
ヒスイが例を挙げる。
「街ですれ違った人とか」
背の高い人だなとか。知り合いに似ているなとか。そんな風に思いすれ違ったとしても、その相手の素性まで認識できる訳ではない。
「五分ほどで相手の意識から、俺という認識は消える。でも、人間として姿は見えているから、澪が一人で喋ってる奴にはならないよ」
本来、実体化申請をするのは枕元に立って神の言葉を人間に伝える事が必要な際に申請するものらしい。この声に導かれた人間が、それを『予感』や『虫の知らせ』と感じたり、『予知夢を見た』などと解釈したりするようになるのだという。
「そういう出来事って、実は天使さんによる導きだったんですね」
意外な事実に関心しながらヒスイさんを見ると、私が淹れたアイスコーヒーを美味しそうに飲みながら満足げに頷いていた。
卵たっぷり高級プリンと、ブラックコーヒーが人間界の食べ物の中で特にお気に入りらしい。
「じゃあ、待ち合わせして街でデートしても大丈夫ですか?」
「一つだけ問題がある。人間の肉体に寄せた状態は、天使にとってあまり好ましい状態ではないから、半日くらいが限度かな」
「分かりました。街デートはその時間内だけにします!」
こんな風にデートプランを話し合うだけで、心が嬉しくて仕方がない。
これはサヨナラの為のデートなのだと、私は知っているのに……。これ以上、好きにならないようにする方法が分からなくて、好きの気持ちが増していく。
私は無理やり別れの事を思考から追い出すように頭を振った。
「まずは、駅前で待ち合わせがしたいんです」
私がそう言うと、「飛べるから、すぐに部屋まで迎えに来るけど……」とヒスイさんが不思議そうに首を傾げる。私は、学生にとってのデートは待ち合わせをする事から既に始まっているのだと力説した。
「あ……でも、ヒスイさんは私以外に見えてないから、うっかり名前を呼んで駆け寄ったりしたら、私が一人芝居してるみたいになっちゃいますね」
周りからすれば、ずっと一人で喋っている人に見えてしまう。
そう思うと、やはりヒスイさんとのデートはひと目に触れない場所を選ぶべきなのかもしれない。
「別のプランにした方がいいかな」
「それなら、実体化の申請を出せばいけると思う」
「実体化?」
聞き慣れない言葉に首を傾げながら問うと、ヒスイさんがそれを説明してくれた。
人間の肉体に近い状態になる事で、誰でも姿を見れるようになるらしい。
「え? でもそれじゃ、ヒスイさんの存在を認識してしまう人が……」
「天使としてじゃなく、澪と同じ『人間として』短期的に認識するんだ」
「短期的に?」
「そう。例えば……」
ヒスイが例を挙げる。
「街ですれ違った人とか」
背の高い人だなとか。知り合いに似ているなとか。そんな風に思いすれ違ったとしても、その相手の素性まで認識できる訳ではない。
「五分ほどで相手の意識から、俺という認識は消える。でも、人間として姿は見えているから、澪が一人で喋ってる奴にはならないよ」
本来、実体化申請をするのは枕元に立って神の言葉を人間に伝える事が必要な際に申請するものらしい。この声に導かれた人間が、それを『予感』や『虫の知らせ』と感じたり、『予知夢を見た』などと解釈したりするようになるのだという。
「そういう出来事って、実は天使さんによる導きだったんですね」
意外な事実に関心しながらヒスイさんを見ると、私が淹れたアイスコーヒーを美味しそうに飲みながら満足げに頷いていた。
卵たっぷり高級プリンと、ブラックコーヒーが人間界の食べ物の中で特にお気に入りらしい。
「じゃあ、待ち合わせして街でデートしても大丈夫ですか?」
「一つだけ問題がある。人間の肉体に寄せた状態は、天使にとってあまり好ましい状態ではないから、半日くらいが限度かな」
「分かりました。街デートはその時間内だけにします!」
こんな風にデートプランを話し合うだけで、心が嬉しくて仕方がない。
これはサヨナラの為のデートなのだと、私は知っているのに……。これ以上、好きにならないようにする方法が分からなくて、好きの気持ちが増していく。
私は無理やり別れの事を思考から追い出すように頭を振った。