「何でもいい人はもういいよ! 一旦、全体の話し合いは終わりにするからもう帰って!」
舞衣ちゃんの言葉に、芝野さんと佐藤くんはすぐに部室を出て行った。その後ろに続いて、一年のとり部員達も帰っていく。
自主的に入部した者と、仕方なく入部した者の間には、どうしようもなく大きな溝が存在している。けれどこのとり部員達は、推薦入試の学内選抜時に内申点が大きく関わってくる為、やる気がなくても部を辞めることはない。学業以外にしっかり部活動をしていたという事実を残すために、観測合宿にも参加するらしい。
「あとは、私達だけで話し合おう」
「舞衣ちゃん、ごめんね」
「なんで澪が謝るのよー。私こそムカついてイライラしちゃってごめん」
「ううん。舞衣ちゃんありがとう、話を進めてくれて」
二年の星が好きな部員は私と舞衣ちゃんの二人。そして、一年は三人。
この五人で話し合いを続け、合宿の思い出の写真を飾ってもらえるように写真立てを贈ることにした。三年にもとり部員はいるけれど、香織先輩を含む星好きな三人の先輩たちには、喜んでもらえるような気がした。
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そして合宿当日の金曜日。
授業を終えて、天文部は小型バスの中へ乗り込んだ。
「雨は止んだけど、まだ雲がどんよりしてるね」
「今日の夜は、雲が晴れた瞬間を逃さないように天候待ちになりそうだね」
夜に備えて、私達はバスの中で眠る。暗くなってから到着した高原は、都心の夜より風がひんやりとしていた。施設の調理場を借りて、夜ご飯の焼きそばを作る。大きな鉄板と火力で作った焼きそばは、普段よりずっと美味しく感じた。
「夜は、二人ずつのペアになって、一時間の交代制で天候待ちをします」
香織先輩の言葉に、一年のとり部員から「嘘でしょ。天文部ってこんなに面倒なの?」「一番、楽かと思ったのに」という言葉が漏れていた。
六月の下旬。今はまだ梅雨が終わっていない。
この時期の天体観測には、夜空の雲が切れる「晴れ待ち」がつきものだ。一年のとり部員は、それを知らなかったらしい。