──待ってますから、いつでも来てくださいね


小夜鳴くんの声がリフレインする。
そして、彼の綺麗な顔や、澄んだ瞳も。

その度、胸がキュッと詰まったような感じになって。
知らず知らずにため息がもれてしまう。


「…来てくれ、って言われても。虫に興味なんてないし……」

それに私は……


***
「それじゃあ、先日の小テストを返す」

数学の時間。
担当教諭がそう言った途端、教室でブーイングが起こる。

でも私は特に何も言わず返却を待つ。

二年生になって早々の抜き打ちテストは、内容はほとんど一年生の復習で、難しいとは思わなかった。手応えも充分。

そしてその手応え通り、返ってきたテストは98点。
些細なミスで減点されてしまったのは悔しいが、悪くない出来だ。

……良かった。


「わ!篠原さん、すごい点数!さすがだねー」

隣の席の男子が私のテストを覗きこんで声をあげた。
途端、近くの席のみんなが私のテストを見て騒ぎだした。

……ちょっとちょっと。
勝手に見ないでほしい。