彼との出会いはきっと一生忘れない。


放課後の教室。
差し込む西日を背に、彼は微笑んでいた。

細いさらさらの茶色い髪。
スラリと高い背。
少し青が混じったような目が印象的な、端整な顔立ち。

そして………
部屋中をひらひら飛び回るたくさんの蝶々たち。


え?
蝶々?


「きゃ……きゃああああ!!虫ーーー!!!」

「すみません。ケースから逃がしてしまって……」

「つ、つ、捕まえて!いや、むしろその窓から逃がして!虫!逃がして!!」


叫ぶ私に彼はこう言った。


「虫って……これはナミアゲハですよ。単にアゲハと呼ばれることもあります。よく似ているキアゲハとは、羽の付け根の模様の違いで見分けることが出来ます」


は?

「はああああ!?その説明、今いる!!??」


あんな声を出したのは、うまれて初めてだった。


………ああ。
あの日のことは、私、一生忘れない。